2009年6月9日火曜日

アニマル スピリットと不動産価格


アニマルスピリット アカロフ/シラー 山形浩生訳 を読んで少し啓発されたところがあったので調べ物をした。
本書は人は経済合理性でのみで行動するわけではない。 不合理な動機でも行動する場合がある。として、そうしたアニマルスピリットを5つの側面について説明している。

1.安心とその乗数 Confidennce and Its Multipiers
2.公平さ  Fairness
3.腐敗と背信   Corruption and Bad Faith
4.貨幣錯覚   Money Illusion
5.物語   Stories

90年代初め比較的長めの米国駐在から帰国したての頃、先輩から「とにかく家を買え、今買っておかないと買えなくなるぞ」とアドバイスを受けた。買えなくなる市場って? 需給は?

会社もなんだかんだで5000万円程ローンが組めると言うし、とりあえず公団のマンションの抽選に行くと当たりはしなかった。 事後的に見ると既にバブルは弾けていた時だ。

この時のシナリオ(5.物語り+1.安心)も「土地は有限/人口増加/経済成長」つまり土地は増えないのだから上がるしか無い。と言う考え方だ。 この本に書かれてある経済危機直前のアメリカはそっくりそのまま15年前の日本の話だった。さらにアメリカにおける1952年の住宅ブーム、1987年の不動産ブーム時にも似たような物語が語られたとある。 繰り返される不動産神話は日本だけでは無い。


そこでいきなり余談だが、米国の住宅価格指数を調べていると、まさにこの本の著者のシラー教授のケース・シラー指数とFederal Housing Finance AgencyのOFHEO指数の差が大きいのが気になったので少し調べてみた。




ケースシラー主要10都市の指数の開始時1991年月次でOFHEO指数をとるとかなりの差がでる。 この差は何が問題かと言うと、例えば2005年末の米国家計の住宅資産は21.6兆ドルあるのだが、そこから2006年6月のピークまでにケースシラーでは19.7%上昇、OFHEOではピークは2007年4月で42.3%も上昇している。 そして下落率はピークからケースシラーで33%、OFHEOでは11%しかない。 21兆ドルをこれらに掛けると差は2割だと4兆ドル(¥ではない)、個人の資産価格を推定する際に大きく差が出てしまうと言う訳だ。

OFHEOではファニーメイとフレディマックの保証を受けたモーゲージでファィナンスされた全ての住宅の売買記録を利用している一方、ケースシラーではでは借り入れの種類とは無関係に住宅販売に関する政府の記録に基づいて算出している。  つまりCSの方がカバレッジが広く広範な範囲で市場を補足しているとされていた。 しかしながら地域のカバレッジではOFHEOの方が広範であると言う事で、市場に強気派は下落速度の遅いOFHEOを、カタストロフィー派はCSを使う事が多いようにも思える。 まあ結論としては不動産価格の把握とそこからくる資産価格の推定値、個人消費動向の予想等は大味にならざるを得ないと言う事だ。

ファニーちゃんとフレディちゃん。

このグラフに「CUOMOさんのアクション」が表示されているが、これは本書に出ていた話。

一部本書から抜粋要約させて頂くと、
住宅ブームに参加する機会が全ての人種に公平(2.公平さ)に与えられていると思ったら。マーチン・ルーサー・キング3世が、1999年に「少数民族の住宅ギャップ:ファニーメイとフレディマックの落ち度」と言う論説でマイノリティーがブームに取り残されていると嘆いた。これを受けて当時のHUD(住宅・都市開発省)のアンドリュー・クオモ長官はファニーとフレディに融資基準を下げて借り手の書類提出要件を緩めても良いから融資を増やせと命令したそうだ。この政策が少数民族にとって一番良いことなのかについての検討は一切行なわれず、これが現在のサブプライム問題の発端となっている。 Voiceの記事参照


3.腐敗)はその後の業者や投資銀行達の行状で分かり易いとして、(4.貨幣錯覚)だ。
下のグラフはOFHEOの四半期データ・トランザクション・インデックスが1975年からあるので、指数実数(名目:Nominal)とGDPデフレータで修正したReal Indexの推移だ。

土地や家の値段は「俺が買った時は坪10万だったのが今じゃ100万円」と時間経過が無視されるほど長い話が多い。 インフレ分を考慮するとどうなるかと言うものだ。本書とは関係なく興味本位でグラフ化してみた。 間違ってたら教えて下さい。



こうなると株価もついでにReal SP500を計算してみた。



両者を合わせると。


株はやはり投資の王者のようだ。 入りどころさえ間違わなければ。 但しこれらはインデックス値だけで、配当込みのトータルリターンでは無い。 不動産も利回りがある事は断っておく。

この本は翻訳も良いし、とっても遊べる。



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