2009年7月20日月曜日

お酒の本の話 0907


このブログはバーマンの方も結構ご覧になっていただいていたようだが、最近はお酒ネタがすっかり途切れていたので、今はあまり見ていないかもしれない。

この週末は前回の「琥珀色の奇跡」と言う本から参照させて頂いた事もあって2冊の貴重な本を入手して読ませて頂いた。  貴重とは言ってもアマゾンで売っているが、どちらも復刻の要請が随分と強いようだ。

1冊目は「定本 洋酒伝来」藤本義一さん。  僕も誤解していたが作家の藤本義一さんでは無く、サントリーの宣伝部にいらっしゃって洋学史学会員であったり、日本ソムリエ協会の顧問であったりの方で、もう既にお亡くなりになられている。

この本は正に洋酒と日本との出会いについて非常に繊細にお調べになられている。俗説で語られるザビエルと信長の出会いは有り得ない事や、当時の史書からお酒にまつわる事を抜粋されて憶測等を排除し、正に学術的な見地から徹底的にお調べになられている。 それとこれらの資料を見ていて感心させられるのは、例えば鎖国前に存在した「平戸イギリス商館」の記録がちゃんと残っており、さらにそれらの研究が進み殆ど日本語に翻訳されている点だろう。

 もちろん当時の主流はシェリー酒であり、ぶどう酒だが、ビールも登場する。ジンは未だ無いし、スコッチも見えない。この本はオランダ商館の記録を幕末までたどり、最後は駐日特命全権公使パークスの徳川慶喜との会食までカバーされている。 特に面白いのは攘夷を唱えていた松平春獄の越前福井藩ではパークスはシャンパンで接待された事だろう。全く裏表の多い事で。


もう一つ印象に残ったのは、信長と面会したイエズス会の宣教師ルイス・フロイスの書いた「日欧文化比較」の中に「日本人の食事と飲食の仕方」と言って60項目程列挙されているが、その中で印象に残ったもの。

27.我々のぶどう酒はぶどうの実からつくる。彼らのものはすべて米からつくる。
31.我々の間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられる事もない。 日本では非常にしつこくすすめ合うので、あるものは嘔吐し、また他のものは酔っ払う。
35.我々の間では酒を飲んで前後不覚に陥る事は大きな恥辱であり、不名誉である。 日本ではそれを誇りとして語り、「殿はいかがなされた?」と尋ねると、「酔っ払ったのだ」と答える。

最近酔っ払った外相もいたが、確かについ最近までは「酔っ払い話」は会社でも武勇伝であった時代があった。 鎖国と言う期間もあったが、お酒のマナーで欧米化するまでに16世紀から随分と時間のかかったものだった。



と思ったらそれはあくまで上品な欧州の話。

2冊目は「大いなる酒場」原題:SALOONS of The Old West :by Richard Erdoes,翻訳:平野秀秋 彼のブログ



これは信長とほぼ同じ時代から始まるが、アメリカの話。東海岸のタバーンから西部開拓史のサルーンまで、まさにアニマル・スピリット全開。

ヴァージニア人で、学者で伝道師でもあったジョン・ソープ大佐は「神聖液体」(ゴッドリー・リカー)なるものを蒸留し、蒙昧な無信心者たちのところへもっていき、魂に活力をあたえるこの酒を飲んでまことの信仰を身につけよ、と説教した。 その後、彼はその土地のものに殺されてしまったが、「それはここの人々が彼の酒を身につけ過ぎたか、あるいは信仰を身につけ過ぎたか、または両方をちゃんぽんにやった為だろう。」

日本人は意外とアメリカ人(野蛮な時代の:もしかしたら今もか?)に近いかもと思わせるご乱行。 お酒の本と言うよりはアメリカの文化史そのもの。

酒好きがお酒を飲むのも忘れて読んでしまう本だそうだ。  僕も結果的にそうなった。 

上記2冊ともバーマンは必読。 古本残少々。

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