2009年8月7日金曜日

量子の新時代



羽田空港の書店で目についたので読んでみた。
ブライアン・グリーンの「宇宙を織り成すもの」を読んで以来、この手のものがあると抵抗なくレジに進めるようになった事、多分同じような文科系人間が世界中にいるであろう事を思うと、グリーンの功績は小さくないと体感できる。

この本は朝日新聞の科学記者である尾関さんが文学的な意味合いでの量子力学を、量子情報科学の現状を甲南大学佐藤教授、量子力学の歴史的視点からの考察を大阪大学の井元教授と3部での構成となっている。

特に物理マニアでも無い僕が「宇宙を織り成す。。。」以来一番興味を覚えるのは電子によるスリット実験である。
このブログの読者向けに僕の解釈レベルで説明すると、壁に2つの縦に長い窓が空いていて、その向こうに感光紙があるとする。
古典物理学の想定ではこちら側から光をあてると、直進した光は2つの窓を通過し本来であるならば感光紙の上で2つの縦に長い長方形を作る。

へたな図だが、著作権を尊重して。


しかし量子力学では電子と電子は干渉しあい波のような性質を持つ。つまり縦に格子状の濃淡のある模様が出来てしまう。下の図の右のイメージだ。

成程、大量の電子が射出されているとすれば窓を通過した電子同士がぶつかりあいこうした波のような性質を見せる事までは直感的になんとか理解が出来る。

波を2方向からぶつければ、高い波と高い波が合成され、さらに高い波が出来る。 (わかりにくければ後で実験のビデオがついている。)

長方形と干渉された波の形 (勿論イメージ)



ところが、上の実験では電子を大量にドッと射出したから干渉が起きた。では電子を1粒ずつ射出した場合はどうなるのか、これは勿論どちらかの窓を通り、窓の向こうの感光紙に一つの点となって現れる。

もう一つ射出すると2つ目の点が感光紙にプロットされる。 こうして一つ一つの電子を射出して出来上がる模様をみると、電子同士がぶつから無い筈だから縦に長い長方形にならなければいけない。 ところがやはり濃淡のある模様になってしまう。 1つずつだから干渉し合えない筈なのにだ。 

さらに2つの窓のうち一つを閉じるとこの電子の干渉は起こらなくなる。

これは一粒の電子が同時に2つの窓を通過しければ有り得ない話だ。
量子力学ではこの感覚的にも古典物理学でも有り得ない話を説明している。

最近になって電子なり電子を一粒ずつ射出する実験が可能になってきて、実際にこの事が確認されるようになってきた。

それ以前は理論上だけの話で実験は出来なかったわけだ。

つまり量子はある確率で存在する。 原子の周りに雲のように存在する。 たとえ電子が一粒しかなくとも、雲のように存在する。

オィと言って電子を捕まえた瞬間に場所が決定すると考えるのだ。 つまり捕まえる前は色々な位置が可能性として想定されていると考える。

人間の常識として受け入れにくい話だが実験結果から現実だ。

大学の合格発表が掲示板に張り出される直前の受験者の私は、合格した私と不合格な私が重なりあって存在している状態と言う話と同じだ。

結果が出た瞬間に合格した私と、不合格な私の世界が2つに分岐して行く。 多世界解釈と言う考え方だ。 そんな馬鹿なと思うかもしれないが、実験の結果からはそうでもしなければ整合性が取れないのだ。 もちろんコペンハーゲン解釈と言う伝統的な考え方もある。


1826年から英国王立研究所で続く、「金曜講和」と言う科学の講和会がある。 タキシードにボウタイと言うドレスコードの厳しいこの会で日立製作所の外村(とのむら)さんという方が上記の実験を披露している。 (新書なので是非読んで興奮を味わって欲しい。) これがもちろん大絶賛で、物理雑誌「フィジクス・ワールド」読者選定の「世界で最も美しい10の科学実験」の中で取り扱われている。 

60分あるが、短期な人は25,6分から見れば良い。但し波の干渉がわからなくなるかしれない。

Windowsの方で、リアル・プレイヤーをダウンロードする場合、有料のお試し画面が出てくるが、基本ソフトは無料なので、よく見てダウンロードして下さい。

PS 少し直しました。 これも参照下さい。 2重スリット実験wiki

4 件のコメント:

Y102 さんのコメント...

初めまして。
電子一つ一つを時間的、空間的に十分切り離して実験を行ってもこの現象が起きるという所が奇妙ですよね。粒子と波動の二重性を極論すれば、我々が見ているものはすべて「人間精神が描く幻影」なのかもしれませんね。ちょうど二次元に書いた立方体の、ある面が手前に見えたり奥に見えたりするように。でもその真実の姿は「12本の線」なわけです。しかしそれを「12本の線である」という意識で見る事はほとんど不可能ですよね。これと同じように「粒子と波動の二重性を持った何か」(真実の姿)を意識して見る事は出来ないから「粒子か波動のどちらか」は結局幻影なんじゃないか、というわけです。

Porco さんのコメント...

コメント有難う御座います。
感光紙は2次元で、頭で想定しているものは3次元でしかありませんものね。

Tansney Gohn さんのコメント...

いつも拝見しております。m(__)m

>つまり量子はある確率で存在する。 原子の周りに雲のように存在する。

このあたりは株価予想と同じようなものを感じさせます。

Porco さんのコメント...

コメント有難う御座います。本当に感じさせるものがありますね。量子は確率として存在するが観察した瞬間に位置が確定してしまう。
アインシュタインは許せなかったのでしょうね。 高校の時、幽霊になると言って自殺者が出て、物理の先生が幽霊に質量があるのか?聞いてみろと興奮して怒っていた事を思い出します。