2009年8月11日火曜日

世界でもっとも美しい10の科学実験



世界でもっとも美しい10の科学実験
ロバート・P・クリース 青木薫訳

経済学における学説史ではどうしても特定学派の優位を示したり、学派間の共存に寛容にはなれない。

旧ソビエト連邦や米国のマッカーシズムにおけるマルクス経済学と自由主義経済と言う大きな流れにおいても、事、政治が絡む以上、バイアスと言うレベル以上にそうした歴史観は捻じ曲げられてしまう傾向がある。 

最近においても新自由主義の失敗と銘打って、何が何でも悪く捉えられてしまう事には辟易する面もあるかと思う。

また経済学者のブログ等でも、何が何でも異なる考え方を排斥せねば気が済まぬと言うような傾向が強いのも元来経済学自体が政治体制と分離できない以上は仕方の無い事なのかもしれない。で、物理学にはそれは薄い。小説「天使と悪魔」に記されたバチカンを中心とする時代には宗教対科学の対立する時代こそあったが、近世以降は影響を逃れている。但し現法王ベネディクト16世がガリレオ地動説を認めたのは昨年12月の事であったが。

「世界でもっとも美しい10の科学実験」は2006年9月に日本語版が発売された本で新刊ではないが、「量子の新時代」を読んでいて見つけたもので、既にWEBには沢山の書評が出ている。著者は哲学科の教授であるが、そもそも19世紀までは物理学者は哲学者であったし、現代でも哲学では食べていけないので、数学や物理を教えているものも多いと言う。 米国東海岸では哲学のPhD保有者のタクシードライバーは多いらしい。 著者の知見は物理学者そのものである。

10の実験は著者がコラムを担当している国際的な物理学雑誌「フィッジクス・ワールド」の読者に「一番美しいと思う物理学の実験」を挙げてくれるよう頼んだ結果である。

細かい解説よりは内容こそが興味を引くかと思うので、以下目次に年代等情報を付加した。

1.世界を測る
エラストテネスによる地球外周の長さの測定
紀元前3世紀 アレクサンドリア:現エジプト

2.球を落とす 
斜塔の伝説(ガリレオ:重さの異なる物体が同じ速度で落下する。)
1600年頃 イタリア

3.アルファ実験
ガリレオと斜面 (落下の距離は時間の2乗に比例する)
1604年 イタリア

4.決定実験
ニュートンによるプリズムを使った太陽光の分解 色は物体の反射で決まる。
1672年  イギリス ニュートンはガリレオの死んだ1642年生まれ

5.地球の重さを量る
キャヴェンディシュの切り詰められた実験 地球の密度 重力定数G
1798年 イギリス

6.光という波
ヤングの明快なアナロジー  光は波のように振舞う。
1803年 イギリス

7.地球の自転を見る
フーコーの崇高な振り子 地球の自転の目視化 ジャイロスコープの発明
1851年 フランス

8.電子を見る
ミリカンの油滴実験  電子の電荷を測定
1923年 ノーベル賞 アメリカ
ライバル エーレンハフトが面白い
ニーチェ曰く、確信は嘘よりも危険な真理の敵である。

9.わかり始める事の美しさ
ラザフォードによる原子核の発見
1908年 ノーベル化学賞 ニュージーランド、カナダ、イギリス

10.唯一の謎
一個の電子の量子干渉
1973年 ボローニャ・グループ
1989年 日立製作所 外村G  両方ともWebで見る事ができる。



ひとつひとつの逸話が重量感のあるストーリーを持っている。
文科系の私としては4番目あたりから「へェー」と言う状況になってしまったが、本書のテーマ「美しい」は充分に堪能できるものであった。

また併行して読んでいた経済学史は1690年のイギリス、ジョン・ロックの「統治論」から始まる。欧州文化における近世の動きが連動してこれもまた楽しめた。


寄り道は良い加減にしてまた金融に戻る。


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