2009年8月21日金曜日

タレブ怒る


18日の英国保守党党首デービット・キャメロンが出席したイベントで、彼は英国のデフォルト・リスクについて言及しこれはロイターのヘッドラインになっている。
S&Pは5月に英国債格付けをAAA安定的からネガティブに引き下げているし、英国の苦境は世界中が知っている事であるので特に驚く話でも無い。

ところが実はこのイベントにはブラックスワンの著者ナシム・タレブも出席しており、キャメロンとの噛み合わないディベートの後で、これを報じたFTに怒りを爆発させ抗議文を公表している。 抗議の内容は彼が「クラッシュを愛している」と発言したと言う記述と、二酸化炭素問題(地球温暖化)において積極的では無い、つまり"Love to pollute"と表現されていると言うものだ。 彼はその前に英国GQ誌のインビュー記事にも不満をもらしている。

彼の著述、と言っても、「まぐれ」と「ブラックスワン」だが、皮相的にロングテールリスクとか、「異常値が出る預言者」とか表現されがちだが、それらは全く間違っている。 「まぐれ」の第7章では彼はソロスとカール・ポパーを引き出して彼の根源にある考え方を述べている。 タレブは「ソロスは哲学者では無いが、哲学者でありたがってる」と表現しているが、今回のようなケースではいずれタレブ自身もジャーナリズムからソロスと同じような扱いをされかねないだろう。

実はここのところブログの更新が滞り勝ちになっていたのは、望んだわけでは無いが、いくつかの本で読書が行き詰っていたからだ。 きっかけはカール・ポパーだ。「まぐれ」ではタレブはポパーに1章まるごと費やしているし、ブラック・スワンでも巻末の索引を見ればわかるようにポパーの引用は非常に多い。

最近量子ねじれに関する本をいくつか読んだ事と、Twitterで推薦された事もあって、ポパーの量子論と物理学の分裂を読んだ。
これはどこまで理解できたかを別にして意外とすんなり読めたのだが、清水書院のポパー案内書「ポパー」川村仁也著をどうしても読めない。 言葉遣いが素直に消化できない。 1日10ページづつ読めば読めるかもしれないが、それでは片っ端から忘れて行ってしまう。 この本と格闘しているうちに何が目的でこれを読んでいるかさえ分からなくなってしまった。

勿論著者が悪いのでは無く、あきらかに僕の教養不足が原因だ。 それでも頑張って読んで一応はポパーの思想形成の過程はあらあら分かったのだがすっかり消耗してしまった。具体的に言うと軽い頭痛がした。  それで哲学者は何故こんな分かり難い言葉を使うのか? と言ういつかどこかで聞いた事のある話でソーカル事件(これは面白い)を思い出した。これに関連して以前購入した「知」の欺瞞を引っ張り出してきたのだ。 ここでもポパーには十数ページを割いており、ポストモダンの哲学者をこき下ろしている中ではとても好意的(当然だが)に扱われている。

それで何故このような自分に似つかわしく無い本を買ったのかと考えるとタレブの「まぐれ」に推薦が入っていたからだと言う事を思い出した。と言う事で投げたブーメランのようにグルッと廻って元に戻ってきてしまったのだ。

結論から言うと金融関係で必要最低限ポパーを知りたいと思えば、「まぐれ」の第7章がおすすめだ。 知の欺瞞は面白いからお勧めだが、ポパーは関連書籍も多いし、金融実務屋が趣味で読むならともかく簡単に読めるものでは無い。


哲学者として振る舞いポパー流の知性をあこがれているタレブの相場観を聞く事にそれ程の意味は無いし、それはおかど違いだし、それを聞き出そうとするジャーナリズム自体が理解不足と言わざるを得ない。 また地球温暖化に関しても、人間による二酸化炭素排出量削減が本当に効果的なのかを疑わしいと見る見解は科学者の間では特殊では無い。


それよりはタレブに対し反証不可能な占い師的相場予測を期待し、政治家でも無いのに二酸化炭素問題に強引に世論との同意を求める方が土台無理な話だ。

ちなみにカール・ポパーも性格はかなり激しかったそうだ。


それで苦心の末に見つけたのだけれど、ポパーに関してWEBに非常に読み易いサイトがある。 元穂高中学校校長 高坂邦彦氏のHPだ。 こう言う知性もあるのかとすっかり感心した。 情報量としてはこれぐらいで充分だったのだ。

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