2009年9月23日水曜日

ジャック・アタリを読んで


ジャック・アタリの「金融危機後の世界」を読みました。 またこの本を読むために「21世紀の歴史――未来の人類から見た世界」を取りあえず先に読んでおきました。

結論から言うと私にとってはどちらも大変な良書でありました。
備忘の為にメモを残しておきたいと思います。 ベストセラーですからもう読まれた方も多いと思いますが、読まれていない方にも今後の事を考えると基本的なところは押さえておきたい本だと思います。 非常にコンセプチュアルな本なので評価は読み手の思想、力量に大きく依存すると思われます。 従って書評では無くマトメにしたいと思います。

先日8月10日に鳩山首相が日本のVoiceに投稿した「私の政治学」が要約された形で翻訳され、ニューヨーク・タイムズ等で叩かれた事は記憶に新しいと思います。 私が思うに首相はこの本にある考え方の影響を少なからず受けているのだと思います。勿論首相はこの本を読んでいるそうです。

鳩山首相の「友愛」を見て陳腐だとか、少し変わった人だとお感じでしたら、それは私達自身がこれからの思想の潮流に追いついていけ無いのかもしれません。 そう思わせる本でした。

ジャック・アタリは現在65歳、アルジェリアの首都アルジェの出身でフランスにおける典型的なエリート・コースであるパリ政治学院を卒業、38歳の時にミッテラン大統領の補佐官を勤め側近中の側近とも言える人物でした。 ベルリンの壁が崩壊し、東欧が資本主義市場に組み入れられる過程ではこれらを援助する欧州復興開発銀行を事実上創設し、91年から93年迄総裁を務めています。 2007年にはサルコジ大統領に指名され、大統領諮問委員会「アタリ政策委員会」の委員長となり、政策提言を行なっています。きっかけは「21世紀の歴史」だそうです。

作家、経済学者、思想家であり、絵本も書けば、オーケストラの指揮者でもあるそうです。 日本ではなかなか見られない天才に属する人物なのでしょう。

キーワードに沿ってまとめておきたいと思います。

21世紀の歴史では人類の始まりから綿々と歴史を辿り、21世紀を展望していくと言う手法が取られています。 その中で資本主義の歴史として中核となる都市を中心都市として定義づけています。


中心都市
1.ブルージュ 2.ヴェネチア 3.アントワープ 4.ジェノバ 5.アムステルダム 6.ロンドン 7.ボストン 8.ニューヨーク 9.ロスアンジェルス

この中で、アムステルダムはオランダの制海権がイギリスに奪われた事により、海運業者や金融業者がロンドンに本拠を移した為に覇権が移動したとしています。 年代的には私の認識とはズレていますが。

ロンドンからボストンへは1890年の恐慌によるイギリス経済の衰退を上げており、我々の学習した第1次大戦が原因と言う考えとは少し異なっています。 そして恐慌を経てニューヨークへ、1980年からはロスアンジェルスと言うよりもシリコンバレーやハリウッドを含む西海岸に中心都市はあると言う考え方をしています。

1990年頃に東京へ移動する可能性はあったが、1.政治的にリーダーシップを取ろうとしなかった事、 2.保護主義で開かれた国でなかった事から、そのチャンスは失われたとしています。

中心都市は開かれており、世界中から才能を引き寄せる力が必要です。  しかし今後の米国においいては、多額の政府債務、対外債務等から保護主義になり、内側に向いた政策にならざるを得ず、アメリカ支配は崩壊して行くとしています。 但し今後の中心都市としては、ムンバイ、北京が可能性を持つとしながらも、条件は整っていないとも発言しています。


アタリはそうした覇権に絡む国境をも超越する者として、国境間を自由に行き来するノマドが増え、その人々が世界的、地球的危機に影響を及ぼすようになるとしています。 これは我々の周辺でも実際に体感できる現象です。

ノマド
ノマドとは遊牧民や、放浪者。 より良い住環境や土地を求めて旅をする部族や集団をさします。 最近色々な文章の中にノマドと言う言葉が目立ち始めたのでは無いでしょうか? 昔の中央アジアの遊牧民や日本における傀儡子(くぐつし)などの公界民を想起させますが、アタリは現代あるいは近未来におけるノマドを3つに分類しています。

1.超ノマド  
富裕層などが携帯電話やモバイルPCを持ちインターネットを駆使しながら世界中を移動しながらビジネスをしたり、税を軽減したりする人達を指します。 作家や俳優、プロスポーツ選手、投資家や投資銀行マンなども入るのでしょう。人口的には1千万人から数千万人と言われています。

2.貧困ノマド
これはアフリカ大陸などに見られる正に食料や水、非戦闘地域を求めて、生きる為に国境を越えて移動するノマドです。

3.バーチャル・ノマド
これは正に今PCの前に座っている我々の事です。 インターネット技術の進化により移動せずともスクリーンを通じて世界中をバーチャルに移動している人達です。 世界の情報に直に接触する事も可能です。 国境によって情報を遮断することは困難になっているのです。

(因みにアタリの造語で頻繁に登場する超はsuperでは無く、Hyperです。)

次回へ続く

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