2009年9月23日水曜日

ジャック・アタリを読んで-2

前回の続きです。

インサイダー

彼の言うインサイダーは通常インサイダー取引で使用する用語とは少し違います。
特定の人物をさすのでは無く、金融システムの内部におり、情報の非対称性の有利な側にあってリスクや仕組みを理解している人達をさします。 彼らは強欲で、自身の利益のみに関心を持ち、世界的な金融恐慌でさえ利益の源と考える。 投資家でもなく住宅購入で借金を背負った人達でも無い。 顧客である、資金調達者や資産運用の顧客でさえ裏切り、自らの資産を犠牲にする事なく仲介によって利益を得る人達です。彼らは国境を越えた世界中の市場を場としており、現在のような各国バラバラな規制では監視し、取り締まることはできないとアタリは考えています。 ルールは国家毎にもつのでは無く、市場がグローバルであればグローバルに規制されるべきと考えます。 今回のG20における規制強化の根拠となる話なのですが、そう簡単には進展しない話なのでしょう。


金融恐慌

市場は資源を配分する為の最高のメカニズムであるが、民主的な公的介入は必要である。と彼は考えています。
この20年間米国では需要はサラリーマンの借金で維持され、借金は購入された資産を担保としてきました。この状態を維持する為金利は低く抑えられましたが、債務の拡大によって高まるリスクを民間金融機関やインサイダー達は複雑化した保険メカニズムや証券化メカニズムを持って対処しました。 またこれらの複雑化は儲けの源泉でもあったのです。 リスクの高まった金融商品は世界中のメカニズムを理解しない投資家に押し付けられこれらには監視(公的介入)がなされなかった。 結果として中国、日本、欧州は自らの資力よりも贅沢な暮らしをする米国に融資をし続けてきた。そしてこれ以上資産価格が維持できない状態になった時、それに感づいたインサイダー達が出口を求めて殺到し、金融恐慌が発生したと考えています。 これは特殊な考えではなく一般的な意見ではありますが、インサイダーと言う概念は少しユニークですね。 報酬計算の非対称性、つまり損しても払わないが、儲けは一定割合で頂戴すると言う構造等々を簡単に説明する為の用語となります。

為替

第2次世界大戦終了間際のプレトンウッズ協定によってドルは承認された唯一の国際決済の手段となりました。 基軸通貨となった訳です。 ドルが基軸通貨としての役割を果たす為には、アメリカがドルを使い、他国がドルを受け取り、ドルが充分供給されなければなりません。これは米国の国際収支の赤字を意味し、ドルが世界各国の外貨準備として保有されればされるほど、ドルに対する信認は弱まると言うパラドックスを抱えているとあります。このあたりの経緯はこの本の独壇場でしょう。ケインズ対ホワイト等コンパクトに纏められています。 この他国が米国をファィナンスし続けると言う状態が永遠に続くものでは無い以上、ドルの下落は必然でありましょうか、中国は内需に力を入れ始めたのも、この過分な米国債保有による一蓮托生状況からの決別であり、効果が出始めるとドルは内に篭もり始め米国は国内問題に追われると予想しています。米国覇権の崩壊です。
参考:トリフィンのジレンマ


5つの波

これから起こる変化
これは「21世紀の歴史」では3つの波として扱われていますが、5月にNHKで放映されたアタリの特集では5つの波とされています。
これに関しては多くのブログで取り扱われていますので、簡単に項目だけ書いておきます。

1.アメリカ支配の崩壊
2.多極型秩序 G20など やがて失敗に終わる。
3.グローバルな統治 超帝国  市場そのものが国となる。
4.市場の無秩序 ハイパー紛争の時代
5.新たな世界の誕生 利他主義に基づいた世界
  

以上簡単ではありますが、キーワードに関してマトメにしておきました。 例えばFIFAは世界的にサッカー界を統治していますし、オリンピック協会も同様です。FIFAを無視して自国のサッカー自慢をしても話しにならないでしょう。 これらは超国家な統治機構でもあります。 インターネットにおけるTwitterやSkypeの国籍をあまり気にはしません。しかし金融市場がグローバル化し、国境を越え、タックス・ヘブンを交えてマネーが動く今、グローバルな統治システムが無い事が問題であると言うのが彼の考えの根底にあります。 大きな歴史観を得られる貴重な本だと思いますので是非一読を。 また最初気恥ずかしかった鳩山首相の「友愛」もこうした流れの中では凄く現実的な思想である事も理解できるかもしれません。 政治家は思想家であっても、同時に実務家でなければなりませんが。 

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