2009年10月29日木曜日

日本の財政赤字 2 ネバダ・レポート


今から6、7年前のある日、私は以前に在籍していた証券会社の後輩と一杯やっておりました。
彼は富裕層営業の部門に在籍しており、私は当時の会社から富裕層セールス部門をどうするか考えておいてくれと頼まれていたので情報収集をしていたのです。

その時彼はこう言いました。

「お金持ちは資産を海外にドンドン持ち出していますよ。」

昔から表に出せないお金はマネロンの為、相続の近い人は子供が留学中に外で相続、積極的な投資家は各種の税金を嫌って海外に資金を持ち出すと言う事はよく行なわれている事でした。 ただこの2001年以降のこの時期、IT長者が誕生し、IPOによる資産家が数多く誕生していましたから、欧州系銀行を中心に日本国内における富裕層営業部門の強化はある種のブームになっておりました。 香港やシンガポールの事務所で働き日本にはグレー(ブラック)の状態で営業するセールスマンの話もポツポツと聞いておりました。

彼は続けます。
「このまま財政赤字が拡大すると政府はどこかで課税強化しなくてはいけません。 それで多分それは財産税の形で行なわれると富裕層は考えているんですよ。」

その時私は知りませんでしたが、後でネバダ・レポートがあると言う事を知りました。 彼はその話を伝聞で聞いて私に少し大袈裟(証券セールスの常)に話してくれたのだと思います。 今では当時金融に関わっていた人であればこのレポートの事はご存知かと思います。

これは出所不明の言わば怪文書の類ではありますが、IMFのスタッフと財務省の官僚が共同で作成したと当時は信じられておりました。財政を健全化すべく啓蒙活動に熱心であった財務省ならばさもありなんと思われました。

内容は日本が財政破綻に陥り、IMFの管理下に入った時のアクション・プログラム的なものになっており、2002年2月14日に開催された第154回国会の予算委員会で、民主党の五十嵐文彦議員(当時)がこのレポートについて質問しており広く知られる事となりました。 2002年の歳入・歳出の状況は下のグラフを参照して下さい。 質問自体は「収支均衡の重要さを理解していますか? 柳沢さん、竹中さん」と言う趣旨でありましたがレポートの内容は以下のようにショッキングなものでした。

1.公務員の総数の30%カット、及び給料30%のカット、ボーナス全てカット
2.公務員の退職金は100%すべてカット
3.年金は一律30%カット、
4.国債の利払いは、5~10年間停止
5.消費税を20%に引き上げ
6.所得税の課税最低限を年収100万円まで引き下げ
7.資産税を導入して不動産には公示価格の5%を課税、債権・社債については5~15%の課税、株式は取得金額の1%を 課税。
8.預金は一律1000万以上のペイオフを実施し、第2段階として預金額を30%~40%財産税として没収する。

不動産に課税する場合、既に引退して家賃収入だけで暮らしているような人からどうやって課税するのか?など突っ込みどころ満載であります。
しかしながら国民の誰かが払わなければならない場合はどうするのでしょうか?

今般もう一度日本に資産をおいておいて大丈夫か? みたいな話が盛り上がっているのは当然の事です。



下のグラフは財務省のHPからです。 英語になっているのは外人投資家向けの資料であるからです。
赤い線はTotal Expenditures 支出、青い線が税収です、棒グラフが債券発行額です。
本年6月の海外IR用資料から

バブル以降両者の乖離がどんどん広がり財政赤字が問題化。 小泉首相以下危機感の中「郵政選挙」が行なわれた事情とその効果(外需による景気回復はありましたが)が見てとれます。 
 
思えば安倍首相の時に郵政造反組を自民党に戻したのが総ての過ちのような気がする今日この頃です。  それは多分読者の皆様も同じように、与党民主党。 特に郵政問題への取り組み方への不安が増しているからなのでしょう。


「ネバダレポート」とは
IMF(国際通貨基金)調査官と日本の閣僚らの合作とされ、2001年9月に一部政府関係者や政治家に渡った丸秘レポートで日本の財政赤字がいかに深刻であるのかを指摘し、当時の柳沢金融再生担当大臣が、国会でIMFによる日本の金融セクター審査受け入れを明言したことを説明した上で、 IMFが、日本経済再生に乗り出す場合、とる施策の可能性を列挙している。 


2009年10月26日月曜日

日本の財政赤字


週末は財政赤字についてダラダラと取りとめも無く色々と考えてみました。

先進各国は民間部門のレバレッジ解消を埋めるべく大規模な財政出動をしましたが、その反動がどうでるのかが今後の投資方針の大きな流れに影響を及ぼすからです。

先ず現在の財政赤字に関してはカウンターがあります。
また財務省による情報はここでわかります。

財政赤字の問題点 世代間の負担に関する資料等



次に日本国債について考えてみます。

先ず広く言われています95%が国内で消化されている状況は将来の支払いについて問題は無いと言う考え方です。外人投資家が保有している訳では無いので国家としてのデフォルトは考えにくいと言うよくある話です。 国家は寿命のある個人とは違いますので、借り換えを繰り返し永遠に借り続けると言う事が可能です。 何時までに完済すべしと言うわけではありません。

但しその金額には制限があるのだろうと思います。今、歳入が40兆円を割れて、利払いが約10兆円。 利払いを受け取るのは債券保有者つまり国民ですが、仮に国債発行額の増加や金利水準の上昇等で利払いと歳入が同じになれば、さらに国債を発行するか増税する以外に国は予算を立てる事ができません。 それは前回のエントリーで考えていた事です。

ここにリカードの等価定理(財政赤字による公債の負担が現在世代と将来世代では変わりがないことを示した定理。wiki)があります。
これに関してはアゴラで池尾先生が野口先生の「超」整理日記#466(『週刊ダイヤモンド』6/13)に世代会計の観点から反論する形で説明がなされています。国債の負担--池尾和人

少し私なりにポンチ絵を使って考えてみましょう。 青字は先生のブログからの引用です。
ここでは税か国債発行か?と言う風に考えます。国として歳入以上の支出が求められる時に、例えば消費税増税をして税を徴収するのか、あるいは後で儲かったらお返ししますと言うので取り敢えず国債を発行するのかと言う問題です。株屋から見ればMM理論における株式資本か借入金かの問題と同じような話です。


いまごく簡単な世代重複モデルを考えることにし、第1世代は第1期と第2期の2期間だけを生き、第2世代は第2期と第3期の2期間だけを生きるとしよう。そして、各世代はその世代が生きる最初の期にのみ収入があるとし、第1世代の第1期における収入をY1、第2世代の第2期における収入をY2であるとしよう。金利はゼロだと考える。また、論点と関係しないその他の貯蓄行動等は無視する。

先ずここで大事な事は受益を受けるのは第1世代であると言う事です。

必要な政府支出を税金で賄った場合。
第1世代の可処分所得はY1-GですがGの分の受益があります。

次に税金の替わりに国債発行で賄った場合。
これも第1世代の可処分所得はY1-Gですから、受益者が負担した形となっています。

ところが相続する前に老後の生活資金の為にと第1世代が国債を売却して消費した場合。モデルは国内に限定していますから購入者は第2世代しかない。
受益を受けたはずの第1世代の可処分所得はY1と受益分Gが手元に残りますが、借金を返すつまり国債を償還する為には、第2世代の可処分所得はY2-Gになってしまいます。また第2世代が国債を購入しない場合(外人に売却した場合)でも、償還の為の増税によって第2世代の可処分所得はY2-Gと同じとなりますが、今度は国際金融市場に本格的に翻弄される事になります。 それが嫌なら外人が手も出さないような価格でずっと売買していなさいと言う事です。  国内の誰かが抜けたら危険な状態になるのかもしれません。 もしかしたらそれは郵貯だったのかもしれません。

リカードの等価定理が成立するためには、国債の償還のための増税が第2期に第1世代に対して行われるか、第1世代が子孫(第2世代)のことを配慮して国債の償還に必要な額の資産をタダで譲り渡すことが条件になる。果たして、これらのいずれかの条件が現代日本で成り立つのであろうか?

これが嫌なら、永久に国内世代間で転売を繰り返して行けば良い事になりますが、第1世代だけはY1+受益のGで、後の世代は可処分所得だけと言う事になります。

今はこんなノリですが、国債だけ鎖国しているなんていつまでもできるのでしょうか?

上のモデルでは弟1世代の受益のために国債が発行される事になっていますが、受益とは何でしょうか?
債務額も重要ですが、何に使われたのか?投資先が重要です。次世代が受益できるようなものであれば世代間の問題もいくらかは癒されるでしょう。

国家ですから総てが利益の為では無いでしょうが、税が投入されると言う事は会社で言えば、投資です。 国債発行による資金が何に使われたか?投資が反映されるのは収益ですからこの場合は歳入増あるいは法人税や所得税による税収増と言う形であるべきです。あるは政府の価値ある資産でも良いでしょう。 価値ある資産はキャシュフローがありそうですけどもね。果たして国家としての成長に寄与するようにインフラに投資されて来たのでしょうか?

政府のバランスシート(上図)はありますが良くは分かりません。 それよりも日々我々が感じてしまうのは、作りすぎた道路、空港、箱物、ダム、外郭団体、幸い民主党政権はこのあたり改革しようと取り組んでいます。 郵貯の事は気になりますが、大塚副大臣は今は大変そうなので、信じて待つ事としましょう。


しかしアカデミックなサイドで国債の償還可能性とかは研究していなのでしょうか?日曜日に探してみましたがこのサイトが見つかりました。 

財政の破綻確率に関するニュース
「経済財政の中長期方針と10年展望:比較試算」に基づく試算結果「日本の財政の将来予想(2009年4月23日版)」


驚くような数字ではありますが、手法やテナーなど取り敢えず私には評価する力はありませんのでコメントしません。時間かけて見てみます。



2009年10月22日木曜日

デビット・アインホーンの賭け


長さ300メートルの船でも使用されている鋼板の厚さは30ミリ程度です。
この船の10cmの模型を作成すると、板厚は10ミクロン程度。 市販のアルミ箔の厚さが11ミクロンなのでアルミ箔で10cmの船を作ったと考えればイメージに丁度あうかと思います。 ちょっとでも床に落としたり強く握ったりすれば直ぐに歪んでしまうほど脆いものです。

応用力学等を使って鋼板に必要な肉厚と張力、構造等を計算して船は設計されますが、実際には鋼板の厚さは経験によるところが多いと船のエンジニアから聞きました。船体が折れるような海難事故が発生すると鋼板の厚さは厚くされます。これは航空機でも同じで現実の設計ではやってみなければ分からないところが多く経験の積み重ねが様々な仕様を決定します。

これは経済においても同じだと思います。 ですから暴落は繰り返し、その都度対策を打つ事を繰り返します。例えば銀行と証券を分けたり。 何故かまた一緒にしたり。

Twitterを見ている方はご存知かもしれませんが、昨日クルーグマンの日本国債についてのブログが話題になりました。


これは同日のNYTの記事 Rising Debt a Threat to Japanese Economy 日本経済を脅かす増大する財政赤字 by Hiroko Tabuchiに対しての反論の形を取っています。


左のグラフを見ての通り、後者は対GDP政府債務が突出しているが、大丈夫か?と言う記事です。


NYT「日本の債務はGDPの200%にも達している。そしてさらに50兆円ほどの新規国債を売ろうとしているがいつか破綻してしまうのではないか?」

クルーグマン「もし投資家が破綻すると考えているならばこんな低金利な訳はない。 インフレリンク国債を見ても投資家は今後5年のデフレを予測している。CDSはドイツと比べて少々高いがどうみても財政危機には無い。」

それだけであればこれまでもよくあった話で、日本の財政危機などずっと続いている話です。いつもなら「ああそうですか」で済んでいましたが、今回はすこし違う要素が絡んできました。実は僕はこの記事はクルーグマンの日本に対する皮肉なのかなと最初は思っていたぐらいです。

その要素とは米国のヘッジ・ファンド・マネージャー デビット・アインホーンです。 参考:広瀬さんのブログ
彼は去年リーマンの崩壊に賭けてて大もうけしています。 そして今回は月曜日のコンファレンスで日本国債の崩壊つまり金利の上昇、円安のデス・スパイラルが発生するとして、4~5年のJGBプット・オプションを購入したと発表したのです。

Twitter上では池尾先生はクルーグマンはJGBの購入者が最終投資家では無く機関であると知っているのか? つまり特殊な状況下で成立している需給であると言いました。
また池田先生は郵貯の社長に不自然に(日銀総裁承認時に武藤さんを財務省OBという理由だけで拒否した)大蔵省OBを指名した事で郵貯の資金を国債に振り向ける腹だと懸念を示しています。(もっとも郵貯の資産327兆円のうち既に8割は国債ですが。)

確かに1ヵ月後、半年後に国債を消化できない事態が発生するかと言えばそうは言えないでしょう。各エコノミストの意見もそうはなっていません。

95%を国内でファィナンスしている→誰も外人が買わない。

国民金融資産は1400兆ある→全部国債にする訳にはいかない。

かなり荒っぽいですが9月末の全銀協総貸出し残高は426兆円、銀行だって国債だけ買っている訳ではありません。それに少ないながら10%程度は株式や投信にもおいておきましょう。 600兆ぐらいは国債になれないのです。

仮に国債残高が800兆になればさすがに国内で国債をファィナンスできるとは誰も思わないでしょう。 つまり現時点の発行残高554兆円と800兆円の間のどこかに崩壊するポイントがある訳です。

10年度予算概算要求では国債費は21兆円、内利払いは9兆4000億円と見積もられてました。外人からファィナンスする段階になって魅力を増す為に1%金利を上げると、金利負担だけで追加で6兆円余分にかかります。一方で日本の歳入は45兆円(今年は40兆円を切りそうです)しかありません。 家族内でやってる間はまあ良いかと言う強引なロジックでも、一旦海外に資金を求めると、金利は上昇し、通貨は下落します。さらに輸入物価の上昇からデフレ期待は後退し、インフレリスクも考えられる、さらに必要調達額が増え、デフォルト・リスクは高まると言う風に、デス・スパイラルが発生するイベントなのです。

デビット・アインホーンはこのイベントを4,5年内で見ていると言う事です。 この件ではノーベル賞経済学者クルーグマン先生も役には立たないでしょう。 勿論後から懇切丁寧に説明はしてくれることだと思いますが。

バブル崩壊、財政支出、国家債務の増大、高齢化、と先進国の最先端を走ってきてしまった感のある日本は、他国に先駆けて「一体GDPの何%であったら国家債務は耐えられるのか?」と言う壮大な実験に入っているようにしか思えません。 そしてその時にきっと鋼板に必要な板厚が決定されるのかもしれません。


追記:
このNYTの女性記者はあまり評判が芳しく無いとの事。
himaginaryの日記でディーン・ベーカーがこの記事に対して攻撃した事をブログ記事にしています。
参考まで。 

She's a killer Queen


2009年10月21日水曜日

ピコラエヴィッチ紙幣



城山三郎経済小説大賞の受賞作「ピコラエヴィッチ紙幣―日本人が発行したルーブル札の謎」熊谷敬太郎作を読みました。


日本では決して有名ではありませんが、尼港事件として知られている事件を小説化したものです。
ウラジオストックを浦塩と呼ぶように尼港とは地名でニコラエフスク・ナ・アムール(地図参照)の事です。




第1次世界大戦が終了し、ロシア革命が極東の地に迫り始めた時期の話で、当地は鮭鱒漁や金鉱山で賑わいを見せていました。

当地の物流を支配する島田商会ではハイパーインフレ下、貨幣価値下落の著しいルーブルよりも島田商会の発行する通貨(商品引換券)が広く住民の信頼を勝ち得ていました。

鮭鱒漁の始まる前に漁師達に自身の貨幣で融資し、漁獲物で返済してもらうと言うものです。

当地では物品の販売を島田商会がほぼ独占していましたので、島田の貨幣で必要なものはなんでも揃ったのです。

現地の漁師の為に善かれと思って始めたこの制度。
問題は担保融資では無く、実態は先物買い現物決済であった為に強烈なインフレの下、島田商会は巨利を貪る事になります。

対日本に門戸を開く、閉じられた系での擬似通貨。

様々な出来事が起こり街は運命に向かって。。。。。

非常に面白い小説でした。
著者の熊谷さんは、63歳のデビュー。 
細かいところまでよく調べられていて、テンポの良い作品に仕上がっています。


2009年10月18日日曜日

ショッッキングか予想通りか?


Twitterではもう紹介してしまいましたが、面白いビデオがあったのでブログのほうでも紹介しておきます。

これはEconomics Oneと言って米国連銀のFFレートの適正値を算出するテイラールールを提唱したスタンフォード大学経済学者のジョン・B・テーラー教授のブログで紹介されていたものです。 テーラー教授のブログはいつも分量が控え目で内容も分かり易いので、クルーグマンやマンキューをフォローしている人はリーダーに入れておいても良いかもしれません。

このビデオはゲーム理論に関るものです。
ゲーム理論で有名な「囚人のジレンマ」は、次のような話です。

プレーヤーは2人の未決囚で、ある犯罪の共犯者として別々に収監されている。
それぞれが(協力して)黙秘すれば、双方とも軽い罪で起訴され、1年の刑期ですむ。

もし片方が自白し、相手に不利な証言をする事に同意すれば(つまり、相手を裏切れば)、自白した方は起訴されずに自由な身になれるが、相手は10年の刑を受ける。

もし双方とも自白したりすれば5年の刑期となる。

別々に取調べを受けている囚人はどの戦略を採るでしょうか?


経済学の前提とする合理性と自己利益追求の仮定から言えば、このようなゲームのプレーヤーは相手を裏切る事が想定されます。
もう一人のプレーヤーがどうなろうと気にしないし、「正しいこと」をし損なってもなんら良心の呵責を感じない。と想定されるからです。そして2人とも1年で解放されると言う最適な選択が存在するにも拘らず、そうはできないジレンマを説明する時に使われます。

しかし現実の世の中ではどうでしょうか?
人は「正しいこと」をしたいと考えているし、世間体だって気にします。 ヤクザの間でも裏切った奴として生きていくのは大変かもしれません。

つまり人間は合理性だけでは行動しませんよ。 と言う話にも応用されて使われます。

以下は教授のブログの意訳です。

ゲーム理論では2社(SteveとSarah)が独占(複占)するある商品の市場において、2社は値上げか値下げの選択ができるとします。

報酬のペイオフは左図のようになります。
もし、スティーブとサラが協調して値上げをすれば(Split)双方とも値上げによる利益を享受できます。
しかし、もしサラが裏切って値上げをしなければサラがスティーブの顧客を奪ってしまい(steal)、スティーブは市場を失います。
サラが100でスティーブは0です。

同じようにスティーブが裏切り(Steal)、サラだけ協調(Split)すれば逆の結果になります。

また両方が裏切ると商品価格は低下し、両方とも利益は無くなってしまいます。

もちろん消費者は双方が協調などせず裏切って競争してくれれば価格が下がりますので恩恵がある訳です。これは重要な経済学の命題です。

さてビデオです。これは英国のTVショー、ゴールデンボールと言う番組です。
ここではSteveとSarahの2人が登場します。

賞金は10万0150ポンド

もしも2人が2分割する事に同意すれば(split)、5万ポンドづつお持ち帰りができます。
もしも2人とも全部欲しいといえば(steal)、両方とも1ポンドも持ち帰れません。
一人が2分割に同意、もう一人が裏切って全部欲しいと言えば、裏切った方が全部10万ポンド持ち帰りができると言う状況です。
さて、どうなりますか?








2009年10月15日木曜日

ドル50円に違和感無し


85年9月のプラザ合意の少し前、私は未だ証券会社に入社したてで、当時の部長と一緒にモルガン・スタンレーのテクニカル・アナリストの訪問を受けました。
彼は分厚いA3サイズの方眼紙の冊子を左手に、頑固そうな顔の割りにとてもチャーミングな笑顔で、右手の使い古した茶色い鞄を床におくと、ゆっくりと我々と握手したのを今でも覚えています。 方眼紙は鉛筆で手書きで書かれ、各種指標、コモディティ、200銘柄程度の彼の注目する銘柄のチャートがバー・チャートで記されていました。毎日書き込んでいるとの事でした。

その時彼はたしか化粧品のエイボン・プロダクト(AVP)を推奨しました。配当利回りが5%もありました。確かにその後エイボンは15ドルほどの株価が18ドルぐらいになったような気がしますが、それよりも彼は円ドルに関して大胆にも100円を割ると予想したのです。 当時ドルは240円~250円で推移、以前のフシである180円とか言うのであればまあ納得もいったのでしょうが、彼がエレベータに乗った後、部長が「彼はちょっと頭おかしいね」、私も「そうですよね」と言った事を実にクリアーに覚えています。 何故ならそれから10年ほどかけてドルは本当に100円を割ってしまったからなのです。天井からぶら下がった為替の掲示が整数部分2桁になるのを見ながら彼の事を思いだしたものです。

PCが発達するとチャートを描くソフトが広く販売され始めましたが、問題はデータ・フィードでした。パソコン通信の発達する前はフローピーに頼るしかなかったのです。当時チャートらしきものを見れたのはブルンバーグに駆逐された今は無きクォートロンだけで、それも実に荒っぽいグラフでありました。

皮肉にもチャート描画ソフトが発達すると同時にテクニカル・アナリシスの有効性も精査される事となり、The Encyclopedia of Tecnical Analysisと言う本がそれまでの様々なテクニカル投資技法をシュミレーションを通じて検証し、テクニカルでは儲からない事を実証してしまいました。 これは実験のやり方にもよるので異論はたくさんあると思います。 またランダム・ウォーク理論の現場への浸透もあり、ウォール街の大手証券ではリサーチ部門からテクニシャンは次第にいなくなってしまったのです。

テクニシャンはいなくなってもチャートは名前どおり大海原を航海する為の海図のようなものですから、市場参加者は使います。 また数学系の一部のリサーチャーは色々と数字をこねくり回したりしていましたが、良い結果はあまり聞いた事がありません。 そうした中でもエリオット・ウェーブと一目均衡表はパターン分析になりますので、コンピューターで解析するのは困難、言い換えれば曖昧なところがあります。 むしろこれらの解析者は哲学者に近いところもあるかと思います。

前振りが随分長くなってしまいましたが、今日のニュースで三井住友の宇野さんが大胆にも「ドル来年にも50円」、40年の下落で基軸体制崩壊-三井住友・宇野氏(Bloomberg) と予測しています。 (私はレポートを持っていません。)

以下引用、

エリオットの第5波

  宇野氏のエリオット波動分析に基づくと、ドル・円相場は40年近い下落の第5波目にある。ニクソン米大統領(当時)による71年8月の金・ドル交換停止の発表後、12月のスミソニアン協定でドルが主要通貨に対して切り下げられるまでの1ドル=360円から、急落に歯止めがかかった73年3月の254円45銭までが第1波のドル安。第2波のドル反発局面は75年12月の306円84銭までだ。
  第3波は85年9月の「プラザ合意」を経て95年4月の戦後最安値79円75銭までの19年以上にわたるドル安基調。第4波は米国を中心とする金融バブルが崩壊する直前の07年6月(124円13銭)に至るドル高・円安。現在は、第5波のドル下落過程にあるという。
  宇野氏は四半期データを基に、73年3月までの第1波(ドル安)の下落幅を約92円と算出。第5波の起点となる07年4-6月期の123円17銭から、この92円にフィボナッチ級数の1つ0.764を乗じた値を差し引くと50円強という目標値が得られると解説した。
  第4波を、値幅が徐々に縮小しながら急変動に向けたエネルギーを蓄積する「三角持ち合い」と見なした場合にも、最初の上昇局面である95年4-6月期から3年間の上げ幅を、07年10-12月期に突破した下値支持線の水準から差し引くと、50円台半ばが目安になる。

多分1、2波はブルンバーグが間違っていると思いますので勝手に直しておきました以下のチャートになります。

私は正直言いますとドル50円はやはり少し大袈裟かと思いますが、最初に書いたように頭がおかしいとはとてもじゃないが思えないのです。  できれば桁が1つ落ちてますから対数チャートでも良いかとも思いますが。  以前もブログに書きましたように少なくともサポート79円を目指すのは間違い無いかと考えています。

基本的な考えは変わっていません。 繰り返しになりますが、プレトンウッズで米国ドルを基軸通貨と決めて以降、ドルが基軸通貨としての役割を果たす為には、アメリカがドルを使い、他国がドルを受け取り、ドルが充分供給されなければなりません。これは米国の国際収支の赤字を意味し、ドルが世界各国の外貨準備として保有されればされるほど、ドルに対する信認は弱まると言うパラドックスを抱えています。 この長年の積もり積もった状況で、米国の借金体質の維持が困難になったのが、今回の恐慌でした。

ですから宇野さんの話には違和感は無いのです。 ただしアジアがブロック化してドルの需要が減るかと言うとそれは簡単では無いと思います。現在アジア間の貿易に使用している通貨はドルです。これは最終市場が米国なので商品の価格設定がドル建てである為です。 つまりドルに替わるアジア通貨圏が成立するにはブロック化と同じ意味になりますが製造する商品はアジアで消費される必要があると言う事です。


下にIMF発表の各国準備通貨の通貨別占有率をグラフにしておきました。 ユーロが緩慢にそのシェアを上げていますが、急激な動きではありません。ここ2四半期のデータは興味深いところです。


出所 IMF COFER

2009年10月13日火曜日

米国のペンション問題

Steep Losses Pose Crisis for Pensions
年金危機を引き起こす巨額の損失 ワシントン・ポスト
日本のdéjà-vu

株式市場がこれだけ下落してしまうと、元来株式組み入れ比率の高い米国年金に相当なダメージの及ぶ事は想像に難くないのですがこの記事は改めてその話に言及しています。

日本から見て既視感を覚えたのは給付の原資不足では無く、90年以降の日本株のパフォーマンスとディスインフレの世界での年金運用問題について、彼らにとって示唆するものがあるように思えたからです。 重要なところだけ抜粋してみましょう。

State and local government officials had predicted before the crisis they would have $3.6 trillion in their accounts by now, according to the Center for Retirement Research at Boston College. Today, they are $1.2 trillion short of that mark.

ボストン・カレッジの退職研究センターによると、国および地方政府は今回の金融危機以前の予想で今現在時点で3.6兆ドルあると予想していた。 現在はそこから1.2兆ドルの不足である。

From there, the deficit will grow even wider, according to Kim Nicholl, the national director of PricewaterhouseCoopers public sector retirement practice. Even if public pension funds were to hit their 8 percent investment targets every year, Nicholl calculated they would have less than half of what they need by 2025. This is because a greater share of the population will be retired and those who are will live longer, thus collecting benefits longer, she said.

PWC公共部門退職プラクティスのダイレクター、キム・ニコールによると、ここから不足はさらに拡大する、仮に年金ファンドが毎年8%のリターンを実現したとしても、2025年には必要額の半分にしか満たないでしょうと言う。

For these reasons, billionaire investor Warren Buffett has called these pensions ticking "time bombs."

(略) ウォーレン・バッフェットはこれらの年金をカチカチと時を刻む「時限爆弾」と言っている。

Traditional investment strategies, which rely on stocks, haven't fared well in recent years. To meet their obligations to retirees, pension funds tend to assume they will earn an eight percent return on investments each year. The stock market, as measured by the Standard & Poor's 500-stock index, is actually down 32 percent this decade.

株式リターンに依存した伝統的投資戦略はここ数年報われてはいない。 退職者への義務を果たす為には毎年8%のリターンを稼ぐ必要があると推定しているようだ。SP500で計測される株式市場はこの10年で現実には32%下落している。

California's pension fund lost $634 million from securities lending as of March 31, but the total could reach $1 billion after a full accounting is done, according to a report from the system's consultant, Wilshire Associates. Still, the pension fund says it remains committed to the practice because it boosted returns in the two decades before the financial meltdown.

加州の年金基金では3月31日現在、株式レンディングから634百万ドルの損失を出したが、正式な決算では10億ドルに達するだろうとウィルシャー・アソシエイツのシステムコンサルタントは語っている。 しかしながら、今回の金融危機以前の20年間で利回りを向上させてくれたこのやり方を今後も守り続けるしか無いだろう。

(ちょっとこれは知らなかったので調べてみますね。通常ストックレンディングは現金担保を受け取りますから損をする仕組みでは無いと思うのですが、リーマンが倒産している事もありますし、判りません。)

繰り返しますが、何故日本と既視感があるかと言えば、日本にアセット・アロケーションの概念が入りアセット・ミックスと言う考え方が導入され始めたのがバブルがピークの90年頃だったのです。 従って株式の期待収益率という事になると適当に15%ぐらいを採用していました。結果はご承知のとおりでした。

米国(G7全体を含んだりしますが)も80年代前半以降はグレートモデレーション(超安定化)と呼ばれインフレが抑えられ、安定した経済成長をを続けた時期にあたります。
下の図はGDP統計の税引き企業収益(青:左軸)と10年債(赤:右軸)のグラフです。


株の方は言うまでもありませんね。 しかし株式は2000年を最初のピークとするツイン・ピークの形になっていますから、2000年以降は期待にこたえたとは言えないでしょう。対数目盛りに注意。


日本の株式が15%と言う期待リターンをあきらめたように、米国はミックスされたアセットで8%のリターンを稼げるのでしょうか? 現在の米国10年債利回りは3.4%しかありません。 これまでの傾向線を引張って期待リターンとするやり方では困難な事だけは良く判ります。 米国はドル安傾向を維持する事で、外国投資から為替益による高いリターンを享受できます。 積み上がった政府財政赤字、企業利益の回復等を考えるとコントロールされたドル安は彼らの希望なんだろうな。と思う次第です。

上記記事中には、8%リターン達成の為、仕組み商品やヘッジファンドに果敢に挑戦する基金も多いとあります。 損したものに同額投資して回復を目論む。 今回のリバウンドの性質も日本のバブル崩壊時の切り替えしと同質なのかもしれません。


日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の目標収益率は3.37%。 株式は6%を期待。 リンク GPIF


2009年10月12日月曜日

なつかしの飛行塔


阿修羅。
インド民間信仰上の魔族。
外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、
内には猜疑心が強く、
日常争いを好み、
たがいに事実を曲げ、
またいつわって他人の
悪口(あっこう)を言いあう。
怒りの命の象徴。
争いの絶えない
世界とされる。

これは向田邦子原作の映画「阿修羅のごとく」2003年:森田芳光監督の冒頭のナレーションです。加藤治子さんが担当しています。

映画「阿修羅のごとく」は1979年のNHK土曜ドラマのリメークになります。 多くの豪華な主役級ばかりのキャスティングは言うまでもありませんが、演出の細かさには見るたび気付かされる事があるような素晴らしいドラマ映画であります。 因みに出演者は、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵理、深田恭子、仲代達也、八千草薫、坂東三津五郎、中村獅童、桃井かおり、小林薫、木村佳乃、紺野美沙子、どうでしょう、凄い配役ではありませんか、おまけに長澤まさみまで子役で出演しております。

この映画、森田監督のこだわりで、遊園地の飛行塔を是非シーンに入れたかったのだそうです。場所の設定は杉並区で東京なのですが、飛行塔だけは良いものが見つからず、結局奈良県と大阪府の境、生駒山にある生駒山上遊園地(撮影当時スカイパーク)で撮影されています。

私も祖父母が大阪であったので、小さい頃は信貴山や生駒山にはよく行っておりました。 この映画で見たこの飛行塔は記憶は定かではありませんが、間違い無く何処かで見た風景であったのです。 その後DVDを買ってメーキングの中で生駒山だと知り納得していた訳ですが、どうしてももう一度、訪ねたい場所でありました。もっとも普段からそんな事を考えている訳ではありませんが、出張とかで近鉄奈良線に乗った時(めったにありませんが)には必ず「ああ~」と「行かねばならない」と思っておりました。

それでやっとこの連休関西に行くチャンスがあり念願が叶い行ってくる事ができました。

近鉄難波から奈良線に乗り、生駒駅で降りますと山上遊園まではケーブルカーがあります。途中の宝山寺まで複線の日本最古のケーブルカーで、宝山寺からはさらに別のケーブルカーに乗り継いで山上へ向かいます。


猫の「ミケ」号


前が見にくい。


このケーブルカー、子供へのウケを狙って犬の「ブル」号と猫の「ミケ」号になっており2台がすれ違う時には「ワンワン」と「にゃんにゃん」と言う警笛で挨拶し合います。この顔が結構不気味ではないかなあ?と思う次第であります。 

おまけに前方の窓を円形に狭く区切ってあるのでケーブルカーの命、視界が大変狭くなると言う問題点まで指摘できるのではないでしょうか。 

普通で良いのに少し残念な気が致します。 地元の方気にされたら申し訳ありません。















さて、入り口のケーブルカーからしてお楽しみ満載でありますが、これが、件の飛行塔であります。

製作は昭和4年、1929年、現存する日本最古の大型遊戯具で、天才遊戯機器製作者、土井万蔵の設計製作だそうです。 映画では4機の飛行機は4人の姉妹を表現しています。

今にすれば何と言う事もありませんが、1929年と言えばもちろん飛行機は未だ一般的な乗り物ではありません。 それだけに憧れも強かったとは思われますが 今は無きパンアメリカンの創業が1927年、当時の日本海軍の最新鋭機が三菱一三式艦上攻撃機ですから、この飛行塔の斬新さがわかろうかと言うものです。(Keyのミリタリーなページより


日本では戦前のこの手の遊戯具はほとんど残っておりません。それは戦時中の金属不足の時に不要不急のものは供出させられたからです。 ケーブルカーも多くは戦時中レールを撤去させられ休止に追い込まれ、世間がようやく安定を取り戻した昭和25年頃に再興されたものが殆どです。 信貴山山頂と現在の信貴山西ケーブル高安山駅を結ぶ山の上を走る世界でも珍しい鉄道もあったのですが、やはり戦時中に廃止の憂き目に会っております。

この飛行塔は山の頂上にあり、大阪平野のみならず、京都、奈良まで俯瞰できますので、対空襲用の防空監視所として命を永らえたそうです。 今でも飛行塔に乗りますと大阪平野、奈良盆地が一望の下に望めます。 蛇足ながら言っておきますと高度が凄く高い割りに頼りなくて結構怖い乗り物でもあります。(東京で言えば浅草花やしきのジェット・コースターでしょうか)

山の頂上にあるので見晴らしが良い。 飛行機も複葉機。

まあ、と言う訳で、映画「阿修羅のごとく」を見て以降のモヤモヤとした気持ちが綺麗に晴れた連休でありました。



2009年10月9日金曜日

ウォール・ストリート 瀕死の体験談 2


昨日のエントリーでソーキンの新刊「Too Big to Fail」の販売促進用のダイジェスト版を一部翻訳していたのですが、掲載されていたバニティフェアー誌に許可を求めたところ断られました。 聞かなきゃ良いのにと思う方もいるかもしれませんが、僕はいつも問い合わせをするようにしています。 これまでも例えばcalculatedriskみたいに全然大丈夫そうなブログでも一応メールでグラフ使用や日本語訳の了承を貰っています。

今回もNYTの方に問い合わせていれば大丈夫だったと思います。 但し英語の本文がWEB上に掲載されていても日本語に直すと著作権の問題が出るのはわかりますが、これではどうしても情報が遅れてしまいますよね。 まあ誤魔化しながらやれば良いのでしょうが。

それでこの本のダイジェスト版の中身ですが、昨年の9月17日から21日日曜日までの米国金融界がリーマンの破綻後、瀕死の重傷を負ってそこを何とかしようとする話が綴られています。

ポールソン、バーナンキ、ガイトナー、GS:ブランクフェィン、モルガン・スタンレー:ジョン・マック、JPモルガン:ダイモン、バッフェットも登場してきます。
この中でポールソンはゴールドマン出身ゆえに出身会社を助ける事ができないジレンマや、当時NY連銀だったガイトナーが善意の思いつきでどれとどれを合併させてと動きまわり混迷の度合いを深める様が実によく表現されています。少しばかり小僧のように取り扱われていますが。

ブランクフェィンやマック、ダイモンとリーダーシップを遺憾なく発揮しており、絶望的な状況下でもどこか小気味良い展開となっています。 これがcalculatedriskをしてThe Vanity Fair excerpt is a page-turner.と言わしめているのでしょう。  page-turnerは読み出したら止まらないと言うかっぱ海老せんみたいな意味ですね。

皆さんもご存知のようにモルガンスタンレーは21日夜の三菱UFJによる果敢な出資によってこの時救われる事になります。このあたりのやりとりでは、

“Come on. You and I know the Japanese. They’re not going to do that. They’ll never move that quickly,” Paulson said, suggesting that Mack focus more on the deal with the Chinese or JPMorgan.
“No, I do know them. And I know I don’t agree with you,” Mack answered angrily. He explained that Mitsubishi had used Morgan Stanley as an adviser during its hostile bid for a part of Union Bank in California earlier in the year. “Japanese rarely do a hostile,” Mack reminded him. “They hired us, they followed through and got it done, so they’ll come through for us.”
Paulson was still skeptical. “They won’t do it,” he said with a sigh.
“You and I disagree,” Mack sputtered.


「お前も俺も日本人ってやつを知ってるだろう。 連中は絶対にやらない。 連中は絶対そんなに機敏には動かない。」ポールソンはそう言って、もっと中国(CIC)やJPモルガンとの話に集中するよう促した。
「私は連中を知っているし、 私はあなたに同意できない事も判っている。」 マックは怒っていた。

モルガンは三菱UFJと Union Bank in California のディールを扱っていて、マックはポールソンよりは確かに三菱UFJを的確に把握していたのかもしれません。

と言う風に興味の尽きない内容が多いのです。 日本語版の出版が楽しみですね。

下のチャートは2008年頭からの、GS、MS、JPM、Citiの株価チャートです。 本当の銀行の危機は10月の後に発生します。 MSとGSはこの危機後身軽になってどんどん上昇しているのがわかります。 当時ガイトナーはMSやGSをワコビアやシティと合併させようと目論でいましたが、MSもGSも腐った資産内容はよく判っていたようです。

2009年10月8日木曜日

ウォール・ストリート 瀕死の体験談 1


現地火曜日のニューヨークタイムスのDeal Bookで、同社記者アンドリュー・ロス・ソーキンの新しい著書、20日発売らしいけれど、Too Big to Fail: Inside the Battle to Save Wall Streetが取り上げられていました。CRでも話題になっていたので気がついた人も多いかと思います。 これの抜粋記事がバニティ・フェアーに掲載されていたのですが、読み始めるうちにこれがとんでもなく面白い。 中身はリーマン破綻後の危機にウォール街で何が起こっていたのか、生々しいドキュメンタリーになっています。 本当に何となくこの抜粋記事を翻訳したくなったので前半だけやっておきました。 バニティ誌にはメールを送って断っておきますが、ダメが出るかもしれません。 その時は突然掲載中止しますのでご了承を。
この本の日本語版が出るのかどうかは判りませんが、出版すれば売れるでしょうね。

追伸 10月9日
当たり前と言えば当たり前ですが、バニティ誌から使わないでくれとメールが来ましたので削除しておきます。 新聞的に比較的簡易な英語なので、続を読んでも面白とは思いますが、やっぱり面倒臭いですよね。  申し訳ありません。    

Porco

2009年10月6日火曜日

Dividend Capitalizationと言う金融工学


日本の上場会社の中でも、最近は経営者が会社の資産を私物化しているとして、録音テープを持ち出して監査役と公開喧嘩をしている会社もありますが、そこはさすが資本主義の本家米国での話しはもっとエゲツナイ気がします。 しかも全く合法的。 強欲資本主義というのはこの事で、日本で大企業相手に同様の趣旨で騒いでいるのは全くのお門違いなのかもしれません。

シモンズ・ベッドと言えば日本でもお馴染みの創業133年を誇る米国を代表するベッドの製造販売会社です。大統領専用機エアーフォースワンにも搭載されているこのベッドの会社、2007年をピークとする折からの住宅ブームと共に業績を伸ばしていましたが、巨額の負債と住宅市場の低迷と共に業績が悪化、先月25日には破産適用申請とあいなり、プライベート・エクィティのアレス・マネージメントとオンタリオ教職員年金基金に身売りされる事になりました。

実はシモンズをファンドが買収するのはこの23年間で6度目で、買収される度に負債を増やしてくました。 昨日のニューヨーク・タイムスのDeal Bookではこの事を扱っています。下段グラフ参照

もともとベッド(マット)は価格の割りに嵩張るものなのでロジスティック(運送費等)の関係から、新興国からの攻勢が弱い分野です、一方で米国では人口増加と住宅市場が好調でしかも寡占状態、新製品に莫大資本投下が必要でも無い、これは会社そのものがキャシュカウ・ビジネスの典型で、借金の支払いが予定しやすい、プライベート・エクィティにとってはとてもありがたい業種であったのです。 簡単に言うと大規模な投資をしなくても一定の収益を生み出しやすいビジネスだったのです。 そうした理由から何度も何度もファンドに搾り取られ、ついに搾りかすとなって限界が来たと言うことです。  2004年には有名なKKRによって買収された同じく大手マットレス会社シーリーがめでたくWIN-WINでエクジットに成功しておりますようにPEにとって理想的な会社であったのでしょう。

では破産によって最後に投資したPEは損したのか?

いいえ。 もっと取れたはずなのに。と言う観点からは残念でしたが、ちゃっかり貰うものは貰ってます。

シモンズの買収と売却の歴史はNYTの記事を見て頂くとして、今回売却した側のファンドは Thomas H. Lee(THL)と言うPE(プライベート・エクィティ)です。この会社は1994年 オートミールで有名な食品会社クェーカー・オーツの17億ドルの売却で有名になりました、何故ならその2年前に買った時の価格が1億3千万ドルだったからです。

THLは2003年に投資会社Fenway Partnersから327百万ドルのキャシュ+745百万ドルの借金でシモンズを買収します。(下のNYTの借金の推移グラフを参照下さい。) 借金は若干の銀行ローンと市場から集めたものです。(ペンションなどエンドースメント、ヘッジ・ファンド等でしょう。)

先ず買収をして1年ほどでファンドは回収に入ります。 取り敢えず利率10%の債券を発行して137百万ドルの配当をファンドに支払います。 事業絶好調の2007年(逆に住宅市場が怪しくなり始める頃)に、300百万ドルの債券を発行。238百万ドルを配当としてファンド支払います。 全くのお手盛りです。 THLの受け取った配当は合計で375百万ですから48百万ドルはここで確保されています。 勿論この他にもTHLはシモンズから各種手数料名目で28.5百万ドル程受け取っています。 THLの当初の目標の2,3倍には全く及びませんが、ちゃっかり確保されています。


どこが金融工学なのかって?

多分、こんな債券を買ってもらう部分にあると思いますが、今回の破産では有担保シニアの7億3000万ドルは満額支払われます。残りは圧縮と言う事になります。投資家の自己責任です。

債券ホルダーもそうですが、一番の被害者は?と言う事になるとこれは洋の東西を問わずアメリカでも従業員が可愛そうだと言う事になっております。
今回も25%の従業員が整理されており、2ヶ月分の手当てを貰っていますががファンドと比べると何なの?と言う事になります。 お約束のようにNYTの記事でも、昔はシモンズは良い会社だった。 遠足もあればダンス・パーティもあった。 一生ここで暮らしたいと思ったと言う話が寄せられております。

この記事に対する読者コメントもこれを書いている時点で546も集まっており、「こんなものは犯罪だ!」とか「規制緩和の代償は大きすぎた」だとか、当たり前のように批難の渦が巻いております。金融機関救済に多額の税金を投入した事情もあり、今後、危機再来時の救済は困難を極める事でしょう。まさに暴走する資本主義を地で行ってます。

記事によりますとこれは決してTHLだけの問題では無く、2003年から2007年の間にPEに管理された188の会社が750億ドル以上の債券を発行し、PEへの配当に支払っているそうです。


シモンズ・ベッドの持ち主と借金の変遷

2009年10月2日金曜日

米国 9月自動車販売


以前のブログでも紹介したが、9月の自動車販売の数字が出た。
市場ではISM等を気にしているようだが、こちらも注目されていた数字だ。
予想よりは少し悪かった程度だが、グラフを見てレベル感を記憶しておく必要がある。
特別な景気刺激プログラムの終了した後がどうなるかと言うストーリーだ。
買い替え奨励策 中古車を燃費の良い車に買い換える際に最大4500ドルの提供を受けられる。


 米自動車業界分析会社オートデータによると、米国の9月の乗用車とライトトラックを合わせた販売台数は季節調整済みの年率換算で前年同月比23%減の922万台だった。今年1000万台超を販売したのは7、8月のみ。
ブルームバーグがまとめたアナリスト8人の予想平均によると、季節調整後の業界販売台数は年率換算で930万台への減少が見込まれていた。
オートデータによると、業界全体の販売台数は74万5997台だった。(実販売)

米自動車販売  年率換算季節調整済み

上グラフの長期


昨夜の市場はココ


2009年10月1日木曜日

亀井金融相とG20銀行規制


珍しく長いので注意。
世の中は亀井金融相のモラトリアム発言に一喜一憂したりしながらも、どうにも振り回されているのを楽しんでいるような状態です。

僕としては国が過半の株式を持っているわけでも無い民間の私有財産たる銀行に国家権力が支払い猶予を強要するなどと言うのは民主主義・資本主義の崩壊を意味するので反対に決まっているわけです。 

しかし亀井金融相の「モラトリアムやって銀行が困るなら貸し手である銀行も国が助けてやるよ。」と言う金融関係者が眉をひそめる発言もあまり馬鹿にしたものでは無いとも思います。 何しろサラ金を別とすれば日本では一部の例外を除いて銀行はずっと税金で助けられてきた訳ですから。 

一般の中小企業から見れば、結果としてまともに仕事をしていなかった社会保険庁なんかも組織として継続され、さらに懲戒処分の人も再雇用なんていってますし、大企業も雇用調整法で補助金が沢山出てます。 あきらかに余剰人員が大勢の官庁だって整理する段階で各人の人生設計なんて気配りで大事にしてもらってます。 

皆良い思いしやがって、ましてや銀行なんて国民の税金で助けられたんだから、俺らも困ってんだから助けろよ。 とい言う主張は言い方によっては至極真っ当でもある訳ですね。

例えば突然の高速道路無料化で廃業を迫られるフェリー業者が気の毒で仕方ありません。 道路からみれば格段に安い補助金でイザという時の四国との交通インフラをカバーすると言う選択肢だってあると思いますよ。 橋が落ちたら船が無い。

外国のコンテナー船では軍から補助が出て、燃費は良いが速度の出ないディーゼル機関の替わりにイザと言う事態の為に速度の速いタービンを積んでいる船もあります。



なんて話がどんどん外れてしまいましたが、そろそろG20をまとめておこうと思います。。今後の金融市場を見て行く上で大事なキーワードや項目がいくつかありますから整理しておきましょう。

G20

G20では「景気回復と修復のプロセスは未完で、出口戦略は次回のテーマ」、早まってどこか一国だけ出口戦略を採らないように。と言う事で今回は次の3点が重要なポイントになったかと思います。

1.世界経済の不均衡是正
2.保護主義の回避
3.金融インフラの修復

1.世界経済の不均衡是正は言うまでもありません。 極端に言えば中国を中心とする途上国が商品を輸出すると同時に購買資金として貯蓄を米国の消費者に貸付ける、米国が借金づけで輸入された商品を消費する。これが綿々と繰り返され今後は持続不可能、つまり米国はこれ以上借金できない状態になってしまったという話です。答えはいつも同じで簡潔です。輸出国は内需を拡大しなさいと言う事です。民主党も子育て支援や高速道路無料化なんかも内需拡大だと言っておりますがどうでしょう。 一方で内需である公共工事の削減も考えておりますので今後の施策が待たれるところです。

2.保護主義の回避は、1930年代の世界大恐慌の教訓です。 保護主義に走るとますます縮小均衡に走りますが、不景気になると国内産業の保護に走りがちです。既に部分的にはその兆候は出始めています。

3.金融インフラの修復ですがこれが一番やっかいな項目でしょう。
これも整理の為に無理に3つの小項目に分類してしまいましょう。

1)システムに内在する景気循環増幅効果(プロシクリカル)の問題
2)報酬の問題
3)銀行資本の質と量の問題

1)プロシクリカルの問題ですが簡単に説明しておきましょう。
銀行は景気が良くなると、企業の収益見通しも良くなりますので、お金を貸したくなります。 一方で自身の資産も含み益が出ますのでリスクに対して余裕が出てきます。
借りている人も不動産なり株にしても評価益が出て担保価値が上昇するので、もっと借りると言う動機ができます。 正に米国の住宅担保ローンの構造です。100貸していたものを150、200とレバレッジを上げていくことにもなります。  ところが今回のように一旦暴落が発生すると、借り手の担保価値は落ちるは、銀行の資産価格も減るは、取れるリスクに余裕は無くなるはで加速度的に貸し出しを縮小する方向に動きます。これがプロシクリカルな動きなのですが、ここでポイントがあります。

レバレッジ、と公正価値会計レバレッジを規制しておくことでプロシクリカルな動きから銀行の自己資本の脆弱性を守る事ができます。 公正価値(時価会計)は保有資産を時価会計で把握すると今のような時期には貸し出しを減らさなければならないから、評価もほどほどにと言う考えです。 

これも現実には米国のストレステストに見られるように証券化商品の評価に手加減がなされています。 

そしてこれら個別銀行に対するミクロな規制よりも、金融システム全体像を把握して監督して行こうと言う、マクロプルーデンシャルと言う考え方があります。これは個々の銀行を厳格に監督してしまうと、悪い時には資産価格の下落が下落を呼ぶ下方スパイラルに陥りかねない。それよりは「投機活動の抑制」とか「デリバティブス商品の市場自体の管理」とかの方法、あるいはヘッジファンド規制なんかもこの範疇に入ってくると考えられていますがマクロ的に規制していこうと言う方策です。


2)報酬の問題
報酬に関しては政府がマジョリティーを保有する銀行の場合は制限等を策定できますが、亀井問題と同様、私企業に価格的な上限を設定すると言うのは困難な事と、報酬制限によって優秀な人材が集まらなくなり、金融のイノベーション(ロクでもないものも多いのですが)を阻害してしまう。とまあ強烈なロビーイングもあり、儲かったときはボーナスを貰い損したら払わないと言う非対称性を考慮し、結局評価の複数年度化等で落ち着きそうです。

3)銀行の資本の質と量に関して
大雑把な項目名ですがここが一番のポイントとなります。
BISは2012年をめどに段階的に資本規制を強化すると言う事で話はつきましたが、根本の問題があります。

Financial Timesから今回の金融危機に関する記述を引用します。

危機の中に沈んでいったのは経営管理が不適切で、無責任で、自己資本が不十分で、一握りのプレーヤーへの集中が進んだ金融セクターだった。利益相反に蝕まれ、暗黙の国家保証に支えられた業界でもあった。 自己資本こそ若干厚くなったものの集中はかえってひどくなり、今では国家保証も明示的なものになっている。

質と量を問われる前にモラルハザードの問題があります。

こうなると、グラススティーガル法に戻って、投資銀行と預金銀行の分離も当然議題として考えられます。 その極端な形が「ナローバンキング」です。 極端に言えば預金保険の対象は国債だけで運用しろという事です。どうせ国が補償するのですから。これは程度の問題ではありますが自己資本比率を決定する前の重要な問題でもあります。

果敢にリスクを取って収益を狙い、失敗したら国に面倒を見て貰うと言うのは、国家による保険システムへのフリーライダーです。こうした銀行は事業失敗の際の保険コストを負担しなければならないという考えもあります。「システミック・リスク税」です。プルーデンシャル要件の引き上げと金融安定化基金への分担金と言う形で考えられます。 これは至極真っ当な考えだと思います。いつまでもToo Big to failではモラルハザードを引き起こし今回のような破綻は繰り返えされます。 金融機関ではありませんが今のJALが全くそうです。

長くなりましたが亀井金融相の話も結局ここへ戻ってきてしまいます。 中小企業をサラリーマンから見ると、トーゴーサンに象徴されるように、結局納税しているのは実はサラリーマンの俺達なんだから、普段から保険代として税金をちゃんと払えよ。とマクロでみるとこう言う話もできなくはありません。  大企業の実効税率は各国比較で高いのですから。 微妙な不公平感を醸し出しているのはこの辺りかもしれません。

銀行規制に関しては以下も論点となっているようです。
4)システミックリスクに対処することだけを目標とするのか、それとも金利を補完するマクロ経済の野心的な新管理体制を目指すのか
5)各国の政府と中央銀行と金融サービス監督機関の間でどう分担すべきか 英国では財務省、BOE、FSAの連携の悪さが指摘されています。
6)多国籍企業が倒産した時にどうするか?危機の処理資金はそれぞれの国の納税者が負担する。国際的な破産手続法は存在しないため、将来起こりうる多国籍企業の破綻では問題がおこる。 これはジャック・アタリの主張する「金融界は超国家として運営されるが、規制側は国単位でしかない。」と言う問題です。

また基本的な問題として債務が株式より税制上優遇されている問題は、過剰なレバレッジを取る強力な誘引となっています。 法人税率を0%にしろと言うお話です。

本来ならばこうした諸問題点や大きすぎる銀行問題などが今後検討されるべきなのでしょうが、金融界からのロビーイングは強さを増してきており実効的な政策が採られる可能性は低いと思います。 為替取引にかかるトービン税など、これからも英米以外の国からアレッと思うような事が提案されたりはするのでしょう。

もう一度ぐらい大失敗をしないと懲りないのかもしれません。 金融界は集約度が上がり、失敗時の国家補償が明示的となり、リスクはむしろ以前よりも高まっているとも言えるでしょう。 今後考えられるリスクは財政赤字による政府ファンディングの限界とこれらのリスクが組み合わさった時なのでしょうか。

以上、最近のFTや、NYT等から拾ってまとめておきました。 因みに日本の雑誌からの引用はありませんでした。