2009年10月13日火曜日

米国のペンション問題

Steep Losses Pose Crisis for Pensions
年金危機を引き起こす巨額の損失 ワシントン・ポスト
日本のdéjà-vu

株式市場がこれだけ下落してしまうと、元来株式組み入れ比率の高い米国年金に相当なダメージの及ぶ事は想像に難くないのですがこの記事は改めてその話に言及しています。

日本から見て既視感を覚えたのは給付の原資不足では無く、90年以降の日本株のパフォーマンスとディスインフレの世界での年金運用問題について、彼らにとって示唆するものがあるように思えたからです。 重要なところだけ抜粋してみましょう。

State and local government officials had predicted before the crisis they would have $3.6 trillion in their accounts by now, according to the Center for Retirement Research at Boston College. Today, they are $1.2 trillion short of that mark.

ボストン・カレッジの退職研究センターによると、国および地方政府は今回の金融危機以前の予想で今現在時点で3.6兆ドルあると予想していた。 現在はそこから1.2兆ドルの不足である。

From there, the deficit will grow even wider, according to Kim Nicholl, the national director of PricewaterhouseCoopers public sector retirement practice. Even if public pension funds were to hit their 8 percent investment targets every year, Nicholl calculated they would have less than half of what they need by 2025. This is because a greater share of the population will be retired and those who are will live longer, thus collecting benefits longer, she said.

PWC公共部門退職プラクティスのダイレクター、キム・ニコールによると、ここから不足はさらに拡大する、仮に年金ファンドが毎年8%のリターンを実現したとしても、2025年には必要額の半分にしか満たないでしょうと言う。

For these reasons, billionaire investor Warren Buffett has called these pensions ticking "time bombs."

(略) ウォーレン・バッフェットはこれらの年金をカチカチと時を刻む「時限爆弾」と言っている。

Traditional investment strategies, which rely on stocks, haven't fared well in recent years. To meet their obligations to retirees, pension funds tend to assume they will earn an eight percent return on investments each year. The stock market, as measured by the Standard & Poor's 500-stock index, is actually down 32 percent this decade.

株式リターンに依存した伝統的投資戦略はここ数年報われてはいない。 退職者への義務を果たす為には毎年8%のリターンを稼ぐ必要があると推定しているようだ。SP500で計測される株式市場はこの10年で現実には32%下落している。

California's pension fund lost $634 million from securities lending as of March 31, but the total could reach $1 billion after a full accounting is done, according to a report from the system's consultant, Wilshire Associates. Still, the pension fund says it remains committed to the practice because it boosted returns in the two decades before the financial meltdown.

加州の年金基金では3月31日現在、株式レンディングから634百万ドルの損失を出したが、正式な決算では10億ドルに達するだろうとウィルシャー・アソシエイツのシステムコンサルタントは語っている。 しかしながら、今回の金融危機以前の20年間で利回りを向上させてくれたこのやり方を今後も守り続けるしか無いだろう。

(ちょっとこれは知らなかったので調べてみますね。通常ストックレンディングは現金担保を受け取りますから損をする仕組みでは無いと思うのですが、リーマンが倒産している事もありますし、判りません。)

繰り返しますが、何故日本と既視感があるかと言えば、日本にアセット・アロケーションの概念が入りアセット・ミックスと言う考え方が導入され始めたのがバブルがピークの90年頃だったのです。 従って株式の期待収益率という事になると適当に15%ぐらいを採用していました。結果はご承知のとおりでした。

米国(G7全体を含んだりしますが)も80年代前半以降はグレートモデレーション(超安定化)と呼ばれインフレが抑えられ、安定した経済成長をを続けた時期にあたります。
下の図はGDP統計の税引き企業収益(青:左軸)と10年債(赤:右軸)のグラフです。


株の方は言うまでもありませんね。 しかし株式は2000年を最初のピークとするツイン・ピークの形になっていますから、2000年以降は期待にこたえたとは言えないでしょう。対数目盛りに注意。


日本の株式が15%と言う期待リターンをあきらめたように、米国はミックスされたアセットで8%のリターンを稼げるのでしょうか? 現在の米国10年債利回りは3.4%しかありません。 これまでの傾向線を引張って期待リターンとするやり方では困難な事だけは良く判ります。 米国はドル安傾向を維持する事で、外国投資から為替益による高いリターンを享受できます。 積み上がった政府財政赤字、企業利益の回復等を考えるとコントロールされたドル安は彼らの希望なんだろうな。と思う次第です。

上記記事中には、8%リターン達成の為、仕組み商品やヘッジファンドに果敢に挑戦する基金も多いとあります。 損したものに同額投資して回復を目論む。 今回のリバウンドの性質も日本のバブル崩壊時の切り替えしと同質なのかもしれません。


日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の目標収益率は3.37%。 株式は6%を期待。 リンク GPIF


2 件のコメント:

広瀬隆雄 さんのコメント...

いつも愛読しています。
とても勉強になっています。
先日のジャック・アタリの記事も良かったですよ!

米国の年金ですが、こと企業年金に関しては確定給付型の企業年金というのはもうシーラカンスみたいな存在になっており、大半が401(k)ではないか?というのが私の印象です。

Shortfallの問題は重要ですが、アメリカ社会全体から見ると既に運用リスクの個人への転嫁は大方済んでおり、another shoe to dropを心配する必要は(例えば日本と比べると)大きくない気がするのですが、、、

Porco さんのコメント...

コメント有難う御座います。広瀬さんのブログの質と量にはいつも圧倒されます。 私の認識も同じでしたが、金額が大きかったので驚いた次第です。問題はやはり日本であって、政府が抱え込んだまま大変な時代に突入しそうです。大変な時代かどうかはわかりませんけど。私も7年駐在していたので、米国年金を受け取れるようになったと聞きました。(以前は10年以上だった)そう言う意味ではしっかりやって欲しいものです。