2009年10月15日木曜日

ドル50円に違和感無し


85年9月のプラザ合意の少し前、私は未だ証券会社に入社したてで、当時の部長と一緒にモルガン・スタンレーのテクニカル・アナリストの訪問を受けました。
彼は分厚いA3サイズの方眼紙の冊子を左手に、頑固そうな顔の割りにとてもチャーミングな笑顔で、右手の使い古した茶色い鞄を床におくと、ゆっくりと我々と握手したのを今でも覚えています。 方眼紙は鉛筆で手書きで書かれ、各種指標、コモディティ、200銘柄程度の彼の注目する銘柄のチャートがバー・チャートで記されていました。毎日書き込んでいるとの事でした。

その時彼はたしか化粧品のエイボン・プロダクト(AVP)を推奨しました。配当利回りが5%もありました。確かにその後エイボンは15ドルほどの株価が18ドルぐらいになったような気がしますが、それよりも彼は円ドルに関して大胆にも100円を割ると予想したのです。 当時ドルは240円~250円で推移、以前のフシである180円とか言うのであればまあ納得もいったのでしょうが、彼がエレベータに乗った後、部長が「彼はちょっと頭おかしいね」、私も「そうですよね」と言った事を実にクリアーに覚えています。 何故ならそれから10年ほどかけてドルは本当に100円を割ってしまったからなのです。天井からぶら下がった為替の掲示が整数部分2桁になるのを見ながら彼の事を思いだしたものです。

PCが発達するとチャートを描くソフトが広く販売され始めましたが、問題はデータ・フィードでした。パソコン通信の発達する前はフローピーに頼るしかなかったのです。当時チャートらしきものを見れたのはブルンバーグに駆逐された今は無きクォートロンだけで、それも実に荒っぽいグラフでありました。

皮肉にもチャート描画ソフトが発達すると同時にテクニカル・アナリシスの有効性も精査される事となり、The Encyclopedia of Tecnical Analysisと言う本がそれまでの様々なテクニカル投資技法をシュミレーションを通じて検証し、テクニカルでは儲からない事を実証してしまいました。 これは実験のやり方にもよるので異論はたくさんあると思います。 またランダム・ウォーク理論の現場への浸透もあり、ウォール街の大手証券ではリサーチ部門からテクニシャンは次第にいなくなってしまったのです。

テクニシャンはいなくなってもチャートは名前どおり大海原を航海する為の海図のようなものですから、市場参加者は使います。 また数学系の一部のリサーチャーは色々と数字をこねくり回したりしていましたが、良い結果はあまり聞いた事がありません。 そうした中でもエリオット・ウェーブと一目均衡表はパターン分析になりますので、コンピューターで解析するのは困難、言い換えれば曖昧なところがあります。 むしろこれらの解析者は哲学者に近いところもあるかと思います。

前振りが随分長くなってしまいましたが、今日のニュースで三井住友の宇野さんが大胆にも「ドル来年にも50円」、40年の下落で基軸体制崩壊-三井住友・宇野氏(Bloomberg) と予測しています。 (私はレポートを持っていません。)

以下引用、

エリオットの第5波

  宇野氏のエリオット波動分析に基づくと、ドル・円相場は40年近い下落の第5波目にある。ニクソン米大統領(当時)による71年8月の金・ドル交換停止の発表後、12月のスミソニアン協定でドルが主要通貨に対して切り下げられるまでの1ドル=360円から、急落に歯止めがかかった73年3月の254円45銭までが第1波のドル安。第2波のドル反発局面は75年12月の306円84銭までだ。
  第3波は85年9月の「プラザ合意」を経て95年4月の戦後最安値79円75銭までの19年以上にわたるドル安基調。第4波は米国を中心とする金融バブルが崩壊する直前の07年6月(124円13銭)に至るドル高・円安。現在は、第5波のドル下落過程にあるという。
  宇野氏は四半期データを基に、73年3月までの第1波(ドル安)の下落幅を約92円と算出。第5波の起点となる07年4-6月期の123円17銭から、この92円にフィボナッチ級数の1つ0.764を乗じた値を差し引くと50円強という目標値が得られると解説した。
  第4波を、値幅が徐々に縮小しながら急変動に向けたエネルギーを蓄積する「三角持ち合い」と見なした場合にも、最初の上昇局面である95年4-6月期から3年間の上げ幅を、07年10-12月期に突破した下値支持線の水準から差し引くと、50円台半ばが目安になる。

多分1、2波はブルンバーグが間違っていると思いますので勝手に直しておきました以下のチャートになります。

私は正直言いますとドル50円はやはり少し大袈裟かと思いますが、最初に書いたように頭がおかしいとはとてもじゃないが思えないのです。  できれば桁が1つ落ちてますから対数チャートでも良いかとも思いますが。  以前もブログに書きましたように少なくともサポート79円を目指すのは間違い無いかと考えています。

基本的な考えは変わっていません。 繰り返しになりますが、プレトンウッズで米国ドルを基軸通貨と決めて以降、ドルが基軸通貨としての役割を果たす為には、アメリカがドルを使い、他国がドルを受け取り、ドルが充分供給されなければなりません。これは米国の国際収支の赤字を意味し、ドルが世界各国の外貨準備として保有されればされるほど、ドルに対する信認は弱まると言うパラドックスを抱えています。 この長年の積もり積もった状況で、米国の借金体質の維持が困難になったのが、今回の恐慌でした。

ですから宇野さんの話には違和感は無いのです。 ただしアジアがブロック化してドルの需要が減るかと言うとそれは簡単では無いと思います。現在アジア間の貿易に使用している通貨はドルです。これは最終市場が米国なので商品の価格設定がドル建てである為です。 つまりドルに替わるアジア通貨圏が成立するにはブロック化と同じ意味になりますが製造する商品はアジアで消費される必要があると言う事です。


下にIMF発表の各国準備通貨の通貨別占有率をグラフにしておきました。 ユーロが緩慢にそのシェアを上げていますが、急激な動きではありません。ここ2四半期のデータは興味深いところです。


出所 IMF COFER

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