2009年10月6日火曜日

Dividend Capitalizationと言う金融工学


日本の上場会社の中でも、最近は経営者が会社の資産を私物化しているとして、録音テープを持ち出して監査役と公開喧嘩をしている会社もありますが、そこはさすが資本主義の本家米国での話しはもっとエゲツナイ気がします。 しかも全く合法的。 強欲資本主義というのはこの事で、日本で大企業相手に同様の趣旨で騒いでいるのは全くのお門違いなのかもしれません。

シモンズ・ベッドと言えば日本でもお馴染みの創業133年を誇る米国を代表するベッドの製造販売会社です。大統領専用機エアーフォースワンにも搭載されているこのベッドの会社、2007年をピークとする折からの住宅ブームと共に業績を伸ばしていましたが、巨額の負債と住宅市場の低迷と共に業績が悪化、先月25日には破産適用申請とあいなり、プライベート・エクィティのアレス・マネージメントとオンタリオ教職員年金基金に身売りされる事になりました。

実はシモンズをファンドが買収するのはこの23年間で6度目で、買収される度に負債を増やしてくました。 昨日のニューヨーク・タイムスのDeal Bookではこの事を扱っています。下段グラフ参照

もともとベッド(マット)は価格の割りに嵩張るものなのでロジスティック(運送費等)の関係から、新興国からの攻勢が弱い分野です、一方で米国では人口増加と住宅市場が好調でしかも寡占状態、新製品に莫大資本投下が必要でも無い、これは会社そのものがキャシュカウ・ビジネスの典型で、借金の支払いが予定しやすい、プライベート・エクィティにとってはとてもありがたい業種であったのです。 簡単に言うと大規模な投資をしなくても一定の収益を生み出しやすいビジネスだったのです。 そうした理由から何度も何度もファンドに搾り取られ、ついに搾りかすとなって限界が来たと言うことです。  2004年には有名なKKRによって買収された同じく大手マットレス会社シーリーがめでたくWIN-WINでエクジットに成功しておりますようにPEにとって理想的な会社であったのでしょう。

では破産によって最後に投資したPEは損したのか?

いいえ。 もっと取れたはずなのに。と言う観点からは残念でしたが、ちゃっかり貰うものは貰ってます。

シモンズの買収と売却の歴史はNYTの記事を見て頂くとして、今回売却した側のファンドは Thomas H. Lee(THL)と言うPE(プライベート・エクィティ)です。この会社は1994年 オートミールで有名な食品会社クェーカー・オーツの17億ドルの売却で有名になりました、何故ならその2年前に買った時の価格が1億3千万ドルだったからです。

THLは2003年に投資会社Fenway Partnersから327百万ドルのキャシュ+745百万ドルの借金でシモンズを買収します。(下のNYTの借金の推移グラフを参照下さい。) 借金は若干の銀行ローンと市場から集めたものです。(ペンションなどエンドースメント、ヘッジ・ファンド等でしょう。)

先ず買収をして1年ほどでファンドは回収に入ります。 取り敢えず利率10%の債券を発行して137百万ドルの配当をファンドに支払います。 事業絶好調の2007年(逆に住宅市場が怪しくなり始める頃)に、300百万ドルの債券を発行。238百万ドルを配当としてファンド支払います。 全くのお手盛りです。 THLの受け取った配当は合計で375百万ですから48百万ドルはここで確保されています。 勿論この他にもTHLはシモンズから各種手数料名目で28.5百万ドル程受け取っています。 THLの当初の目標の2,3倍には全く及びませんが、ちゃっかり確保されています。


どこが金融工学なのかって?

多分、こんな債券を買ってもらう部分にあると思いますが、今回の破産では有担保シニアの7億3000万ドルは満額支払われます。残りは圧縮と言う事になります。投資家の自己責任です。

債券ホルダーもそうですが、一番の被害者は?と言う事になるとこれは洋の東西を問わずアメリカでも従業員が可愛そうだと言う事になっております。
今回も25%の従業員が整理されており、2ヶ月分の手当てを貰っていますががファンドと比べると何なの?と言う事になります。 お約束のようにNYTの記事でも、昔はシモンズは良い会社だった。 遠足もあればダンス・パーティもあった。 一生ここで暮らしたいと思ったと言う話が寄せられております。

この記事に対する読者コメントもこれを書いている時点で546も集まっており、「こんなものは犯罪だ!」とか「規制緩和の代償は大きすぎた」だとか、当たり前のように批難の渦が巻いております。金融機関救済に多額の税金を投入した事情もあり、今後、危機再来時の救済は困難を極める事でしょう。まさに暴走する資本主義を地で行ってます。

記事によりますとこれは決してTHLだけの問題では無く、2003年から2007年の間にPEに管理された188の会社が750億ドル以上の債券を発行し、PEへの配当に支払っているそうです。


シモンズ・ベッドの持ち主と借金の変遷

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