2009年10月1日木曜日

亀井金融相とG20銀行規制


珍しく長いので注意。
世の中は亀井金融相のモラトリアム発言に一喜一憂したりしながらも、どうにも振り回されているのを楽しんでいるような状態です。

僕としては国が過半の株式を持っているわけでも無い民間の私有財産たる銀行に国家権力が支払い猶予を強要するなどと言うのは民主主義・資本主義の崩壊を意味するので反対に決まっているわけです。 

しかし亀井金融相の「モラトリアムやって銀行が困るなら貸し手である銀行も国が助けてやるよ。」と言う金融関係者が眉をひそめる発言もあまり馬鹿にしたものでは無いとも思います。 何しろサラ金を別とすれば日本では一部の例外を除いて銀行はずっと税金で助けられてきた訳ですから。 

一般の中小企業から見れば、結果としてまともに仕事をしていなかった社会保険庁なんかも組織として継続され、さらに懲戒処分の人も再雇用なんていってますし、大企業も雇用調整法で補助金が沢山出てます。 あきらかに余剰人員が大勢の官庁だって整理する段階で各人の人生設計なんて気配りで大事にしてもらってます。 

皆良い思いしやがって、ましてや銀行なんて国民の税金で助けられたんだから、俺らも困ってんだから助けろよ。 とい言う主張は言い方によっては至極真っ当でもある訳ですね。

例えば突然の高速道路無料化で廃業を迫られるフェリー業者が気の毒で仕方ありません。 道路からみれば格段に安い補助金でイザという時の四国との交通インフラをカバーすると言う選択肢だってあると思いますよ。 橋が落ちたら船が無い。

外国のコンテナー船では軍から補助が出て、燃費は良いが速度の出ないディーゼル機関の替わりにイザと言う事態の為に速度の速いタービンを積んでいる船もあります。



なんて話がどんどん外れてしまいましたが、そろそろG20をまとめておこうと思います。。今後の金融市場を見て行く上で大事なキーワードや項目がいくつかありますから整理しておきましょう。

G20

G20では「景気回復と修復のプロセスは未完で、出口戦略は次回のテーマ」、早まってどこか一国だけ出口戦略を採らないように。と言う事で今回は次の3点が重要なポイントになったかと思います。

1.世界経済の不均衡是正
2.保護主義の回避
3.金融インフラの修復

1.世界経済の不均衡是正は言うまでもありません。 極端に言えば中国を中心とする途上国が商品を輸出すると同時に購買資金として貯蓄を米国の消費者に貸付ける、米国が借金づけで輸入された商品を消費する。これが綿々と繰り返され今後は持続不可能、つまり米国はこれ以上借金できない状態になってしまったという話です。答えはいつも同じで簡潔です。輸出国は内需を拡大しなさいと言う事です。民主党も子育て支援や高速道路無料化なんかも内需拡大だと言っておりますがどうでしょう。 一方で内需である公共工事の削減も考えておりますので今後の施策が待たれるところです。

2.保護主義の回避は、1930年代の世界大恐慌の教訓です。 保護主義に走るとますます縮小均衡に走りますが、不景気になると国内産業の保護に走りがちです。既に部分的にはその兆候は出始めています。

3.金融インフラの修復ですがこれが一番やっかいな項目でしょう。
これも整理の為に無理に3つの小項目に分類してしまいましょう。

1)システムに内在する景気循環増幅効果(プロシクリカル)の問題
2)報酬の問題
3)銀行資本の質と量の問題

1)プロシクリカルの問題ですが簡単に説明しておきましょう。
銀行は景気が良くなると、企業の収益見通しも良くなりますので、お金を貸したくなります。 一方で自身の資産も含み益が出ますのでリスクに対して余裕が出てきます。
借りている人も不動産なり株にしても評価益が出て担保価値が上昇するので、もっと借りると言う動機ができます。 正に米国の住宅担保ローンの構造です。100貸していたものを150、200とレバレッジを上げていくことにもなります。  ところが今回のように一旦暴落が発生すると、借り手の担保価値は落ちるは、銀行の資産価格も減るは、取れるリスクに余裕は無くなるはで加速度的に貸し出しを縮小する方向に動きます。これがプロシクリカルな動きなのですが、ここでポイントがあります。

レバレッジ、と公正価値会計レバレッジを規制しておくことでプロシクリカルな動きから銀行の自己資本の脆弱性を守る事ができます。 公正価値(時価会計)は保有資産を時価会計で把握すると今のような時期には貸し出しを減らさなければならないから、評価もほどほどにと言う考えです。 

これも現実には米国のストレステストに見られるように証券化商品の評価に手加減がなされています。 

そしてこれら個別銀行に対するミクロな規制よりも、金融システム全体像を把握して監督して行こうと言う、マクロプルーデンシャルと言う考え方があります。これは個々の銀行を厳格に監督してしまうと、悪い時には資産価格の下落が下落を呼ぶ下方スパイラルに陥りかねない。それよりは「投機活動の抑制」とか「デリバティブス商品の市場自体の管理」とかの方法、あるいはヘッジファンド規制なんかもこの範疇に入ってくると考えられていますがマクロ的に規制していこうと言う方策です。


2)報酬の問題
報酬に関しては政府がマジョリティーを保有する銀行の場合は制限等を策定できますが、亀井問題と同様、私企業に価格的な上限を設定すると言うのは困難な事と、報酬制限によって優秀な人材が集まらなくなり、金融のイノベーション(ロクでもないものも多いのですが)を阻害してしまう。とまあ強烈なロビーイングもあり、儲かったときはボーナスを貰い損したら払わないと言う非対称性を考慮し、結局評価の複数年度化等で落ち着きそうです。

3)銀行の資本の質と量に関して
大雑把な項目名ですがここが一番のポイントとなります。
BISは2012年をめどに段階的に資本規制を強化すると言う事で話はつきましたが、根本の問題があります。

Financial Timesから今回の金融危機に関する記述を引用します。

危機の中に沈んでいったのは経営管理が不適切で、無責任で、自己資本が不十分で、一握りのプレーヤーへの集中が進んだ金融セクターだった。利益相反に蝕まれ、暗黙の国家保証に支えられた業界でもあった。 自己資本こそ若干厚くなったものの集中はかえってひどくなり、今では国家保証も明示的なものになっている。

質と量を問われる前にモラルハザードの問題があります。

こうなると、グラススティーガル法に戻って、投資銀行と預金銀行の分離も当然議題として考えられます。 その極端な形が「ナローバンキング」です。 極端に言えば預金保険の対象は国債だけで運用しろという事です。どうせ国が補償するのですから。これは程度の問題ではありますが自己資本比率を決定する前の重要な問題でもあります。

果敢にリスクを取って収益を狙い、失敗したら国に面倒を見て貰うと言うのは、国家による保険システムへのフリーライダーです。こうした銀行は事業失敗の際の保険コストを負担しなければならないという考えもあります。「システミック・リスク税」です。プルーデンシャル要件の引き上げと金融安定化基金への分担金と言う形で考えられます。 これは至極真っ当な考えだと思います。いつまでもToo Big to failではモラルハザードを引き起こし今回のような破綻は繰り返えされます。 金融機関ではありませんが今のJALが全くそうです。

長くなりましたが亀井金融相の話も結局ここへ戻ってきてしまいます。 中小企業をサラリーマンから見ると、トーゴーサンに象徴されるように、結局納税しているのは実はサラリーマンの俺達なんだから、普段から保険代として税金をちゃんと払えよ。とマクロでみるとこう言う話もできなくはありません。  大企業の実効税率は各国比較で高いのですから。 微妙な不公平感を醸し出しているのはこの辺りかもしれません。

銀行規制に関しては以下も論点となっているようです。
4)システミックリスクに対処することだけを目標とするのか、それとも金利を補完するマクロ経済の野心的な新管理体制を目指すのか
5)各国の政府と中央銀行と金融サービス監督機関の間でどう分担すべきか 英国では財務省、BOE、FSAの連携の悪さが指摘されています。
6)多国籍企業が倒産した時にどうするか?危機の処理資金はそれぞれの国の納税者が負担する。国際的な破産手続法は存在しないため、将来起こりうる多国籍企業の破綻では問題がおこる。 これはジャック・アタリの主張する「金融界は超国家として運営されるが、規制側は国単位でしかない。」と言う問題です。

また基本的な問題として債務が株式より税制上優遇されている問題は、過剰なレバレッジを取る強力な誘引となっています。 法人税率を0%にしろと言うお話です。

本来ならばこうした諸問題点や大きすぎる銀行問題などが今後検討されるべきなのでしょうが、金融界からのロビーイングは強さを増してきており実効的な政策が採られる可能性は低いと思います。 為替取引にかかるトービン税など、これからも英米以外の国からアレッと思うような事が提案されたりはするのでしょう。

もう一度ぐらい大失敗をしないと懲りないのかもしれません。 金融界は集約度が上がり、失敗時の国家補償が明示的となり、リスクはむしろ以前よりも高まっているとも言えるでしょう。 今後考えられるリスクは財政赤字による政府ファンディングの限界とこれらのリスクが組み合わさった時なのでしょうか。

以上、最近のFTや、NYT等から拾ってまとめておきました。 因みに日本の雑誌からの引用はありませんでした。


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