2009年11月27日金曜日

旭硝子のファィナンス


年金の話はあたりさわりの無いように焦点をボカシ気味に書いてありますので、今ひとつ読みにくいかと思います。筆者も書きながら焦れているところなのですが、実は物凄く深刻な話をしています。

そのうち一般のサラリーマンのポートの例も書くつもりなのでしばしお待ち下さい。

今日は以前勤めていた会社の先輩から質問のメールがありましたので、それについて考えてみたいと思います。

5201 旭硝子はCBによるファィナンスを発表し26日には大きく売られ、27日には市場が大幅下落する中で安値707円をつけて買い戻され725円で引けました。

5201 旭硝子 日足

UPDATE1: 旭硝子<5201.t>、2012年・2014年満期のユーロ円建てCB発行を決議=上限1000億円

[東京 25日 ロイター] 旭硝子(5201.T: 株価, ニュース, レポート)は25日、取締役会で2012年・2014年満期ユーロ円建て転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を決議した。発行総額は上限1000億円。
 発行額は各450億円(グリーンシュー・オプション分各50億円)。利息は付さない。転換価額は未定。払い込みは12月14日。野村インターナショナルを単独ブックランナー兼共同主幹事引受会社とし、JPモルガンを共同主幹事引受会社とする幹事引受会社の総額買取引受で、欧州を中心とする海外市場(ただし、米国を除く)で募集する。
 本資金調達による発行手取金(グリーンシュー・オプション分を含む)については、さらなる成長が期待できる既存事業の強化・拡充を目的とした設備投資など、将来の成長案件の開発・投資や有利子負債の返済資金に充当する予定。

質問です。
昨日決定した旭硝子のユーロ円建てCB3年、5年
もので、クーポンゼロ、しかも転換価格は1122円、1098円
で、時価(802円26日引け値)に対して40%弱の
プレミアムがついているとのこと。
しかも償還3か月前から発行体の判断で強制転換できるという
条件がついているとのこと。
野村500億、JPM500億それぞれ引き受けています。
海外機関投資家がなぜこういう投資家不利のものを
買うのか理解できません。
おそらく、オプションを利用した商品をあらたに組成してもうかる
スキームにしていると思いますが、よくわかりません。
御教示くだされ!!
よろしく!

確かにロイターのニュースでは詳細が書かれていません。
今回の旭硝子CBでは「ソフト・マンダトリー条項」と言うスキームになっています。

詳しくは25日会社リリースの 

ここを読むと親切に解説が書かれています、
下の図を見てみましょう。


上が2012年満期です。株価さえ上昇すれば投資家はいつでも新株予約権を行使する事ができます。
そして株価がもしも上がらない時には満期3ヶ月前以降の会社の決めた通知日から5取引日に始る20取引日のVWAPを持って先ず株式を投資家に、そして足りない金額を現金としてくれます。 もしVWAPが1000円として、CBを500万円購入していたとしたら、転換価格1122円ですから、4456株(500万÷1122) x 1000円=4、456、000円これに現金544000円を貰える事になります。

MSCBでは交換株数が増えてダイリューションが増す事になりますから引き受けた業者と空売り投資家以外皆不幸のスパイラルに引き落とされましたが、今回は発行株数が制限されているのでそう言う事はおきません。  下の図。

そして2014年に関しては2012年が片付くまでの間は行使価格を120%上回らなければ交換できない制限がついており急なダイリューションを制御する形になっています。

つまりこのCBは一見付利されていませんが、倒産しない限り100%戻ってきますし、そしてさらにオマケとしては2012年債の場合なら期限2.97年物:行使価格1122円のコール・オプションがついてきます。
この部分を利回りと考えて良いでしょう。

旭硝子の90日間ボラは38%ですが、控え目に25%ボラ、リスク・フリー金利1%でオプション価格をざっと計算すると、55.7円になります。(ちなみに38%だと124円になります。)

 債券部分を購入する為のファィナンス負担、1%程度x3年=3%に倒産対策のCDS3年物が40bpsですから(誰も3年以内に倒産するとは思っていない数字です。)3.4%程度、55.2円/802円=6.88%あるいは124円/802円=15.46%(多分この間)と比較して得かどうかと言う事になります。ダイリューションは11.6%で決まっています。

オプションの裁定を別として、私個人としては3年後の旭硝子は行使価格よりももっと高いのじゃないかと思っておりますから100円ならこのCBは買いです。2014年はファィナンスコストが高くなりますので行使価格を落としてあります、私としては2014年の方が良いと思います。

5201 旭硝子 月足

いずれにせよこの件は株価には折込んだと思います。 もちろん地力で株価が下がればもっと安く買える訳ですし、私は相場自体は暫く良いとは思っていませんが。

チャート日足は700円切れのお尻の寒い位置ですが、それでも2.8%の配当等を考慮すると原株もよろしいのではないかと思いますが、この件に関してはご自身のリスクでご判断下さい。

シンガポールで取引が出来て、CDSの商いが建っていますからアービトラージは入り始めています。これは極端なリスク・アーブではなくオプション価格と現物の合成オプション間のスプレッドに関するアーブだと思います。

以上、 私も年金から解放されて気持ちがスッキリしましたがオプションから離れて久しいので間違いがあるかと思います。是非ご指摘下さい。

補足:

1.この債券部分は倒産しない限りほぼ元本は保証されている。
  つまり無利息の債券。
2.そこに予約権の価値が利息の替わりについている。
3.予約権の価格は現時点では多分60円~120円
4.仮に90円とすると90円÷802円=11.2% これを3年で割ると年3.7%
5.3.7%の利付き債券と考えても良い。(但し原株価と期間、ボラ、金利で変化する)
6.予約権の評価(ボラティリティの評価)はトレーダーによって様々。


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