2009年11月5日木曜日

EMHは終わったか? Capital Ideas Evolving



原著者のピーター・バーンスタイン氏は本年6月5日に90歳でご逝去されました。
この本は今回の暴落劇の直前である2007年に著された本です。

タレブの「まぐれ」や「ブラック・スワン」がベストセラーとなった事で、効率的市場理論に欠陥があるとか、正規分布に基づく分析は間違っているとか何かと喧しい状況にありますが、現場で働く人間にとってはそんな事は当たり前の事なのです。 

市場参加者全員がバーベル戦略で待てる市場は存在しません。

バーンスタイン氏の前作「証券投資の思想革命:Capital Idea」が出版翻訳された1992年頃の日本の証券投資の現場では、投資理論を振りかざす者はまだ際物でありました。インデックスを少数銘柄でトラックする為に、バーラ・モデルを購入した折には決裁してくれた役員から「その機械で一番の推薦銘柄は何だ?」と質問されたものでした。 正規分布ですら認識されていない世界だったのです。

米国の金融工学の1線級の学者達は現実のフィールドで活躍しており、日々現実の出来事と格闘しています。 1987年のブラックマンデーの時にポートフォリオ・インシュアランスが流動性の問題に敗れ、ソロモン・ブラザースから独立したメリウェザーがショールズたちと立ち上げたLTCMも結局流動性の問題の前に崩壊しました。しかしそれでCapital Ideaは敗れ去った訳でもなんでもありません。 

それらから得られた教訓を付加しCapital Ideaに纏わる世界は益々隆盛していると言うのが真実でしょう。 マイロン・ショールズは現在「流動性とリスクの移転サービス」と称してαでもβでもないΩ:オメガを源泉にヘッジファンド、プラチナ・アセット・マネジメントを経営して成功しています。 この本はそう言った姿を17人のCapital Ideaの伝承者達へのインタビューを通じて語ってくれています。

自らヘッジ・ファンドを運営し29歳の若さでMITの終身教授となったアンドリュー・ローは本書の中で、経済学は科学では無いとして歴史的な視点を重要視しています。行動ファィナンスの現実への応用にも懐疑的で、投資家はその人が経験した相場によって、起こりうる結果についての主観的な確率分布は異なってしまうと言っています。

また効率的フロンティアで有名なマーコビッツは現在JLMSimと言う非同時的・不連続イベント・シュミレーターを使って箱庭的な世界の中で精緻な実験を繰り返しています。 例えば総ての投資家が平均=分散分析を行なうとして、過去のリターンから期待リターンを形成すと言う仮定(現実によくある仮定)でシュミレーションを行なうと爆発的な(とんでもなく暴騰してしまう)結果になると言う具合です。 まさに効率的市場仮説はそれを母体として進化を続けているのです。

バークレーズ・グローバルの記述ではフレデリック・グラワーやパトリック・ダンが登場し、懐かしさが込上げてきました。 この本はもう一度投資に対する考え方を原点に戻してくれる力を持っています。

普段、お客様にアセット・アロケーションのアドバイスをする仕事についているような方にとっては読むべき本であると思います。故バーンスタイン氏の「証券投資の思想革命」、
リスク (日経ビジネス人文庫)」も併せて強くお勧めします。

EMH=Efficient Market Hypothesis:効率的市場仮説

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