2009年12月14日月曜日

ボラティリティの話 3


コメントで質問を頂戴しましたので、今日はそれについて考えてみましょう。

スクで+20%と-20%をおなじ確率とするのはおかしくないでしょうか?
リスク資産の分布は、ただの正規分布ではなく、対数正規分布かと思います。

これは論より証拠で、実際の相場を計測してみましょう。
日経平均の日次データを1984年1月から直近12月11日まで採ってそれらの日次収益率をヒストグラムにしてみます。

データは米国ヤフー・ファィナンス(^N225)で簡単にエクセルにダウンロードできます。
データ個数はn=6,382。 日次収益率(変化率)から計算された年率ボラティリティは23.2%、リターンは偶然ですが0です。 25年かけて全然上がっておりません。と言うより90年に上がって下がってきてしまいました。

分布図です。背が高くなっていますが、これは目盛りの取り方で変わるので、気にしないで下さい。
クリックすると大きくなります。

真ん中の黄色い線が収益で0%です。紺色が最頻値。 オレンジが標準偏差1、で黄色が2の水準です。
1σは年率23.2%ですが、ここでは日次収益率の0.015が84日あった事を示ています。
厳格に言うともちろん正規分布とは言えませんが、未知のものを予測しようとする時にこの形は正規分布として考えても問題はありません。
左右対称と言う前提でも構わないと思います。したがって20%と-20%の発生確率が同じと言う仮定には問題ありません。

最近良く言われるブラックスワンですが、ここでも何羽も見ることができます。 -10σなどは宇宙のビッグバンからでも一回も起こらないような確率です。
しかし25年間に結構な発生頻度を持っています。

さてここで勘違いしやすいのですが、-10σが出るなんて使い物にならないのでは?
これは日次ですが、さらに時間を縮めて時間足、分足など細分すると、もっと異常値は沢山発生します。ギャップオープン分を分足で処理するとどうなるかは想像できると思います。時間を細かく切ると起こるだけで、これで驚く必要はありません。ですからポート運用などでは月次収益で十分なのです。

収益率は上のグラフは見てのとおり正規分布であって、対数正規分布ではありません。



さて、ここで資産価格、日経平均の株価データをヒストグラムにしてみます。
だいぶ乱れてはいますが、何となく対数正規分布の形をしていますよね。
横軸をLOGにして対数化すると、少し目を荒くしたものが下のグラフです。

かなり崩れてはいますがまだ正規分布の仮定で考えても問題ありません。
つまり資産価格は対数正規分布であった訳です。

ボラティリティ23.2%で、収益0%のリスクプロファィルを持つ無数のものの1つがこれなのです。
シュミレーションで回数をこなす事によって同じリスクプロファィルのセットをいくつも用意し、発生しうるリスクに対する認識を持っておくと言う実験がモンテカルロ・シュミレーションになります。

事後的に収益率は0%でしたが、ボラが同じであればこれは高い期待収益でも十分に起こる範囲の出来事です。


エクィティの期待リターンが仮に8%とすると「毎年交替で20%上昇したり、下降したりするように仮定して」の方法だと、紙くずになる確率(-100%)と2.08倍になる確率が同じということになります。これは実感としておかしく感じます。資産価かくが2倍強になることはよくありますが、0になることはそうありません。
市場インデックスでも新興国エクィティがある期間で2倍強になることはあっても、0になることはそうはありません。
「毎年交替で20%上昇したり、下降したりするように仮定して」という方法はマイナスを過大評価しているかと思いますが・・・

期待リターンが8%で、ボラティリティが20%とすると、20%から-20%と言うのが発生頻度の高い標準偏差±1の両端ですから、仮定として不自然ではありません。

少し計算してみましょう。

毎年20%上昇した場合。
計算は 100 x (1+(8%+20%))^年数乗 ですから3年で209.7152になります。

逆に毎年20%下落した場合は、
計算は 100 x (1+(-8%+20%))^年数乗 3年で、68.1472です。

仰る通りになかなか0にはなりません。


以下ついでに日経平均25年間の月次のグラフも載せておきます。
これであれば左端の異常値は166年に一度発生する程度のものです。
正確に正規分布なんてありませんから、計算に拘泥すると間違ってしまいます。

月次収益率

資産価格 x軸は通常

資産価格 x軸は対数

以上です。
御質問ありがとうございました。



7 件のコメント:

吊られた男 さんのコメント...

私の質問への回答ありがとうございます。


・・・が、それでもやはり違うように思うのです。
Porcoさんは日経平均を使用されていますが、[私の言いたいことを]分かりやすくするために個別株で話をします。

個別株のヒストリカルデータを見ると、数ヶ月で+数百%の上昇をすることがあります。しかし、その逆に-数百%の下落ということはありません。

例えば、プロパストの4月~5月の株価は1500円程度です。8月26日には2万円にまで達しました。終値では18790円です。この4ヶ月程度の株の期待リターンはせいぜい数%です。その中で株価は1500→18000なので、13倍のうちに占めるボラティリティの割合は+1000%超です。
その後、プロパストの株価は急降下して3000円くらいまで下がりましたが、それでも18790円→3000円の下落率は-80%強に過ぎません。
期待リターンX%。標準偏差Yという正規分布を仮定してしまうと、+数百%~1000%超が出る確率はほとんどありません。しかし、現実の世界では+数百%というボラティリティは発生していますし、逆方向の-数百%が出ることはありません。

これはプロパストや日本株に限らず他の企業でも見られますし、インデックスでも2007年の上海株のように1161→2675のようなリスクが+100%以上(期待リターンを10%とするとリスク部分が124%)という上昇があります。

単純な単利リターンを標準正規分布と仮定するモデルでは、このような大幅な上昇リターンが起こる可能性は無視もしくは低くなります。累積リターンを求める場合に、このような大幅リターンは最終結果に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。
日経平均というある程度収益率が落ち着いたデータをぼんやり見ると個別株ほどには明確に見えませんが、それでも上海と同じでプラスリターンが過小評価され、マイナスリターンが過大評価されるので、長期の収益率を見ると現実より低めに出ている気がします。



また、他の方の検証の紹介になりますが、
イーノさんのブログの検証で、単純な収益率での正規分布では都合が悪く、連続複利収益率というような話になっています。
○単純な単利の収益率と標準偏差の正規分布でうまくいかなかったあたり
http://www.fund-no-umi.com/blog/2009/03/7-9b82.html
○2つの考え方の差が書かれている辺り
http://www.fund-no-umi.com/blog/2009/05/16-6227.html

ベムさんのブログではまとめた話が出ています。
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20081229/p1


Porcoさんの結論はこの結論と異なるように思えるのですが、いかがでしょうか?

Porco さんのコメント...

吊られた男さん、コメントのお返事ありがとう御座います。
先ず、上がる、下がるで言いますと、エンロンや昨年のAIG,やシティ銀行は大幅下落。リーマンブラザースは破綻しました。株価はゼロにならない限り1日で100%以上は下がれません。 これは値幅ではなく計算上の問題です。インデックスでも動きの激しい個別株でも流動性とデータ採集期間さえ十分にあれば結果は変わりません。

期待収益はあくまで事前のもので、1年経って50%上昇する事もあるのです。EPS見通しが変われば期中であっても期待収益(これは各人がおくものでもあります。)は変わるものなのです。
リスクはあくまで株価の標準偏差でしかありません。 期待収益に比較して過去のデータが適応しやすいと言うだけです。
またリターンに単利も複利もありません。 それは計算上の問題だけで、日次のリターンを求めれば、年次に換算する時は複利ベースに修正します。 正規分布の収益率が資産価格の対数正規分布になるのは正に複利計算しているからなのです。

私が書いている話を煮詰めると総て複利の話と単利の話の錯覚にいきつきます。
 
イーノさんは独力で探し当てたようで、実は同じ話をしています。あちらの方がわかりやすいかもしれません。

ベムさんもこの問題を見つけたようにお見受けします。

吊られた男 さんのコメント...

しつこくてすみません・・・

『ボラティリティの話 2』でやられた期待収益率7%、ボラティリティ20%と同じシミュレーションをしてみました。

そうするとあるやり方だとPorcoさんのような結果になりました。Parcoさんの計算式の詳細は分かりませんが、私のシミュレーションでも25年後の期待リターンは5倍強、中央値は3.数倍という結果です。
ところが、これはイーノさんのブログで言うところの、参考書(融財政事情研究会刊「基礎から学べる投資・運用関連数式集」)に載っている計算式の結果と全く異なるシミュレーション結果(A方式)の数字です。イーノさんのA方式のExcelの数字をいじる形でも検証して同じような結果を得たのでた、間違いないと思います。


これが私の疑問の始まりなのです!!

このシミュレーション方式では、イーノさんのブログでは期待リターン10%、リスク30%の20年シミュレーションで参考書の結果と比べてリスクが10倍も大きくなっています。そこで【「収益率が正規分布する」という、これまでA方式の基礎にしていた考え方を捨てて「連続複利年率の収益率が正規分布する」という方式】で計算しなおした結果、リスクの10倍の誤差が修正されたということなのです。

parcoさんの話はベムさんやイーノさんの結論と同じなのでしょうか?
イーノさん&ベムさんの分析とParcoさんの計算方法(私が再現した計算)では方が明らかに後者のリスクが大きく出て違う結果かと思うのですが・・・

Porco さんのコメント...

吊られた男さん、
すみません忙しくて見れずにいました。
明日時間が有ると思うので、見てみますね。

Porco さんのコメント...

吊られた男さん。
遅くなってすみません。

10倍の意味がわからなかったので、イーノさんのブログ細かく拝見させて頂きました。A方式、とB方式とは、収益率が正規分布する。と連続複利を使うの2方法だと。

収益率や中央値に大きな差が出るとは思えませんが、何か勘違いならごめんなさい。

標準偏差に関しては対数正規分布された証券価格を直接計算していますので10倍になりますが、証券価格をLN()関数で直しSTDEVで計算し直して下さい。近似がでると思います。

Porco さんのコメント...

吊られた男さん

ちょと言葉が足りなかったですかね。
シュミレーションで計算された25年後の値を一番最初の値、例えば1なら1ですし、100なら100で割って下さい。LN(St/S0).これを500本ならその分STDEV( )で計算して下さい。 これは実は連続複利の時に使用する対数収益率です。

吊られた男 さんのコメント...

ありがとうございます。

元ファイルは削除してしまいましたが、もう一度作って確認してみます。