2009年12月21日月曜日

EGRP Expected Growth Rate of the Portfolio


昨日のボラティリティの話 6 の続きです。
ボラティリティの話 と併せて読むと良いと思います。

Expected Growth Rateに関してあまりにも軽く書きすぎたかなと、昨日のエントリーの後反省しましたのでもう少ししっかりと書いておきます。

結論から言うとこのツールは簡単でとても有用です。 投信だけでなく高ボラティリティの株をトレードする人も知っておくと便利だと思いますよ。

長期投資は儲かるのか?

有価証券の期待収益率(つまり年率どれくらい儲かるか?)を提示された時、あるいは自分で計算した時にリスクや時間を考慮しないでそのままの数字を真に受けて良いのでしょうか?

例えばセールスマンなりFPがよく長期投資のアドバンテージおよび複利効果みたいな話をします。 それはそれで長期投資はとても有利ではあるのですが、実際にお話ほど儲かるのでしょうか?

「このファンドは7%で成長します。 長期投資さえしてくれれば10年間では、 10,000 x (1+0.07)の10乗 で19,671円と約2倍になるのです。」 などと説明を受けた方も多いかと思います。 簡便法では利回り x 年数が70%になると約2倍になります。 これが複利効果ですよね。
しかし実際には普通の人は16,467円にしかならないのです。


ボラティリティの話 3 では日経平均を収益率で計測してあります。 細かい数値はありませんが収益率が正規分布する時、証券価格は対数正規分布になる事だけ把握してもらえればと思います。 (正確には対数収益率で計算する必要がありますがわかりにくくなるので単純な収益率を使用しています。)

これは何を意味しているかと言うと、期待した収益率に対して実現する収益率(中央値)は確率的に低い事を意味します。証券価格の山のピークが左に移動しているからです。

簡単に言えば一番ありそうな収益率。ちょうど運不運が普通だった時の収益率(中心値)はリスクの量や経過年数によって影響を受けてしまい考えていたよりも低く出ると言う事です。

上記の7%、10年の例で言えばなかなか簡単には2倍にはならないよと言う話です。(後ほど実験してあります。) もちろん満期保有の確定利付証券で為替や破綻のリスクが無ければこの影響は受けません。

具体的には?

具体的にリスクや時間経過から受ける低下分を計算するには正規分布上の収益率を対数正規分布上の収益率(連続複利収益率)に換算し分布の中心値を求める必要があります。

連続複利収益率=(収益率の自然対数-((リスク÷収益率)の2乗+1)の自然対数の2分の1) x 時間(年数)になります。

見ての通り、通常の収益率とは異なりリスクが分子に入った項がマイナスなので、リスクが上昇すれば収益率は低下します。 しかし簡単に計算できる訳ではありません。

Expected Growth Rate

そこでこの計算の簡便法がExpected Growth Rate なのです。 期待成長率と翻訳しても良いのですが、他にもこの用語は使用されますので、正確に言えばExpected Growth Rate of the Portfolio である事からここでは頭文字をとってEGRPとしておきます。

計算法は簡単です。
期待収益率0で、20%ボラティリティの証券が、最初の年に20%上昇し、翌年-20%下落したとしたら、

10,000 x 1.2 x 0.8 = 9600円になります。 2年で4%の減少です。

さらに4年では、

10,000 x 1.2 x 0.8 x 1.2 x 0.8 = 9216円 これは9600円に96%を掛けたものなのです。

つまり2年で x .96 倍ですから10年では5回かければ良い事になります。

10,000 x .96 x .96 x .96 x 96 x .96 = 8153.7円 

これが分布された収益率の中心値に近くなります。(一致はしません。)

つまり一般に期待収益率が予想されない時、リスク(標準偏差)20%の証券を保有していると10年で20%近く損をする人が普通の人と言う事です。

期待収益率がある時には、リスクに足してやります。
期待収益率7%、リスク20%なら、1年目は+27%、2年目は(-20%+7%)=-13%を交互にかけます。
10,000 x 1.27 x 0.87=11,049 ですから 2年で10.49%。 1.0149 を5回かければOKです。
10,000 x (1+ 0.1049)の5乗=16,467円になります。 やはり10年たっても2倍にはならないのですね。


実験

すこし実験をしてみました。
先ずは期待収益率を固定してリスクを増やしていき4年後の期待収益と中央値(分布の真ん中の値)を比較します。
証券価格は投信と感覚をあわせる為当初1万円としておきます。

EGRPは上記の簡便法、中央値は証券価格の対数正規分布から導かれる分散の中央値(つまり運不運の真ん中の状態)、期待値は期待収益率、Compound rate は連続複利収益率です。ここでEGRPと中央値が近似していればこの簡便法は使えると言う事になります。
クリックすると大きくなります。

実験1 期待収益率0%の場合(4年後)

実験2 期待収益率5%の場合(4年後)

実験3 期待収益率10%の場合(4年後)

次に期待収益率とリスクを固定して経過年数毎の動きを見ます。
EGRPは±を交互にかけますのでギザギザになりますが低い方が計算上の中央値と一致します。

実験4 期待収益率0% リスク20% 

実験5 期待収益率7% リスク20% 上記の例

実験6 期待収益率0% リスク40%

実験7 期待収益率40% リスク40%


結論

EGRPは使えると思います。
長期投資で複利の話が出たら思い出しましょう。

リスクを見たら+で掛けてマイナスで割ってやる。

非常に便利なツールです。

ではまた。

注)1.収益がlognormalityの仮定に基づいてます。
2.中心値について詳しく知りたい方はイーノさんのファンドの海に詳しくやさしく書かれています。
  3. ここでのExpected Growth Rateは、The Intelligent Portfolio: Christopher L. Jones 2008を 基にしています。

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