2010年1月29日金曜日

鉄道事始め


書かなければいけない長文のメールがあったのだけど、ビールを一杯飲んだらすっかりやる気が無くなっていて、昔買った河出書房の「図説 駅の歴史」と言う少々マニアックな本をパラリパラリとめくり始めていました。 以前日本の退職金制度を調べた時に、退職金の歴史は明治黎明期の鉄道の高度技術保持者達の囲い込みから始まったと知り、正に文明開化の走り、よくぞ明治の元勲達は早い時期に鉄道敷設を決めたものだと思ったものでした。

実際は鉄道権益独占を目論む外資系資本が虎視眈々と敷設圏を狙っており、植民地化にアレルギーのあった維新政府としてはうかうかとはしていられなかったようです。

それでも明治2年の廟議では殖産興行を推し進める開明派、大隈重信、伊藤博文が鉄道建設の必要性を主張する一方、参議・大久保利通らは膨大な経費を要する鉄道建設よりも国防のための軍事費を優先させるべきとして反対したそうです。 結局大納言・岩倉具視が大久保らを説得し鉄道建設が決定されましたが、この時線路の敷設用地にからみ面白い事が起こっています。

しかし若いものがまさに身体をはって堂々と正論をはき、政府もそれに答える。維新政府の活気が感じられます。

この地図は明治期の新橋ステーション。今の築地にまだ海軍の施設が残っていた頃です。クリックすると大きくなります。



新橋駅の土地の確保は、江戸幕府大名の宏大な屋敷跡が接収され使われました。かつての朝敵、会津松平と仙台伊達の江戸屋敷、京都所司代龍野藩脇坂家でした。
家紋があるのは上屋敷、下の地図での会津は下屋敷になります。
上屋敷は本宅、下屋敷は別宅にあたり、会津の上屋敷は現在の大手町近辺、和田倉門内にありました。

明治44年に飛行器(注1)から撮影された新橋上空から品川方面を見た航空写真が国立国会図書館写真帳に残されております。右手の樹木の残る小山は東京タワーから愛宕山のあたりでしょうか。

これを現在のGoogle Earthで見ると、海岸線が随分食い込んで埋立地の大きさがよくわかります。

さらにGoogle Earthの3D機能を使うと、もう何が海岸線だか何だか分からなくなります。

さて新橋を出発して横浜まで路線を敷設しなければなりません。当時は陸地でも接収はさほど難しいことではなかったのですが、それでも難しい相手もいたようで、田町駅に見られるように品川までは海に土を盛り、堤を作ってその上に線路を敷いていきました。

この辺りの江戸時代の地図を見てみますと、今の田町駅の当たりには薩摩藩下屋敷があったのです。鉄道敷設に関しては大久保やその他参議の反対とありますから、兵部省、薩摩藩邸等はどうにも動かせなかったようで、これが海沿いに線路を敷いていく理由であったそうです。

伊藤と大隈が2人で地図を広げて「そこを通すのはやっぱしヤバイだろう。」とか話し合っているのを想像すると楽しいものがあります。立川談志師匠の伝説となった落語「芝浜」の舞台も見えますね。

おかげで今の東海道線がオリジナルの当時の海岸線沿いであった事が簡単に分かってとても便利でありますが。

さて発展を続ける品川も当時は全くの海沿い、今なら景色の良い駅百選にでも選ばれそうですが、

こんな感じですね。現在では海の景色など想像もつきません。東京駅を計画した時に、上野方面と繋ぐ通過駅スタイル(行き止まりの終点では無いと言う事)を採用した為に、列車を待機させる基地が必要となりました。その際に品川の海側を埋立て現在の品川駅構内のようになったそうです。

この明治時代の地図は明治40年西暦1907年のものです。日露戦争が終わって少したった頃、東海道本線は明治22年に全通していますから、関西からはるばる旅をしてきた人たちは横浜を過ぎ、品川に至って右に東京湾が開けたら、ようやく長い旅が終わった事を感慨を込めて感じたのかもしれませんね。

手元にある明治35年の時刻表では、神戸を朝の6時に出発した当時最速の列車は大阪を6時52分、京都7時51分、米原10時4分、名古屋12時26分、浜松15時8分、静岡17時11分、伊豆半島の基部を貫く丹那トンネルはありませんでしたから、箱根を迂回し御殿場を大きく回って国府津20時37分、終点新橋は22時51分の到着でした。

今のNYよりも時間的には遠かったのですね。

運賃は4円13銭、当時の日本郵船乗客運賃では横浜神戸間下等で3円とあります。
あんぱん1個1銭、かけそばが3銭だったようですから、片道3万~4万円の感覚でしょうか。


明治田町の地図でロセッタホテルが気になった方は、



注1:追記 2月1日
私の早合点で当初陸軍気球隊による撮影かと思い込んでおりましたが、よく読んでみると写真本文にはAirplane(飛行器)と明記されておりました。 明治43年に陸軍徳川大尉が日本人初飛行、翌年明治44年に航空写真撮影に成功したとありますから、本文には記載されておりませんが、徳川大尉による撮影だそうです。

日本株は上がるのか① PER PBR


証券アナリストや個人投資家でも株価の将来を予測する為に企業の収益予測を立てたりします。
細分化されたデータ分析であれ、大雑把にこの商品売れそうだとか、あるいは不動産価格が上昇しそうだとか、円安になればとかその他。

これは 株価 = EPS(1株当たり利益) x PER
PERは株価収益率 = 株価 ÷ 1株当たりの利益

PERが一定であれば、EPSが20%上昇につき株価も20%上昇するからですよね。

EPS = Earning per share
PER = Price earning ratio

PERは一定では無いのをグラフで見ると下のようになります。
MSCIインデックスと東証のHPにある単体のPERの比較です。

1980年から1990年のバブル終焉迄、PERは20倍から70倍にまで3.5倍、
インデックスは350から89年末の2490迄7倍にまで伸びているので、
7÷3.5 = 2倍ほどEPSは伸びた訳です。

ところが当時、日本以外の世界中ではインデックスのPERと言うのは大体10~20倍程度のものだったので、70倍を正当化するのに色々な方手法を編み出さなければならなかったのです。
トービンのQレシオを変形させた日本版Qレシオなど。 当時破竹の勢いで上昇する不動産価格とそれをベースにした企業の資産価値、簿価でしか資産計上されていなかったので、あえて時価評価をした訳で、後々時価評価を極端に嫌うようになったのは誠に皮肉な話しだったりする訳です。


PERとは株価は利益の何倍であるか? なので、利益が極端に低くなると、
例えば 株価100円でEPS10円ならば10倍だが、
EPSが1円になると100倍になる。 さらに赤字だとEPSがマイナスになり、PERもマイナスで使えなくなってしまう。

グラフの1997年頃からがそうでこれでは高いも低いもあったものではありません。

したがってヒストリカルな分析をする時には使い勝手が非常に悪い。
それでPERの補完的な意味でPBRが用いられたりします。


PBR(Price Book Ratio)は株価をBPS(Book Value per Share:1株当たり純資産)で割ったものですから、解散価値に対していくらの価格が付けられているか?
と言う指標になります。  グラフでは1990年までのバブル期5倍を超えたりしてますが、これは不動産や持ち合い株式が簿価で評有されている為にそれらを時価では幾ら?だとか計算したのと、純資産が効率良く利益を上げるだろうとの見通しがあったからです。

現在のPBRは1倍を割っていますが、これは現在の純資産を維持できない、つまり来期以降赤字とか資産価格の下落(デフレ)で純資産を減らしていくのではないか? と言う見通しからでしょう。 通常世間一般では1倍割れは買いであると言われますが、現状市場ではそんな値打ちは無いと踏んでいる訳です。 もちろん低PBR戦略と言うものもあって、今が買い場であるとの意見も一定の説得力を持っていますよね。 

東証の業種別PBRは興味深いものがありますので関心のある方はこれを。

また経験深いグローバル・ストラテジスト、バイロン・ウィンなどは日本株の投資尺度としてのPBRを見直しています。
日本株は先進国で最も割安、投資家は利益よりPBRに関心


続く、


2010年1月25日月曜日

バリュー株とグロース株の相克


春山さんが、ブログでGSのクォンツ・ファンド、グローバル・オパチュニティーズ(GEO)に関して記事を書いていらっしゃいます。

一部抜粋させて頂くと、

理論で動かす巨大ファンドが破綻する時、、、
(1)過去を分析する
(2)こういうルールがあると発見する(=正確には、発見したと思い込む、私の解釈)
(3)将来もこうなるハズだと考える(=一種のベキ論に近い、私の解釈)
(4)プログラムがうまく機能しなくても「市場がおかしい、理論は間違っていない」とプログラムの正しさに固執するというパターンを毎度のように繰り返している。今回も例外ではないだろう。

これは私も全く正しいと考えます。

元のブルーンバーグの記事 

私のブログでは、この事象に関して少し異なる観点から見てみましょう。

読者の中には。 特にインデックス投資やバリュー投資をしている方にはウォートンスクールのジェレミー・シーゲル教授のファンも多いかと思います。 私も好きな学者の一人です。

最近では、米国の良い時期だけのデータを分析したとか言われてさんざんなところもありますが、1994年に発刊されたStock For the Long Run(邦題:株式長期投資のすすめ1999年 ラジオ短波、現在は日経BPから株式投資 として別訳もあり)はベストセラーとなり、長期インデックス投資に大きな影響を与えました。

またその後 2005年にはThe Future for Investors(邦題: 株式投資の未来 日経BP)を著し、市場インデックスよりも「永続する会社」からのリターンの方が有利である事を示し、運用業界にも大きな影響を与える事となりました。 2000年のITブーム破綻も手伝って大きな分類での投資スタイルで言うならばバリュー株に再度スポット・ライトが当たる事となったのです。

先ず下のチャートはMSCIの価格指数で、USA Core (大型・中型株指数)と同じユニバースでのグロースとバリュー指数を比較しています。1974年12月=100

黄色い線がグロース株でITブーム時にはUSACoreインデクス(青)やバリュー株指数(赤)を大きく凌駕しています


私も含めた株屋さんはどうしても短期で物を見がちで値動きを気にしてしまいますので、アカデミックな分野で配当も含めたトータル・リターンが分析されていようとも、こうした価格指数の呪縛からは逃れにくいものでした。 

下のチャートは配当も含めたトータル・リターンの比較です。
赤のバリュー株と黄色のグロース株がすっかり位置を変えてしまっています。配当の影響力は大きいですね。 ここでは長期投資をするならばバリュー株が有利である事が示されています。


そしてこバリュー株指数と、グロース株指数の差を取ったものが、下のグラフです。
仮に90年代後半のITバブルが異常なものであったと片付けるならば、両者の差は実にコンスタントに拡大していった様子が伺えるかと思います。


さてクォンツファンドは過去のデータに基づいて最適化を繰り返しながら戦略を設定します。

現実にはこのバリューとグロースのスタイル・インデックスを直接使用する程単純な戦略はありませんが、アルファを抽出する作業においてはこれだけ大きい差が無視できる訳はありません。 従ってGSのグローバル・オパチュニティーズにしろこれに類似したヘッジ・ファンドにしろロングとショートの対象銘柄は似たようなものにならざるを得ません。

なにしろGSのGEOファンドが資金を集める毎に対象銘柄を買い付けあるいはショートしますから、資金が集中している間はパーフォーマンスが極端に上昇する事になります。 さらにこれらの売れているファンドのパーフォーマンス分析などから似た戦略を取るファンドが出現し同じ事を繰り返してしまいます。

下のグラフはITバブル華やかし終盤の頃、1999年12月を起点にマーケット・ニュートラル(ここではロングとショートの金額が同じと言う意味で)のバリュー・ロング、グロース・ショートを実施した場合のロング・ショート・ファンドとMSCIUSAとの比較です。  投資家から見ると2007年のピーク時まではこの手のファンドは魅力的に映ると思います。 何しろマーケット・リスクが一応無い(低いβ値)事になっていますから、SP500やダウが上がろうが下がろうが関係無い訳です。 但しバリュー株のパフォーマンスがグロース株を上回っている限りにおいては。

さらにロング・ショートのパーフォーマンスが低下してくるとレバレッジを掛けてポジションを積み上げてしまう事になります。



グラフでは2007年3月にこのストラテジーはピークを打ち、2008年8月、GSがGEOに追加出資を決めた時に向けて下落して行くことになります。追加出資が一時的に流れを止めたようにも見えますね。

市場の回復にも係わらずグロース・とバリューの関係は今後の明確なトレンドを示していません。 敢えて言えば下向きなのでしょうか。 それでも長いトレンドではこの戦略は有効であると私は考えております。
なぜなら株式投資家は配当収入に対して必ずしも敏感では無いからです。



現在の東京市場では昨年作成された、アジア株買い、日本株ショートの巻き戻しも結構はいっていると想像されます。
グローバル市場の上下を見て、何故日本だけ強いのだろう?と迷う時はその影響も考えられるでしょう。

ジェレミー・シーゲル教授の The Stock for the Long Runの序文でピーター・バーンスタインはこう言っています。

本書の最大の貢献は、「株は20年以上保有すれば必ず高い成果が得られる事」を過去の事実から証明して見せたこと。 また注意を喚起しておきたいのは、投資の世界では必ず新しい枠組みへと絶えず変化して行くと言う事。過去は、そこから学ぶことが多くても、しょせん過去でしかない。

自戒も込めて。
Porco


2010年1月22日金曜日

VIX指数 2010


人は期待値が同じでも不確実なものへ投資する時にはなにがしかのプレミアムを要求します。

危険が増して株価に大きなリターンを要求する時には、皮肉な事に株価が下がる事によって市場は調整しようとします。

株価の期待収益率は将来の確率分布ですので、標準偏差が上昇すれば分布が広がり危険が増しますから要求するリターンも高く欲しいと言う事になります。

つまり簡単に言うとボラティリティが上がれば株価は下がると言う事です。

VIX指数はCBOEシカゴ・オプション取引所に上場されているオプションのインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算されるボラティリティ)を合算させ、30日後のSP500指数のボラティリティに指数化したものです。

昨日の市場では久しぶりに大きく上に跳ね上がりました。  VIX指数は恐怖指数とも言われるように先行きの市場が崩れそうな時にポートフォリオをヘッジしようとする人、それに付き合ってVIX指数だけでにベットする人などが集まり非常に大きな動きを見せます。

過去の動きをSP500と重ねて見ると、SP500が大きく下落する時にはVIXが大きく上昇している事がわかります。
さてここで、VIX指数は30日後に決済されるSP500のボラティリィティですから、レンジをチャートに書き込む事ができます。
年率のボラティリティになっていますから、今日の引け22.27は30日後の価格レンジに計算しなおすと、

100で割って%に直して、30日分にする為に12ヶ月の平方根で割ってやります。
(22.27/100)/sqrt(12)=6.428% これが標準偏差1(std1)。
今朝のSP500の引けが1116.48ですから、

std1= 1116.48 x (1+0.06428%)=1188.247
std-1=1116.48 x (1-0.06428%)=1044.713
std2=1116.48 x (1+0.06428% x 2)=1260.015

std1とstd-1の間に収まる確率は68%、std2とstd-2の間に収まる確率は95%。
VIXの価格には30日後のSPの確率分布の情報が混じっています。

もちろんヘッジする人も30日よりも手前になってもオプションの売買をする訳で、そのままこのレンジが使用できる訳ではありませんが参考にはなります。
これがそのチャートです。 黒い線がSP500、レンジは30日先にプロットしてあるので、2月の分まで入っているのです。


過去は下落局面では当たり前でもありますが、下のstd-1のレンジにくっついています。ヘッジが効いて満足しているのかもしれません。

ところが一旦std-2を割るとVIX指数が飛び上がっています。
さてここしばらくはstd1のラインに沿ってSP500は動いてきましたが、昨日の上昇分が今後どう出るか?
予想外の動きは出るかなど、工夫次第では使えるるチャートです。

Porco


関連サイト VIX指数について


シミュレーション GPIF 国民年金基金 ②

Google Analyticsで私のブログへのアクセスを解析してみると、実は金融ともお酒とも関係の無い、Smile マイケル・ジャクソンが一番読まれているコンテンツになっていまして、未だに1日多い日は40件くらいのアクセスがありますし、これを見る人は滞在時間が6分間と長い為に、サイト全体の滞在時間が長くなると言う現象を引き起こしております。 マイケル恐るべし。 This is itの1回目上映、2回目上映に併せてアクセスが増えているようで、smile マイケルで検索するとこのサイトは上位に出てきます。
また、プロ野球観客動員数も多く、これも金融とは関係がありませんね。 比較的力を入れて書いている上方落語ネタは今ひとつで大変残念ではあります。

そんな中でシミュレーション(2月21日訂正済)のアクセスが今でも多くあり、毎日訪ねてくれる方がいらっしゃるので、少し解説をしておく必要があると思いました。


まず、GPIFのポートフォリオが、期待収益率3.47%、標準偏差5.86%である事は前提においておきます。

通常、期待収益率が3.47%であれば、20年後の確率分布の中央値、つまり期待値は、
(1+0.03432)^20 :20乗で 1.978286 ここでは100がスタートですから、198にならなければいけません。

シミュレーションの場合、3.47%を連続複利に直しますと、
LN(1+0.0347) = 3.4112%、

連続複利は足し算ですから20年分は20を掛けてやれば最終の利回りは計算できます。
3.4112% x 20 = 0.682231

ここで、
通常の利回りに戻すと、
exp(0.682231)-1 =.978286で上記の198と一致する訳です。

連続複利収益率が正規分布すると、資産価格は対数正規分布になります。

GPIFの期待リターンと標準偏差は対数正規分布を前提にしてあるはずですよね。
期待リターンは確率分布における中央値でしょう。
標準偏差に関してはリターン値の取得方法から推測するに、単に標準偏差を直接的に計算しただけであると思います。 もしかしたら自然対数値の差分の標準偏差かもしれませんが、両者の差は大きくありませんのでそれ程こだわる必要は無いのかも知れません。

ここでは拘らずに両者をLN関数で連続複利化して計算してあります。
(標準偏差をLN化するのは根拠がありませんが)

その前提でシミュレーションすると以下のようになります。


単年度の期待値では、過去の年次収益率の平均値の方が実現する可能性に現実味がある訳ですが、長いシミュレーションになると期待値は中央値でなければなりません。

その場合の平均値は対数正規分布の平均値ですから、
exp(μ+σ^2/2)= exp(0.034112+(0.0586^2)/2)-1 = 3.6479%と大きめの数字が出てきます。



2010年1月19日火曜日

日本版IRA 年金⑫


今日の日経新聞「大機小機」は「1500兆円の金融資産を生かせ」がテーマで個人型年金非課税制度(日本版IRA)の提案でした。
年120万円と言う拠出限度額を設け、税引き後所得から拠出する。そして60歳など一定年齢以上に達し引き出す時には非課税とする制度です。

国債消化においても何かと引き合いに出される個人金融資産ですが、1999年に1400兆円に到達して以降、株価の上昇した2006年には増加したもののその趨勢は変わらず、金融資産の高齢者への偏在と、その彼らが貯蓄を下ろし始める時期となって、ここからの増加は望めないかと思います。 一方で融資先が国債に偏在した郵便貯金が預金限度額の上限引き上げに動くなど、これ以上金融資産の増加に歯止めがかかる(預金金利でしか増加しない)ような政策が目につきます。 老齢先進国である日本は安い労働力を提供できる訳でも無く、天然資源が豊富な訳でも無いので、世界の中においては資金提供者でなければならないはずですけれど、そこでは個人金融資産を育てる政策が欠かせないはずだと私は思っています。

一方でこのニュース、

公的年金を補完する企業年金の一つである企業型の確定拠出年金について、制度から脱退した後に運用が放棄されている資産額が400億円を突破した。前年と比べ80億円増えた。対象者数は19万人になり前年より5万人増えた。当該資産を転職先や個人型の年金に移すこともできるが、放棄額は膨らむ一方だ。厚生労働省は年度内にも、対応策を事業主に通知する。 【日本経済新聞】

退職年金のポータビリティが増すはずの確定拠出年金だったのですが、ようするに手続きが面倒くさくて放ったらかしになっている。
ここでは個人の金融リテラシーが低いと言う問題もあるでしょうが、制度がややこしいと言う問題の方が大きいような気がしています。
中学なり高校卒業時にきちんと卒業する人に社会のルールの一環として教えておくべき事だと思いますが、今の制度が普通の教師に教えられるのか?は定かではありませんね。

下の表は2005年時の確定拠出年金参加企業の従業員に提供している年金の組み合わせです。

ここでは、RB=退職一時金、DB=確定給付年金、DC=確定拠出年金、EPF=厚生年金基金、Cash=現金(給与時)、ARA=適格年金(廃止になります。)
ここでリストされている会社は厚労省の確定拠出年金連絡会議に参加していた先進的な企業達で、総てDCプランを選択している企業です。

厚生年金下にある3,457万人のサラリーマンのうち、企業型の確定拠出年金に加入している人はは270万しかいないのが実情です。  また450万人ほどの公務員には確定拠出はありません。ついでに言いますとサラリーマンではない個人型の確定拠出は9万人しかいないのが現状です。会社を移るとどうして良いかわからなくなるのは当たり前かもしれません。

これまでの経緯から年金制度の単純化は簡単では無い事はよくわかりますが、もう少し整理できないものでしょうか?確定拠出年金も途中引き出しができるようにするとかもう少し普及策をこうじなければならないのと同時に、「大機小機」のIRAのように原則国民全員に平等に年間120万円まで税引き後の積立プランを用意し、国民金融資産の積み上げを促すことは火急の案件であると思います。


ついでにもうひとつ、
確定拠出年金の特典に与った270万人のアセットアロケーションは、以下の通りです。 上のグラフを見てもわかる通り、退職一時金や、厚生年金基金、確定給付があるにも係わらず、この段階でも現金、保険商品が主流なんですね。 米国のDCプラン(確定拠出)と比較してあります。


常々思うのですがEMH(効率的市場仮説)では売り買いのマッチした現状の金融資産比率がもっとも効率的な資産の組み合わせであると。株式インデックス投資がそうですね。  日本は現金が一番なんでしょうね。 裏側は国債ですけどね。



2010年1月16日土曜日

バリュー投資家って最強なんですか?


はい。特に小型。

日本の大手証券各社は90年代にスタイル投資がブームになった時に各社各様にインデックスを作成し、今日でもメインテナンスを続けています。
アセットアローケーションや実証分析をする時にこう言ったデータは非常に助かる訳ですが、一般にはなかなか開放されておりません。

そういった意味では大和総研さんがダウンロードし易い形でインデックスを提供してくれております。
 
感謝。  ボンドもあります。

ちなみに私は大和の関係者ではありませんので念の為。

大和のインデックスでも東証1部中心のトータル・リターン・インデックスからグラフを作成してみました。
通常は配当収入が無視されたデータを使用する事が多いのですが、今の日本のようにキャピタルゲインがトントンな時に配当はとても重要な指標になります。

先ずはバリューとグロース
データは1983年12月から始まります。クリックすると大きくなります。

結構な開きになりますね。

次にサイズで見てみましょう
小型株プレミアムでしょうか?
ついでと言っては何ですが、60ヶ月の標準偏差を時系列で、

小型が低いのですね。 意外です。


さてGDPと株価の関係で見た通り、長めのデータも重要ですが、状況の切り分けも大切です。
インデックスのデータが1955年頃からあればまた違った分析もできますが、83年からだと最初にバブルの影響をもろに受けてしまいます。

そこで強引に期間を3分割してみます。

Phase 1はバブルの形成期、Phase 2は失われた15年、そして期待を込めて小泉改革から始まるPhase3を新しいピリオドだと信じて、ここは陽気に考えましょう。

そしてこのPhase3の期間に限定してスタイル・業種別に「月次平均収益率」と「平均収益率を標準偏差で割った(SR)比率」のランキングを作ってみました。今後の参考になるかもしれません




小型バリュー投資家の皆さんおめでとうございました。
問題は今後も続くかどうかですね。
と言うお話でしたが、このインデックスは使えそうですね。

追記:
Twitterで「かえるの気長な生活日記」さんに野村のインデックスを使って、同じような分析をしたことがあると教えて頂きました。

野村総研のインデックスが一般でも取れるとは存知ませんでした。失礼しました。と同時にこれは色々な事ができるなと思いました。

GDPと株式市場の関係 日本



前回は米国市場でしたが、今回は日本の市場について計算してみましょう。
名目GDPの値は1980年以降は四半期ベースでHPから取れますが、それ以前は年度別でしか取れません。従って四半期では無く年度別になってしまいますがやれるだけやってみましょう。

先ず最初に前回と同じように名目GDP値とTOPIXをエクセルの目盛り取りに任せてグラフ化してみましょう。

そして、それぞれのデータを対数化して回帰分析(リグレッション)したのが下のプロット図になります。
青が日経とGDP、赤がTOPIXとGDPです。

そしてこれらを回帰式にGDPを入れてTOPIXの妥当値を計算したのが以下のようになります。
現在の状況はこの図からいくと妥当値はTOPIXで1220、日経で15,000円程度となります。
今回の相場は上値は違和感無く充分に考えられますが、成長と言う根本的な問題はおきざりと捉えれば良いかと思います。 私は為替の影響でしばらく強く推移と言う考え方を変えておりません。


では2010年度はどうであるのか?
今後高い名目GDPの成長が見込めるのであれば想定されるTOPIXの妥当値も上昇します。 これが本来の相場の始まりとなるのでしょう。

昨年10月の日銀展望レポートでは、2010年度の実質GDP見通しが+0.8~+1.3、消費者物価指数の予測レンジが-0.9~-0.7となっています。
名目GDPに直してみると、-0.1~+0.6のレンジとなります。 これを2009年3Qの名目GDP値に掛けて2010年度と仮定すると、470兆9541億円 x (1+0.25%) =472兆1315億円、計算上の日経平均妥当値は15、051円とあまり代り映えはしません。TOPIXも勿論同じです。


日銀HPより、

株式はGDPだけで水準が決定する程単純ではありません。 為替や企業収益や様々な要因が影響する事は勿論の事です。

ですが日米でGDPと株式指数の動きを概観しただけでも、基本線は経済成長から大きく乖離するものではありません。(バブル期は大きかったですが修正されました)

将来の資産形成にむけて期待収益率を考える時に過去の長期間の平均では使えない、あるいは間違っているか、意味の無い事も理解できるかと思います。

私たちに必要なのは日本の確かな成長戦略である事は間違いなさそうですし、やはり成長の見込める途上国(勿論不確かでありますが)を考慮に入れる必要があるといえるのでは無いでしょうか。



2010年1月15日金曜日

相場師と落語


江戸の落語ではどうしても「熊さん八っつぁん」の下町のイメージが強いものですが、上方ではどちらかといえば大店の番頭さんや坊ちゃん嬢ちゃんの話とか、それに絡んだ茶屋の噺などが目につきます。実際には古くから江戸・上方両方の話が行き来して、「時うどん」が「時そば」になったりと話の交流は多いものです。三代目柳屋小さん、円馬などが大阪ネタの東京への移植に随分貢献したとされております。

さて古典落語の多くが成立した明治、大正期の大阪と言えば、堂島の大阪堂島米穀取引所において米相場が盛んな頃でしたが、「相場」を題材に取り入れた噺はそれほど多くはなく、私の記憶でも「米揚げ笊(イカキ)」か「住吉駕籠」に限られてしまいます。 どなたかご存知でしたら教えて下さい。


「米揚げ笊(イカキ)」のイカキは漢字そのままで、ざるを売る商売の事です。
ある日ぶらぶらしていた男(今で言えばニートでしょうか)が知り合いの紹介で笊売の行商のアルバイトを始めます。笊屋では馴れない人に多くの種類の商品を持たせても売りにくいだろうと、4種類の大きさに商品を絞って笊を持たせて街を売り歩かせます。

大豆用と中豆、小豆、そしてさらに小粒の米用です。 

で、この男、「おぉ~まめ、ちゅう~まめ、こまめに米を揚げる米揚げいか~~き」と言う風に声を張りあげて大阪の街中を売り歩いていたわけですが、丁度堂島の米穀仲買人の店の前を通った時にそこの主人に呼び止められます。 

この店は相場師が売り買いの火花を散らす堂島の中でもひときわ強気(ロング筋)で通った店でした。験を担ぐ相場師の前で「米あげ~いかき」とくる、米が騰るなんて縁起の良い符丁は嬉しくてたまりません。 なにしろこの店では主人が番頭を呼びつける時でも、呼ばれた番頭は頭を「下げる」のを嫌いそっくり返るしきたりです。また人を呼ぶ時も手のひらを下ににして「コッチにおいで」とは致しません。手の平を下にすると物がこぼれ落ちてしまいます。 ここでは手の平を上にして人を招くのです。これを「堂島のすくい上げ」と呼ぶのだそうです。 

店に呼び入れると、この男は「上げる、騰る、上の兄」とか、とにかく上がる事しか言わないので、すっかり主人に気に入られポンポンとお金や物をご祝儀に、おしまいには芦屋の別荘とお手掛はん(お妾)まで褒美に貰ってしまうと言うナンセンスな噺です。 その褒美のあげっぷりの良い事。

後はまあ噺を聞いていただくとして、「米揚げ笊」は東京に移植されると、「ざるや」になってしまい、米の相場師が株屋さんに変わり少しスケールが小さくなってしまいます。

大阪堂島米穀取引所

もう一つは「住吉駕籠(かご)」です。 これは住吉大社の前で客引きをしている駕籠屋の噺です。 噺の中に天保銭が出てきますし、お足は2分となっています。駕籠屋は明治に入って1872年頃には人力車に駆逐されたとありますから、江戸時代の設定の噺と言う事になります。

ここでも登場するのは堂島でも強気筋で鳴らした相場師2人、住吉で遊んで堂島までの帰り道、話しながら帰ろうかと言う事で、駕籠屋を騙して2人乗りを強行します。ひどいもんです。

ところが途中で2人は口論となり暴れたせいで駕籠の底が抜けてしまいます。ところが、なにしろ強気筋で鳴らした2人、相場で変節など絶対に出来たものでは無かったのです。 乗った相場は途中で降りたらアカンのです。

一旦乗った相場、弱気筋を締め上げる迄は降りる事はでけへん相談なんですね。 なまじ2人も入って狭い駕籠の中、抜けた底から足を出して堂島まで意地でも歩いて帰る(駕籠に乗ったまま帰る)と言うバカな噺です。落としはもちろん合計八本足の駕籠でクモスケです。 

この噺は江戸前では「蜘蛛駕籠」になっていますが、こういう馬鹿をやらしたらさすがの江戸っ子も上方のドアホにはかないません。
どちらにせよ意地っ張りで格好付け、大阪弁で言えば「伊達こき(伊達男という意味)」と言ったところでしょうか。当時の北浜や堂島の人間が世間からどう言うイメージで見られていたのか、中々に興味深いお噺です。


2010年1月14日木曜日

長期運用でリスクは増大しない


長期運用でリスクは増大しない。

Shinobyさんのブログでこう言うエントリーがありました。



「N年後の標準偏差は年率標準偏差に√年数をかける為にリスクが増大するのではないか?」 と考えてしまいがちですが、これは投資と言う観点からは間違っています。

実は中心極限定理からN年後の通期リターンの標準偏差は√年数で割るのが正解なのです。

こう言ってしまうと身も蓋も無いですが順序立てて考えてみましょう。

収益率が2%でリスクが10%の証券があり、10年間投資するとしましょう。
ここでは複利ベースで考えますが、わかりにくければ誤差覚悟で普通に考えてもかまいません。

複利計算では 累積収益は収益率の足し算になるので、10年では、( 1+2% x 10yr) -1= 20% となります。

一方でリスクの方は 10年経過しても 10% x sqrt(10) = 31.6% にしかなりません。

この 31.6% は1標準偏差分です。到達金額の確率計算などに使用するときには標準偏差1とか2の値も確率分布では無く収益率と同じように一本の線で表現されます。(グラフ参照)

だとすれば、ここは複利計算の世界ですから標準偏差1を年率に直すには年数で割ってやれば良いと言う事になります。

31.5% ÷ 10年 = 3.16% これは 年率リスク 10% ÷ √10 = 3.16%

但しこれは毎年のリスクが減ると言う意味でもありません。毎年のリスクは独立してやはり年率で10%あるのです。 合成されてこうなると考えるべきです。

ともあれ長期運用でリスクは増大しない。通期での年率リスクは減少するので長期運用が正しい。

グラフで見てみましょう。
収益率が2%、リスクが10%の場合です。
クリックすると大きくなります。

10年後は累積収益率20%を中心として、Std1(標準偏差1)は51.6%, マイナス標準偏差1は-11.6%です。
-11.6%を10年で割ると -1.16%、これに収益率2%を引くと -3.16% になります。
しつこいですが、年率リスクを√10年で割ると 3.16%なのです。

ご存知のように標準正規確率表から標準偏差プラスマイナス1の間に入る確率は68.26%、標準偏差マイナス1より下の確率は14.6%となります。
つまりマイナス11.6%を下回る確率は14.6%と言う事です。 もちろん下方へのちらばりも大きいですが、これで長期投資が危険だと言えるでしょうか?

収益率を少し大袈裟に上げてみましょう。



std-2の線は9年後にはプラスに転じます。
std-2は標準正規確率表によると上方向に95.44%の面積を残しています。つまり95.44%の確率で元本割れがなくなってくるといえます。

すくなくとも長期投資でリスクが増大すると言う時のリスクは年率標準偏差の事ではありません。
タレブのファンなら別ですが。


Google 対 中国政府


2月に東京で開催される女子サッカーの東アジア選手権において北朝鮮女子代表チームの入国が危ぶまれる出来事がありました。

拉致問題担当相を兼務する中井国家公安委員長が対北朝鮮に対する制裁問題からチームの入国に反対したためです。

この時FIFAから国際大会を政治利用してはならないとのルールから、男子日本代表チームのワールドカップ締め出しが懸念され一騒動になりました。 結果日本政府は最終的に入国許可を出したのですが、北朝鮮側が「謝罪もない上に、今の状況では選手の安全が保たれない」との理由で不参加を決め、大きな問題にならずに済んでおります。

アルビン・トフラーはその著書「富の未来」において、第50章、「目に見えないゲームのゲーム」を予言しています。 そこでは各国政府は国民国家ゲーム盤とも呼べる領域で争っているが、これはどこの国にとっても勝てる望みの無い戦いになるとし、政府がどう思おうと国と言う制度は力を失う方向にあると語っています。何故ならば国が唯一の強力な要素では無くなってきているとして、新しいゲームはいくつもの小さなゲームで構成され、それぞれが相互に関連しあい、同時に戦われるのだ。とこれまでの国家中心の枠組みの変化を主張していました。

ジャック・アタリもハイパー(超)国家的な企業、NGOなどの存在がこれまでの枠組みを変えてしまうと予想していますが、上記のサッカーにおけるFIFAの存在は正にそれであるのでしょう。 チャベス大統領でも、アメリカからのプレッシャーには知らぬふりを決め込んでも、もし自国チームがワールド・カップに参加できないとなれば国民のストレスを管理できるかどうか分からないでしょう。 FIFAやオリンピック委員会などは一面で国家の力を凌いでしまっていると言えるでしょう。

今回のGoogleと中国政府のやり取りは一企業と国家との戦いと言えます。Googleから見れば人口10億人超の中国市場の喪失は大きな痛手に違いありませんが世界全体のパイから見れば致命的ではありません。 Googleは既にHyperな超国家な企業になってしまっており、中国から見れば世界的データベース(しかも未だ拡大している)からの隔離はもとより、国内に抱えるインターネット・ユーザー2億6千万人(色々とデータはあるようですが)の主に知識層からのフラストレーションは国家統治上大きな問題となる事は無視できません。

今回問題となったサイバー攻撃は電子情報担当中国人民解放軍総参謀本部第4部または電波情報担当同3部等の関与が疑われていますが、これまでの経済発展が情報取得の自由化に大きく依存していた事と得失関係を整理すれば中国政府は妥協点を見つけざるを得無いと思います。  

従って今回注目されるのは国家対企業、60年代に見られたITTをなどの多国籍企業、軍産複合体による帝国主義的なものでは無く、武力を行使できない一企業として、Googleが検閲なしのサイトの実現、あるいは中国政府の譲歩を獲得する事ができれば正に国家にコントロールされないハイパー(超)な企業と言うものの存在が認知される事になります。 この事態は私としてはかなりエポック・メーキングな出来事であると思います。

関連ニュース




2010年1月13日水曜日

The Intelligent Portfolio


The Intelligent Portfolio : Practical Wisdom on Personal Investing from Financial Engines
Jones, Christopher L.


この本はピーター・バーンスタインの「アルファを求める男たち」の第7章、ウィリアム・シャープの部分を読んでいて、Financial Engine社に興味を持った事から紀伊国屋から取り寄せて読みました。 アマゾン・ジャパンでは未だ取り扱っていないようです。

せっかく原書を読んだのにPoroco Rosso Amazon Storeに入れられ無いのは少々寂しい感じです。





シャープ先生はポートフォリオ理論や資産価格理論の成果をプロの資産運用者だけでは無く、退職者や401Kなどでこれから資産形成をしていく個人投資家の人達向けに簡易に使えるウェブ・アプリケーションの形態として提供していこうと1996年にこの本の著者のクリス・ジョーンズと共同でフィナンシャル・エンジン社を立ち上げました。

この本はサービスのベースにある考え方とこのアプリケーションの使用法について解説しています。

基本的な考え方は合理的期待仮説が完全では無いにしろ成立するとして、401Kプラン加入者のアセット・ミックスが最も合理的な資産分散であると言う前提からスタートします。 ここでは期待収益率の推定も資産構成から逆オプティマイゼーションによって導かれるインプライドであって、保有ポートフォリオは総て%(収益率)では無く目標到達金額に対する到達確率とその分散によって表現されます。 

私も当初401K専用かと考えておりましたが、決してそうでは無く、従業員持株会による一銘柄突出した個別株式の扱いや、税制面で優遇を受けない付加的な資産の管理にも使用できるツールとなっております。 アセットアローケーションは何の為にあるのか?みたいな疑問にも答えてくれそうです。

各投資信託や上場ETF、個別株式の期待収益、標準偏差、共分散なども銘柄選定と自動に入力されます。

米国でもFPによるアドバイスにバイアスがかかっていたり、基礎的な金融理論に対する知識が不十分なケースが多く、そうした部分をアプリケーションによって相当部分カバーできると言う考えが根本にあります。 投信の手数料が安い事は勿論、回転率による内部コスト負担あるいは、コスト負担が為にFMが余分なリスクを取りすぎてしまうケースなど細かく説明がなされています。  但し本来合理的なインデックス投資だけでは無く、アクティブ・ファンドの評価等も充実しており、性能の良いファンドが存在する事にも肯定的です。

税制面やアセット構成日米相違の関係で日本語に翻訳されても技術関係者だけの本になりそうなので日本語への翻訳は難しいでしょうから、私のブログを通じてそのエッセンスを今後少しずつでも紹介して良ければと考えています。

因みにフィナンシャルエンジン社は上場準備に入っているようでホットイッシューになるのではないでしょうか。


上燗


最近家ではウィスキーを飲みますが、外出した折にはお燗で日本酒を飲む機会がすっかり増えました。
寒いせいか、歳をとったせいか、多分両方なんでしょうか、でも考えてみれば昔から良く飲んでたので、今更始まった事でもないですね。

東京では蕎麦屋で板わさと焼き海苔で一杯やるのも、うなぎ屋で香の物で一杯やるのもなかなかに良いものです。

昔は品質の悪い日本酒も燗をする事によって誤魔化せたとか言う話も聞きますが、マイナーな飲み方であるホット・ウィスキーや、これはマイナーではありませんが紹興酒を外せば、酒を温めて飲むと言う習慣は中々に日本を感じさせる飲み方です。

池波正太郎の小説でも「おやじ、熱いのをな」と言う表現が頻出しますが、冬の寒い夜にはそれこそ「たまらぬ」飲み方であります。

これは1年ほど前にNHK朝の連ドラ「ちりとてちん」やオバマ大統領を応援した事ですっかり有名になった福井県小浜市に立ち寄った際の朝の散歩時にみつけた立て札です。



小浜出身の西田当百は関西柳壇の大御所で、写真にもあるとおり私が好んで行く月の法善寺横町にある正弁丹吾亭の前に句碑がおかれており馴染みのものでありました。

「上燗屋へいへいへいとさからはず」 

法善寺横町では正弁丹吾亭ではなく、名代「おかめ」でいつも上燗とおでんを頂ますが、おでんの前には「たこぶつ」、「丸干し」、「いわしの煮たもの」、「つけもん」といつも私のメニューは決まっております。

「おばちゃん、竹輪一人何本まで食べてもええの?」
「あんた、ほっといたら全部食べてまうからな、2本までにしとき。」
ここの竹輪は本当に美味しい。 

水掛不動さんにバシャバシャと水を掛けておりますとちょうど左肩の辺りに「おかめ」の看板が見えますので一度行かれてはと思います。 中座、角座が出し物をやっている頃には漫才師やらなんやらいてはったんですけど最近はどうでしょう。

そう言えばこんな事もありました。
出口に近いカウンターの年配のお二人。
年配の、年の頃なら70歳ぐらでしょうか、白髪でかくしゃくとしてらっしゃいます。
もう一人はハゲ頭で少しお若い。

2人とも大きな声で話してたんですが、突然、

「なんやと、エッラそうに。 お前みたいななあ、未だ髪の毛もろくにはえ揃うてへん奴にゴチャゴチャ言われる筋合いは無いわい。」

「アホか、これはなあ一回はえ揃うたんや、そんで抜けたんじゃ、ドアホ」

それを聞いていて私はおばちゃんに訊ねました。

「おばちゃん、あそこの人は漫才師か?」

「いいや、普通の勤め人や。」


話が逸れてしまいましたが、この川柳の上燗屋は上方落語の「上燗屋」と言う話からきております。上燗とは熱燗とぬる燗の間のちょうど頃合の良いお燗具合の事です。

お燗の付け具合が自慢である屋台の一杯飲み屋のおやじが酔っ払いにエエようになぶられると言う話で、亡くなられた桂枝雀さんが得意とされていた話です。上燗屋は酔っ払い相手にへいへいへいと逆らわないわけなんです。 ここでのネタは昔の吉本新喜劇なんかでもよく使われていて、岡八郎と花紀京の掛け合いが思い出されます。

燗酒をゴクゴクと飲んで、「熱~う、なんやこれ無茶くちゃ熱いで、ちょっとうめてんか。」
ここで岡八さんが冷たいお酒を注ぎ足します。
またゴクゴクと飲んで、「ぬる~。ぬるすぎるワ」
ここでまた熱いのを足すと言う繰り返しで一杯のはずがようけ飲んでしまうと言う古典的な話です。


江戸前ではあまり上燗と言う表現は聞きませんが、上方落語では「一人酒」なんかでも、「上燗!」と言う段がありますますし、枕なんかでもよく出てくるかと思います。

まあこんな記憶がお燗したお酒と結合して、東京では店に入るなり「おやじ、熱いのをな」と鬼平よろしく言ってみたり、「上燗、上燗」と米朝師匠風に言ってみたりしながら私は寒い時期にはお燗でお酒を楽しむと言う訳なんですね。  

最近は青森の「田酒」を上燗で。

2010年1月11日月曜日

GDPと株式市場の関係


我々市場参加者はGDPの速報値に一喜一憂し、確定値に失望したりと大変に忙しい訳ですが、経験的にGDPデータに反応することは認識していても、実際の関係には疎いのではないかと思います。 漠然と成長率が低下するので、株式の見通しは「明るく無い」とか、株式と景気が連動する事は認知されているのですが、曖昧である事は間違い無いでしょう。

私のブログはデータを分析したエントリーが多いのですが、こうした作業の8割はデータの収集に時間がとられてしまいます。特に販売されているデータでは無く、インターネットで無料で収集できるデータかもしくはアマチュアが少額で入手できる(例えば会社四季報など)データに限定して分析を進めていこうと考えています。従って何か価値のある無料のデータが見つかればそれに集中して分析していく傾向がありますので、登場する分析はランダムで、食い散らかしになりますが、そのうち纏めておこうとは考えております。 それは全くいつの事やらはわかりませんが。

今回は米国のデータを基にGDPと株式(特にSP500=Composit)の関係について整理しておきたいと思います。
名目GDPとS&P Compositについて4半期データが簡単に取得できるのが、1947年1Qからなので、基本的にそこからの分析となります。
インデックスの数値はインフレ調整されていませんから、対応するGDPも名目GDPになります。

先ず以下のグラフです。
これは何も手を加えず、生のデータをグラフ化したものです。但しGDPを左軸に、SPを右軸においてエクセルのなすがままに目盛りを振ってある状態です。
何となく連動しているような、そうでも無いような、何の判断もできないと言う状態かと思います。しかしながら名目GDPの直近の動きは(へこみ)はこれまでのトレンドに比較して大きなものである事は読み取れるかと思います。


さて、上のグラフは後で修正するとして、

ストラテジストや評論家はよく景気の半年先や1年先を織り込んで株価は動くので景気に対して先行性があると良く言います。先行性を評価する方法もありますが、今回はもう少し直接的なもの、GDP成長率とEPS成長率の関係を見てみましょう。

SPのEPS(1株当たり利益)の伸び率とGDPの伸び率です、双方12ヶ月、つまり4四半期の変化率を取り比較します。データは1948年1Qから2009年3Q迄となっています。 x軸に名目GDP原数値の年変化率、y軸に同時期に対応するSPのEPSの年変化率をプロットします。

これはエクセルでも簡単にできますが、今回は私が日常使用している統計パケージKaleida Graphを使用します。高価なものではありません。

S&Pコンポジット(SP500)12ヶ月変化率と名目GDP12ヶ月変化率


相関係数は0.40328しかありません。 Rスクエアは0.16程度になってしまいますので、非常に低い水準ですが、失望する程でもありません。少し細工すれば何とかなりますが、今回私にはそういうインセンティブはありませんのでそのままにします。

PIMCOでも商務省の企業収益データを使用して同じ分析をしていますが、そこでは決定係数(Rスクエア)は0.30。もちろんそれでも高くは無いのです。

しかしビル・グロースはむしろ米国の正常な状態(彼の言うニュー・ノーマルでは無く、以前のノーマル)の5~6%の名目GDP成長率では企業収益成長率も安定していたのだとし、今後もその状態は続であろうか?と疑問を提示しています。 これは彼は一貫して米国の潜在成長率が低下しているのではないかと主張していると言う事でもあります。

結論から言うと、名目成長率とSP500のEPS成長率の関係は決定係数で0.16でもちろん関係は深いが、さほどでも無いと言う事です。

実は株屋さんにとっては別にEPSが連動しようがしまいが、株価が連動していればこの手のデータは充分に役に立つものなのです。  工夫次第では。

一番最初のデータは生でしたので見づらかったのですが、このような数字の桁の異なる者どうしの比較では対数化するとやりやすくなります。

対数化はシュミレーションのところで何度か使いましたが、原数値をLN(GDP)、LN(SPX)と言うふうに変換して相関を調べます。
以下のプロットは対数化されたSPをY軸(被説明変数)、GDPをx軸として相関式を計算しています。


これは、SPインデックス=-2.4313(切片)+0.98332 x LN(GDP) と言う関係で、相関係数は0.96221であると言う事です。

そしてこの式から導かれる値をEXP( )関数で元に戻した数値とSPの原数値の比較が以下のグラフとなります。
左軸は対数化されていますが、右軸の現実のSP500と式から導かれる数値のスプレッドは普通の目盛りになっています。 グラフはクリックすると大きくなります。


名目GDPのトレンドとSP(時価総額の代理変数とも言える)の関係はこのグラフのように視覚的に整理もできると言う事です。

米国黄金の60年代はGDPより上に位置し、沈滞の70年代は低く推移、そして1982年から始まった米国のブル・マーケットは1995年3QにGDPのトレンドに追いつき、駆け上がっていったのでしょう。  2003年の調整はGDPトレンド・ライン近辺で反発、今回の売られすぎは既に修正されて現在は過去からのトレンド上にあると言えるでしょう。 但しこのトレンドは直線では無く、式からもわかるように名目GDPの値の影響を受けると言う事です。

しかしビル・グロースが心配するように、GDPのトレンドライン(赤線)は傾きが落ち始めたようにも見えるのです。

前回のエントリーで触れたインフレ懸念は実はこのGDPトレンドと深い関係があります。 金融緩和策や財政政策を続行して、需給ギャップを埋めに行く。 しかし、もし潜在成長率が想定よりも低ければ緩和や財政投入のやり過ぎからインフレを誘発する危険性が高いと言う事になりかねません。

メジャー・ハウスのエコノミストでこのあたりに警戒的な人もいるようです。


以前のGDP関連のエントリー  GDPと株式時価総額(日本)

2010年1月8日金曜日

ブレーク・イーブン・インフレ率(TIPS)

米国財務省が来週の100億ドルのインフレ連動債の入札を発表しました

インフレ連動債はTIPS(Treasury Inflation-Protected Securities)の略です。にわかに注目を集め始めましたが、今後相場解説ではお馴染みになるかもしれませんので予備知識として少し見ておきましょう。
これは読んで字の通り、インフレに連動して元本が調整される国債です。
つまり TIPS元本 = 額面 x インフレ変化率
ここではクーポン利率は固定されていますので、TIPS元本が上昇すればその分支払われるクーポン分の金額も上昇します。

額面 10000円、クーポン5%の場合、
インフレ率が0%であれば、
10000 x ( 1+0%) = 10000 5%のクーポンは 500円となります。

インフレ率が10%上昇したとすると、
10000 x ( 1+ 10%) = 11000 ですからクーポンは、これの5%= 550円となります。
もちろん償還時の元本は11000円に上昇しています。

つまりインフレ分をヘッジできるようになっているわけで、
一般の国債利回り→名目国債利回り
TIPSの利回り→実質国債利回り
であると考えれば良いわけです。

さらに国債との間に以下の関係が成り立ちます。
名目国債利回り = 実質利回り(TIPS) + 期待インフレ率 + (リスクプレミアム)
ここでリスクプレミアムは測定しにくいので、利用上
名目国債利回り = 実質利回り(TIPS) + 期待インフレ率

名目国債利回りとインフレ率を直接織り込んだ実質利回りの差が期待インフレ率。名目、実質の両者がブレーク・イーブンになるインフレ率なので、
期待インフレ率 = ブレーク・イーブン・インフレ率となります。

どうでも良いリスクプレミアムを書いたことで、かえってややこしくなってしまいましたが簡潔にいうと、
10年債利回り―10年TIPS利回り=今後10年の期待インフレ率

これが、米国国債10年利回り(青)とTIPS10年利回り(赤)




クラッシュの時に国債利回りが下落し、TIPS利回りが上昇しています。
TIPSの利回りが上昇すると言う事は→TIPS価格の下落=インフレ期待がマイナス=デフレ懸念、が大きく存在していた。と言う事になります。


インフレ率には約3ヶ月前の消費者物価指数が使われます。 これは消費者物価指数の確定値を待つと言う意味でラグを持っている事になります。しかしながらTIPSは市場で価格形成がなされる為に発表に先行してインフレ懸念を推し量るツールとなる訳です。

(米国の場合 Consumer Price Index For All Urban Consumers、日本では 消費者物価指数(除く生鮮食品)が使用されます。)

実際に市況解説で使用される場合には、国債とTIPSが併記される訳では無く、ブレーク・イーブン・インフレ率が使用される事になります。
下の表がブレーク・イーブン・インフレ率(青:左軸)、参考までにCPI前年同期比%(赤:右軸)、CPI前月比%(黒:右軸)も書いておきました。


ブルーンバーグでも見る事ができます。 注:3Yにしてあります。

どうして米国の事ばかり話すのと思われるかもしれませんが、日本にもTIPS、物価連動債はあります。あるのですが個人投資家は投信の形態でしか購入できません。長期投資であるとかハイパーインフレを予測するならともかく、短中期では手数料と信託報酬であまり良い投資とは思えません。

それよりも、米国は先のFOMCで未だ緩和策が必要との見解が語られています。 一方で未だ小さくはありますがインフレの心配も出てきているのです。

インフレ懸念は、今回の緩和策の出口政策とも相まって金利上昇懸念に結びつきやすくドルの上昇要因になります。 日本はどうしようも無いデフレですから常に米国金利上昇懸念が先行、ドル高の要因となり易いからです。インフレ懸念が出てもFEDは容易には金利を上げられませんから、ぐずぐずとドル高期待を引きずるのでは無いかと見ています。

はっきり言って今回日本株が上昇できるのは為替要因のみ。ですからインフレ懸念を表現してくれるTIPS、つまりブレーク・イーブン・インフレ率は日本株にとって重要な指標となりうる訳なのです。

グラフ作成に使用した セントルイス連銀のHP

2010年1月7日木曜日

海外市場との相関係数


昨日とったデータからいくつかの指標をグラフ化しておきました。

インデックスは、MSCIのエマージング・マーケッツ(EM),コクサイ(KOKUSAI:世界先進国株式で日本を除いたもの)、USA
JAPANの4指標です。元のデータは1987年12月からの配当込インデックス。ドル・ベースです。

最初のグラフは60ヶ月の平均収益率(算術平均)に12ヶ月積算したものの時系列。


60ヶ月標準偏差(リスク)の時系列。 2007年からのクラッシュ以降急激に上昇しているのが見てとれます。

そして、日本株式から見た月次収益率の相関係数の推移。
昨日も少し話題にしましたが、私も文献を詳しく見たことはありませんでした。よく話題に上がる話です。 各国市場の相関が高くなり、国際分散投資によるリスク低下の効果が減少していると言うものです。

上のグラフで見ると趨勢的に各国株式市場の相関が高くなりつつあるところに、クラッシュが大きく同じように各国市場を揺さぶり一気に高い相関を示すようになりました。

相関係数0.9に近い数字は国内の市場差程度のものでしかありません。
やはりネットの発達が情報のグローバル化を促し、国際的な水平分業化が加速、世界経済を一つにしつつあると考えるのが真っ当かと思います。大型ファンドはグローバル運用会社において運用され、1人のファンドマネージャーが複数市場に跨って運用し、コミュニティーの中で同じ情報が共有され消化されていく以上こうなる宿命であったと思います。 もちろん小型の運用会社でもコストをかけずにグローバル運用が可能になっていますよね。 今後も相関係数が低下することはあるでしょうが、趨勢的なトレンドは元には戻らないでしょう。 従って国際市場に分散する事によるリスク値の低下は困難になっていきます。

それでも地政学的なリスクや天災、資源の偏在によるリクス、経済成熟化度合いによる成長の制限等、地域分散の意義が失われる訳ではもちろんありません。

それでは対象をもう少し具体的に個別の国に絞ってみてみましょう。

次はドル・ベースMSCI各国別市場インデックスです。 日本、米国、欧州、中国、インド、ブラジルとの関係です。
先ずは取得可能なデータの長さの関係から1992年12月からとなります。

そして日本株との収益率の相関係数(60ヶ月)の状況です。

正直私もこれほど相関が高いとは思わず、今回は少々驚いてしまいました。

まさに個別企業の分類が国家単位だけで良いのか、もう少し異なる分類があるのではないかと考えさせられてしまいました。