2010年1月13日水曜日

上燗


最近家ではウィスキーを飲みますが、外出した折にはお燗で日本酒を飲む機会がすっかり増えました。
寒いせいか、歳をとったせいか、多分両方なんでしょうか、でも考えてみれば昔から良く飲んでたので、今更始まった事でもないですね。

東京では蕎麦屋で板わさと焼き海苔で一杯やるのも、うなぎ屋で香の物で一杯やるのもなかなかに良いものです。

昔は品質の悪い日本酒も燗をする事によって誤魔化せたとか言う話も聞きますが、マイナーな飲み方であるホット・ウィスキーや、これはマイナーではありませんが紹興酒を外せば、酒を温めて飲むと言う習慣は中々に日本を感じさせる飲み方です。

池波正太郎の小説でも「おやじ、熱いのをな」と言う表現が頻出しますが、冬の寒い夜にはそれこそ「たまらぬ」飲み方であります。

これは1年ほど前にNHK朝の連ドラ「ちりとてちん」やオバマ大統領を応援した事ですっかり有名になった福井県小浜市に立ち寄った際の朝の散歩時にみつけた立て札です。



小浜出身の西田当百は関西柳壇の大御所で、写真にもあるとおり私が好んで行く月の法善寺横町にある正弁丹吾亭の前に句碑がおかれており馴染みのものでありました。

「上燗屋へいへいへいとさからはず」 

法善寺横町では正弁丹吾亭ではなく、名代「おかめ」でいつも上燗とおでんを頂ますが、おでんの前には「たこぶつ」、「丸干し」、「いわしの煮たもの」、「つけもん」といつも私のメニューは決まっております。

「おばちゃん、竹輪一人何本まで食べてもええの?」
「あんた、ほっといたら全部食べてまうからな、2本までにしとき。」
ここの竹輪は本当に美味しい。 

水掛不動さんにバシャバシャと水を掛けておりますとちょうど左肩の辺りに「おかめ」の看板が見えますので一度行かれてはと思います。 中座、角座が出し物をやっている頃には漫才師やらなんやらいてはったんですけど最近はどうでしょう。

そう言えばこんな事もありました。
出口に近いカウンターの年配のお二人。
年配の、年の頃なら70歳ぐらでしょうか、白髪でかくしゃくとしてらっしゃいます。
もう一人はハゲ頭で少しお若い。

2人とも大きな声で話してたんですが、突然、

「なんやと、エッラそうに。 お前みたいななあ、未だ髪の毛もろくにはえ揃うてへん奴にゴチャゴチャ言われる筋合いは無いわい。」

「アホか、これはなあ一回はえ揃うたんや、そんで抜けたんじゃ、ドアホ」

それを聞いていて私はおばちゃんに訊ねました。

「おばちゃん、あそこの人は漫才師か?」

「いいや、普通の勤め人や。」


話が逸れてしまいましたが、この川柳の上燗屋は上方落語の「上燗屋」と言う話からきております。上燗とは熱燗とぬる燗の間のちょうど頃合の良いお燗具合の事です。

お燗の付け具合が自慢である屋台の一杯飲み屋のおやじが酔っ払いにエエようになぶられると言う話で、亡くなられた桂枝雀さんが得意とされていた話です。上燗屋は酔っ払い相手にへいへいへいと逆らわないわけなんです。 ここでのネタは昔の吉本新喜劇なんかでもよく使われていて、岡八郎と花紀京の掛け合いが思い出されます。

燗酒をゴクゴクと飲んで、「熱~う、なんやこれ無茶くちゃ熱いで、ちょっとうめてんか。」
ここで岡八さんが冷たいお酒を注ぎ足します。
またゴクゴクと飲んで、「ぬる~。ぬるすぎるワ」
ここでまた熱いのを足すと言う繰り返しで一杯のはずがようけ飲んでしまうと言う古典的な話です。


江戸前ではあまり上燗と言う表現は聞きませんが、上方落語では「一人酒」なんかでも、「上燗!」と言う段がありますますし、枕なんかでもよく出てくるかと思います。

まあこんな記憶がお燗したお酒と結合して、東京では店に入るなり「おやじ、熱いのをな」と鬼平よろしく言ってみたり、「上燗、上燗」と米朝師匠風に言ってみたりしながら私は寒い時期にはお燗でお酒を楽しむと言う訳なんですね。  

最近は青森の「田酒」を上燗で。

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