2010年1月25日月曜日

バリュー株とグロース株の相克


春山さんが、ブログでGSのクォンツ・ファンド、グローバル・オパチュニティーズ(GEO)に関して記事を書いていらっしゃいます。

一部抜粋させて頂くと、

理論で動かす巨大ファンドが破綻する時、、、
(1)過去を分析する
(2)こういうルールがあると発見する(=正確には、発見したと思い込む、私の解釈)
(3)将来もこうなるハズだと考える(=一種のベキ論に近い、私の解釈)
(4)プログラムがうまく機能しなくても「市場がおかしい、理論は間違っていない」とプログラムの正しさに固執するというパターンを毎度のように繰り返している。今回も例外ではないだろう。

これは私も全く正しいと考えます。

元のブルーンバーグの記事 

私のブログでは、この事象に関して少し異なる観点から見てみましょう。

読者の中には。 特にインデックス投資やバリュー投資をしている方にはウォートンスクールのジェレミー・シーゲル教授のファンも多いかと思います。 私も好きな学者の一人です。

最近では、米国の良い時期だけのデータを分析したとか言われてさんざんなところもありますが、1994年に発刊されたStock For the Long Run(邦題:株式長期投資のすすめ1999年 ラジオ短波、現在は日経BPから株式投資 として別訳もあり)はベストセラーとなり、長期インデックス投資に大きな影響を与えました。

またその後 2005年にはThe Future for Investors(邦題: 株式投資の未来 日経BP)を著し、市場インデックスよりも「永続する会社」からのリターンの方が有利である事を示し、運用業界にも大きな影響を与える事となりました。 2000年のITブーム破綻も手伝って大きな分類での投資スタイルで言うならばバリュー株に再度スポット・ライトが当たる事となったのです。

先ず下のチャートはMSCIの価格指数で、USA Core (大型・中型株指数)と同じユニバースでのグロースとバリュー指数を比較しています。1974年12月=100

黄色い線がグロース株でITブーム時にはUSACoreインデクス(青)やバリュー株指数(赤)を大きく凌駕しています


私も含めた株屋さんはどうしても短期で物を見がちで値動きを気にしてしまいますので、アカデミックな分野で配当も含めたトータル・リターンが分析されていようとも、こうした価格指数の呪縛からは逃れにくいものでした。 

下のチャートは配当も含めたトータル・リターンの比較です。
赤のバリュー株と黄色のグロース株がすっかり位置を変えてしまっています。配当の影響力は大きいですね。 ここでは長期投資をするならばバリュー株が有利である事が示されています。


そしてこバリュー株指数と、グロース株指数の差を取ったものが、下のグラフです。
仮に90年代後半のITバブルが異常なものであったと片付けるならば、両者の差は実にコンスタントに拡大していった様子が伺えるかと思います。


さてクォンツファンドは過去のデータに基づいて最適化を繰り返しながら戦略を設定します。

現実にはこのバリューとグロースのスタイル・インデックスを直接使用する程単純な戦略はありませんが、アルファを抽出する作業においてはこれだけ大きい差が無視できる訳はありません。 従ってGSのグローバル・オパチュニティーズにしろこれに類似したヘッジ・ファンドにしろロングとショートの対象銘柄は似たようなものにならざるを得ません。

なにしろGSのGEOファンドが資金を集める毎に対象銘柄を買い付けあるいはショートしますから、資金が集中している間はパーフォーマンスが極端に上昇する事になります。 さらにこれらの売れているファンドのパーフォーマンス分析などから似た戦略を取るファンドが出現し同じ事を繰り返してしまいます。

下のグラフはITバブル華やかし終盤の頃、1999年12月を起点にマーケット・ニュートラル(ここではロングとショートの金額が同じと言う意味で)のバリュー・ロング、グロース・ショートを実施した場合のロング・ショート・ファンドとMSCIUSAとの比較です。  投資家から見ると2007年のピーク時まではこの手のファンドは魅力的に映ると思います。 何しろマーケット・リスクが一応無い(低いβ値)事になっていますから、SP500やダウが上がろうが下がろうが関係無い訳です。 但しバリュー株のパフォーマンスがグロース株を上回っている限りにおいては。

さらにロング・ショートのパーフォーマンスが低下してくるとレバレッジを掛けてポジションを積み上げてしまう事になります。



グラフでは2007年3月にこのストラテジーはピークを打ち、2008年8月、GSがGEOに追加出資を決めた時に向けて下落して行くことになります。追加出資が一時的に流れを止めたようにも見えますね。

市場の回復にも係わらずグロース・とバリューの関係は今後の明確なトレンドを示していません。 敢えて言えば下向きなのでしょうか。 それでも長いトレンドではこの戦略は有効であると私は考えております。
なぜなら株式投資家は配当収入に対して必ずしも敏感では無いからです。



現在の東京市場では昨年作成された、アジア株買い、日本株ショートの巻き戻しも結構はいっていると想像されます。
グローバル市場の上下を見て、何故日本だけ強いのだろう?と迷う時はその影響も考えられるでしょう。

ジェレミー・シーゲル教授の The Stock for the Long Runの序文でピーター・バーンスタインはこう言っています。

本書の最大の貢献は、「株は20年以上保有すれば必ず高い成果が得られる事」を過去の事実から証明して見せたこと。 また注意を喚起しておきたいのは、投資の世界では必ず新しい枠組みへと絶えず変化して行くと言う事。過去は、そこから学ぶことが多くても、しょせん過去でしかない。

自戒も込めて。
Porco


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