2010年1月11日月曜日

GDPと株式市場の関係


我々市場参加者はGDPの速報値に一喜一憂し、確定値に失望したりと大変に忙しい訳ですが、経験的にGDPデータに反応することは認識していても、実際の関係には疎いのではないかと思います。 漠然と成長率が低下するので、株式の見通しは「明るく無い」とか、株式と景気が連動する事は認知されているのですが、曖昧である事は間違い無いでしょう。

私のブログはデータを分析したエントリーが多いのですが、こうした作業の8割はデータの収集に時間がとられてしまいます。特に販売されているデータでは無く、インターネットで無料で収集できるデータかもしくはアマチュアが少額で入手できる(例えば会社四季報など)データに限定して分析を進めていこうと考えています。従って何か価値のある無料のデータが見つかればそれに集中して分析していく傾向がありますので、登場する分析はランダムで、食い散らかしになりますが、そのうち纏めておこうとは考えております。 それは全くいつの事やらはわかりませんが。

今回は米国のデータを基にGDPと株式(特にSP500=Composit)の関係について整理しておきたいと思います。
名目GDPとS&P Compositについて4半期データが簡単に取得できるのが、1947年1Qからなので、基本的にそこからの分析となります。
インデックスの数値はインフレ調整されていませんから、対応するGDPも名目GDPになります。

先ず以下のグラフです。
これは何も手を加えず、生のデータをグラフ化したものです。但しGDPを左軸に、SPを右軸においてエクセルのなすがままに目盛りを振ってある状態です。
何となく連動しているような、そうでも無いような、何の判断もできないと言う状態かと思います。しかしながら名目GDPの直近の動きは(へこみ)はこれまでのトレンドに比較して大きなものである事は読み取れるかと思います。


さて、上のグラフは後で修正するとして、

ストラテジストや評論家はよく景気の半年先や1年先を織り込んで株価は動くので景気に対して先行性があると良く言います。先行性を評価する方法もありますが、今回はもう少し直接的なもの、GDP成長率とEPS成長率の関係を見てみましょう。

SPのEPS(1株当たり利益)の伸び率とGDPの伸び率です、双方12ヶ月、つまり4四半期の変化率を取り比較します。データは1948年1Qから2009年3Q迄となっています。 x軸に名目GDP原数値の年変化率、y軸に同時期に対応するSPのEPSの年変化率をプロットします。

これはエクセルでも簡単にできますが、今回は私が日常使用している統計パケージKaleida Graphを使用します。高価なものではありません。

S&Pコンポジット(SP500)12ヶ月変化率と名目GDP12ヶ月変化率


相関係数は0.40328しかありません。 Rスクエアは0.16程度になってしまいますので、非常に低い水準ですが、失望する程でもありません。少し細工すれば何とかなりますが、今回私にはそういうインセンティブはありませんのでそのままにします。

PIMCOでも商務省の企業収益データを使用して同じ分析をしていますが、そこでは決定係数(Rスクエア)は0.30。もちろんそれでも高くは無いのです。

しかしビル・グロースはむしろ米国の正常な状態(彼の言うニュー・ノーマルでは無く、以前のノーマル)の5~6%の名目GDP成長率では企業収益成長率も安定していたのだとし、今後もその状態は続であろうか?と疑問を提示しています。 これは彼は一貫して米国の潜在成長率が低下しているのではないかと主張していると言う事でもあります。

結論から言うと、名目成長率とSP500のEPS成長率の関係は決定係数で0.16でもちろん関係は深いが、さほどでも無いと言う事です。

実は株屋さんにとっては別にEPSが連動しようがしまいが、株価が連動していればこの手のデータは充分に役に立つものなのです。  工夫次第では。

一番最初のデータは生でしたので見づらかったのですが、このような数字の桁の異なる者どうしの比較では対数化するとやりやすくなります。

対数化はシュミレーションのところで何度か使いましたが、原数値をLN(GDP)、LN(SPX)と言うふうに変換して相関を調べます。
以下のプロットは対数化されたSPをY軸(被説明変数)、GDPをx軸として相関式を計算しています。


これは、SPインデックス=-2.4313(切片)+0.98332 x LN(GDP) と言う関係で、相関係数は0.96221であると言う事です。

そしてこの式から導かれる値をEXP( )関数で元に戻した数値とSPの原数値の比較が以下のグラフとなります。
左軸は対数化されていますが、右軸の現実のSP500と式から導かれる数値のスプレッドは普通の目盛りになっています。 グラフはクリックすると大きくなります。


名目GDPのトレンドとSP(時価総額の代理変数とも言える)の関係はこのグラフのように視覚的に整理もできると言う事です。

米国黄金の60年代はGDPより上に位置し、沈滞の70年代は低く推移、そして1982年から始まった米国のブル・マーケットは1995年3QにGDPのトレンドに追いつき、駆け上がっていったのでしょう。  2003年の調整はGDPトレンド・ライン近辺で反発、今回の売られすぎは既に修正されて現在は過去からのトレンド上にあると言えるでしょう。 但しこのトレンドは直線では無く、式からもわかるように名目GDPの値の影響を受けると言う事です。

しかしビル・グロースが心配するように、GDPのトレンドライン(赤線)は傾きが落ち始めたようにも見えるのです。

前回のエントリーで触れたインフレ懸念は実はこのGDPトレンドと深い関係があります。 金融緩和策や財政政策を続行して、需給ギャップを埋めに行く。 しかし、もし潜在成長率が想定よりも低ければ緩和や財政投入のやり過ぎからインフレを誘発する危険性が高いと言う事になりかねません。

メジャー・ハウスのエコノミストでこのあたりに警戒的な人もいるようです。


以前のGDP関連のエントリー  GDPと株式時価総額(日本)

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