2010年2月15日月曜日

日本株は上がるのか? ⑥ 期待収益率


期待収益率と言うと、期待される収益率、将来の投資期間に渡ってこれくらいの収益は期待して良いのでは無いかなあ?と言うような意味で捉える事が多いと思います。予想収益率が予想される収益率であるのに対して、「期待」と言う言葉には確率的な意味が含まれるでしょう。

確率で言う「期待値」は例えばサイコロを振って、偶数がでるか奇数がでるかは各々50%である、と言うのは期待値になる訳で、あなたが偶数になれば良いなあと考えるのとは違いますますよね。 ここでは将来の確率的な収益率の分布だと考えるべきでしょう。

余談になりますが、サイコロの丁半博打では、2つのサイコロの組み合わせの種類が偶数の方が多い為、つまり組み合わせの一番小さい数字が2で一番大きいものが12ですから、江戸時代に庶民の間では長い間偶数である「丁」が有利であると考えられていたようです。

ランダム・ウォーク理論は、熱力学おけるブラウン運動の株価への適用で、ここではマルチンゲールと言う数学的な特性を備えているとされています。
マルチンゲールとは以前紹介した小島さんの本から引用させていただくと、「その確率現象が過去にたどってきた足取りをどんな風に利用して推測しても、未来に生起する数値の平均値はいま現在の数値そのものである。」もっと簡単に言うと、「過去のデータをどんな風に利用しても、未来の自分の結果を有利にする事はできない。」

何も予測を入れないと言う投資方法はそれはそれである訳ですがそれはこのシリーズの別の機会で紹介したいと思います。

何も分からないから何もしないと言う訳には行きません、ここでは明日上がるか下がるかは予測できないにしても過去の統計的な分散などのデータは仮のデータとして利用が可能ですし、過去のトレンドは分析する事ができます。 従って今現在分かっているベストの範囲で様々な条件を仮置きをして行く事になります。


さて株式の期待収益率を考える上でリスク・プレミアムとは切っても切れない仲です。
リスク・プレミアムは、不確実な将来の収益、つまりリスクに対して投資家はプレミアムを求めると言う考え方です。

国債の利回りが1.5%の時に株を買えば同様に1.5%の収益が期待できる。とすれば投資家は確定利付証券である国債を選ぶでしょう。

では何%の収益の上乗せが見込まれれば株式を選ぶのか?と言う何%がリスクプレミアムに当たります。収益がブレる分どれだけ余分に受け取れる可能性があるのか?と言う可能性の部分でもあります。

株式の期待収益率=リスクフリー金利+リスク・プレミアム

株式リスクプレミアムは個別企業価値評価における資本コストの計算にも欠かせませんから、言わばファィナンスにおける諸問題の中核である訳ですが、残念ながらこれだと言う結論は出せないでいます。従ってベストを尽くすと言う事で過去のデータを遡及する事になりますから、

リスク・プレミアム=過去の株式のリターン - リスクフリー金利

と言う上記の式と鶏と卵みたいな関係になります。

さて変な事を言っていないで、世間一般の常識で考えましょう。

リスク・プレミアムの推定方法として業界のテキストであるマッキンゼーの「企業価値評価 第4版 【上】:The Valuation」では以下の3種類を上げています。

1。過去の超過リターン(リスクフリー金利に対する)の測定を基に将来のリスク・プレミアムを推定する。
2。市場全体の配当利回りと言った現在の市場の変数を回帰分析し、期待マーケット・リスクプレミアムを予測する。
3。投資収益率、および成長率の予測値をDCF法に当てはめて、市場の資本コストを逆算する。

よく評論家や学者が私は4%ぐらいだと思っている、とか5%だとか言っていますが、アカデミックな世界ではこの辺りの話しには暫定的な結論めいたものが出ています。  この辺りの議論に一人でああでも無いとかこうでも無いとか悩んでも仕方がありません。

但しリスク・プレミアムを何の用途に使うのか?は大事なポイントです。企業価値の算定において、「投資家は収益のリスクにはプレミアムを要求する」と言う前提をひっくり返してユニークな計算をするのは問題ありですし、かと言って最近の株式市場は国債以上のリターンを上げている訳でもありません。

イボットソン社がビジネスとしてリスク・プレミアムのデータの提供をしていますし、それを参考にするプロフェッショナルがマジョリティーでしょう。
またイボットソン・ジャパンの山口勝業氏が、「日本経済のリスク・プレミアム」と言う本を書いていますし、その一部である、過去データを使用した「サプライ・サイドからの株式期待リターンの推計」と言うレポートをHPで公開してくれています。

またグローバルではオタク(彼らは仕事)的な本として、「証券市場の真実」があります。ここでは世界中の株式市場の過去のデータが100年以上に渡って纏められています。


さて、当ブログでは一番単純で多用されていて家庭でもできる、過去データの株式リターンを計算しておきましょう。

一般の無料サイトから取得できる最長の株式のトータル・リターンデータはMSCIになります。
ここではCore指数(Large+Medium Size)を使用していますので大型株にティルトされています。他にもバリュエーションがありますのでそれは皆さんで試して下さい。

下の図はバリューとグロースの両方のデータがスタートする1974年12月末=1としたグラフです。
バリューは16.797倍、市場指数であるコアは5.817倍、グロースは1.866倍になっています。
過去の幾何年率収益率ではそれぞれ、8.37%、5.17%、1.79%になります。

1974年からヒストリカルに計算された日本株の期待収益率はコア指数の年率5.17%と言う事になります





しかし一目みれば90年以降市場は上昇していない訳で、ここで言う平均値は90年までに稼いだ収益率をそれ以降の年で薄めているのに過ぎません。

5.17%が期待収益率であるなどと言ってそれを真に受けて予想収益率と期待収益率を混同しては何をしているのか分からなくなってしまいます。

下はCore指数について1969年12月=100とした指数の動きと、算術平均(Average)と幾何収益率(Geo Average)の時系列変化をグラフ化したものです。


つまり90年までは15%あった収益率がその後だんだんと低下している事がわかります。まあ長期チャートを見れば最近は全然収益率が上がって無いと言う事ですよね。上のグラフではCore指数の幾何平均収益率は5.17%でしたがここでは6%あります。 日本株の良かった時期が4年分余計に平均値に加算されているからです。

世間で言われる期待収益率を鵜呑みにしてどんなに正確なアセット・アロケーションを実行してもあまり意味のある行動とは言えない。 それは自分で考える部分が欠落しているからでしょう。

さり気なく書いてしまいましたがバリュー株の優位性(過去の)は非常に大きなものがあります。但し短い期間では非常に大きな損失をもたらす事もあります。 またここではMSCI Coreと言うユニバースに限定されている事も注意が必要です。

続く、

0 件のコメント: