2010年3月6日土曜日

シミュレーション ⑥


前回まではMSCI KOKUSAIの時系列データを使用して対数収益率と対数値の差分の標準偏差を計算する事で、対数値を入力し正規分布を作成、それを対数正規分布化して実数に変換しました。

これまでやってきた事は、
対数収益率の平均、標準偏差が既知である時。
つまり正規分布の平均、標準偏差が既知である時。
μ:正規分布の平均値
σ:正規分布の標準偏差
とすると、

対数正規分布の平均μ'、標準偏差σ'は、
平均 μ'=exp(μ+(σ^2)/2)
標準偏差 σ'=sqrt(exp(2μ+σ^2) x (exp(σ^2)-1))

ここで、

平均収益率(期待収益率)が5%、標準偏差20%の証券があるとします。
一般にこれらの計測値は、実数値での計測だと推察されます。

実数値では収益率は対数正規分布していますから、正規分布に戻してシミュレーションにかける必要があります。

ここでは上記の式と逆方向の変換になります。

対数正規分布の平均μ'、標準偏差σ'が与えられれば、
平均 μ=LN(μ')-LN((σ'^2)/2+1)/2
標準偏差 σ=Sqrt(LN((σ'/μ')^2 + 1))

したがってシミュレーションに入力すべき正規分布の値は、
期待収益率 3.1%
標準偏差 18.9% になります。



数学的にこれで正しいと思います。

試しにスプレッドシートのコラムC19、つまり、対数正規分布の標準偏差に40%を入れてみましょう。仕手株やテクノロジー株の一部でありえる数字です。

すると正規分布の期待収益率は-1.9%になります。  数学的に正しいのですが、違和感が少しのこります。 当ブログのEGRPなんかもこの問題をついてはいるのですが。



しかしアナリストが成長率を予測したり、GPIFなどがブロック・ビルディング方式や過去収益率で期待収益率を計算する時に収益率の平均値を意識しているでしょうか?

アナリストの予測する成長率は(1+r)^Nですし、5年後を見据えた期待成長率はやはり平均値では無く(1+r)^5 で実務的には予測します。

つまり通常期待成長率は中央値をさしている事が多いと言えます。 もちろん何も断りはありませんし、額面通り受けとれば平均値と受け取るのが正しいでしょう。ましてや標準偏差は対数正規分布の実測値ですから上記式で正規分布に変換する必要があります。

一方でヘッジファンドも含めたファンドでは、ベンチマークとの勝ち負けが気になりますから月次収益率の一覧表のような形式が多く、それらの平均値を求めがちです。
月次平均収益率を12倍されたらたまりません。 シミュレーション④のKOKUSAIインデックスの平均値以上になってしまうでしょう。

したがって期待収益率の扱いには注意が必要だと言う事です。
もしそれが中央値を意味しているなら、つまり(1+r)^N なら、期待収益率は
μ=LN(μ')だと言う事です。μ'は1+数値です。

一方で標準偏差20%で5年だから、20% x √5 = 44% だと計算する人がいますが、これも小さい数字であれば問題ないのですが、実際には期待収益率の影響を受けますのでリスクを過小評価してしまう可能性があります。

また、デリバティブスを業務としていると普通に収益率やボラティリティ(標準偏差)に対数を使用しています。 ボラティリティと言う表記があればLN(N期の価格/N-1期の価格)だと考えると思います。


4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。イーノです。
求め方や、その視点、とても参考になります。確率の範囲はたしかに気になりますよね。でてくる数式は僕のと同じだったので安心してます。

Porco さんのコメント...

どうもイーノさん。

私のポイントは期待収益率に関して、過去の算術平均値なのか、幾何収益率なのか?が非常に大事なのではないですか? それで幾何収益率の場合が多いですよ。と言う投げかけでした。
心配させてごめんなさい。

匿名 さんのコメント...

はい、よくわかります。書かれているように、いわゆる期待収益率を出されて、それが実年率か? 連続複利年率か? 期待値(平均値)か?、中央値か? 最頻値か? というのは分かりませんものね。受け手が想像するしかないです。そのとき、今回説明されたような知識は必要ですね。

僕もここに出てくる説明に関連した、マクリッツ本の160p真ん中あたりにでてくる説明に至るところは、なんどもなんども読み返しました(しかしあれでは分かりませんね…)。

ところで最近、イボットソン社の方にお話を伺ったのですが、期待リターンとしてでてくる予測値はふつうは過去の算術平均をベースにしたとうかがいました。

Porco さんのコメント...

イーノさん、イボットソンに関しては違和感はありません。山口社長の「日本経済のリスク・プレミアム」では算術・幾何併記になっていますが、標準偏差は算術平均がベースですね。
それとディムソンの長期間の計測を見ても実は対数正規分布を前提にしてませんし、意外とこのあたりの正確性にこだわって無い学者もいるようです。