2010年5月3日月曜日

コンソル公債


日露戦争当時の日本国債ファイナンスについて調べたのですが、その前にいくつかその前提となるアイテムを整理しておく必要があります。その中のひとつ、当時の金融市場でベンチマーク金利として使用された英国のコンソル公債について今回はエントリーしてみます。

メモ替わりに使ってますので非常に趣味性の強いものになりますが、当時の金融市場は単純なので本質を探求するのには色々と参考になると私は思っています。

ましてやこの週末にでもギリシャは債務返済の為に国民に窮乏を強要せねばならなくなっています。 日本も遠い事ではないなと思った人も多いのではないでしょうか。 国債について考えるには良いテーマだと思います。


もともと欧州の専制君主達は戦争の軍資金が必要になるとジェノアやアムステルダム、ロンドンの商人や銀行家から借金をして工面していました。戦争に勝てば新たに領土が獲得できるかもしれないし賠償金を得たりできます。 また君主達は資産や領土内の徴税権を持っているのでそれらも担保としての価値を持っていました。

しかし君主が死亡すると後継者(他所の国の王子だったりします)は相続を放棄したり、君主自身も強権を発動して借金を棒引きにしたりするので、こうしたローンや債券は市場金融商品として売買され流動性の付与されるようなしろものではありませんでした。 君主の私的債務なのか国の公的債務かの区別も曖昧だったのです。 

日本でも封建時代に度重なる徳政令が出されたり、蔵前の札差が処分されたりと君主ともなると好き勝手が出来た訳です。なにしろ武力(暴力)を独占していますから。 しかしこうなると高いデフォルト・リスクを反映して金利は高いものに成らざるを得ませんし、債務の円滑な金融市場と言うものは当然の事ながら成立などできないのです。

イギリスでは名誉革命による権利章典(1689年)によって”国王の徴税権は議会の同意が必要となった”事で、英国国債は公的債務として捉えられるようになりました。つまり誰の借金かが明確になったと言う事です。 専制君主から憲法による立憲君主へ、君主が気まぐれで散財したりはできなくなりました。

18世紀の中頃にヘンリー・プレハムと言う英国の首相兼財務大臣が、クーポンの支払い、つまり国庫負担を減ずる為に、それまでの表面利率やテナー(期間)の異なる債券をまとめて(consolidateして)コンソル公債と言う永久債をつくりそれまでに発行されていた各種国債を一本化しました。

 その後クーポン・レートは変更されますが当初は3%クーポンを与えられた永久債として市場性のある債券が登場したのです。 1947年を最後にコンソル公債の新規の発行は止まっていますが、今でもわずかにコンソル債は取引されています。英国政府としてもクーポンの低さから(1923年以降2.5%)当面は償還するつもりは無いようです。

こうして多くの債券をまとめると、期間は永遠、表面利率は1つですから一銘柄に統一されます。当然商いもしやすく、価格計算もクーポン金額÷市場金利と簡単ですから流動性も大きいものとなります。 。 LIBORなどの無い時代にはこのコンソル公債がいわいる金利として、言い換えればリスクフリー・レートとして様々な債券のベンチ・マークとなります。 したがって19世紀後半の日本を始めとする各国の国債のリスクプレミアムはこのコンソル公債に対する上乗せ金利で測られる事となるのです。 

こうしてロンドン市場ではコンソル公債金利(クーポンでは無く価格から逆算した金利)が古くからの市場取引記録として今日まで残されているのです。


これを見ると第2次世界大戦までの期間コンソル公債は非常に安定した金利水準であった事がわかります。 英国ポンドは基軸通貨で金本位制を採用していましたし、安定した経済成長の下こうした状況が続いたのでしょう。 日露戦争の1905年前後も金利は上昇基調ではありますがまだ低位安定の時代でした。

当時の各国のリスクプレミアムを説明するには文章が長くなってしまいますので次回とし、今回はベンチマークとしてコンソル公債と言うものがあったとの話しにとどめておきます。


参考:

コンソル公債(永久債)の特徴。
この債券の特徴を見てみましょう。 大学でも教材に使われているようです。 

償還期間が永遠で、クーポンが決まっていると価格計算がしやすくなります。 キャシュ・フローを見れば良いですね。

額面100円で毎年5%(5円)クーポンの債券があるとして、これの現在価値を求めると、
1年後:5円+2年後:5円+。。。。。。。。。 割引率が無いので合計は無限大ですね。つまり価値は無限大と。

しかし仮にインフレ率が2.5%とすると、1年後に受け取るクーポンの現在価値は、インフレ分減少するので5円÷1.025です。
1年後:5円÷(1.025)=4.878円+2年後:5円÷(1.025^2)=4.759円+3年後:5円÷(1.025^3)=4.643円。。。。。。。

これは初項:100円x5%÷1.025、公比:1÷1.025の無限等比数列となります。

つい最近も国会で乗数効果の計算ができずに管さんがイジメられていましたがそれと同じ式です。

従って、公式から無限等比数列の和=無限等比級数=初項÷(1-公比)



つまりコンソル債の価格は、クーポン金額÷インフレ率
他に指標金利があるならばインフレ率を市場金利あるいは利子率と入れ替えても良いでしょう。

インフレ率が10%だと、5円÷10%=50円
インフレ率が2.5%だと 5円÷2.5%=200円
インフレ率が1%だと 5円÷1%=500円
インフレ率が0.1%だと 5円÷0.1%=5000円

グラフにすると、


グラフを見て気づくのは、左側、利子率が低くなると急激に価格が上昇すると言う特性です。
このグラフは流動性選好説の説明、流動性の罠でよく使われる事例となります。

Wikiから引用しておきます。

コンソル公債の例
毎年、固定で100円の利子が支払われることが約束されたコンソル債券が有る。この債券を2000円で買えば毎年の利子率は5%となる。債券市場で取引が行なわれ、価格が2100円になったら利率は4.76%となる。債券の価格が上がることは同時に利子率が下がるを意味する。
利子率が1%になると債券価格は10000円になる。もし利子率が1.1%になると、債券価格は9090円と910円急落する。極端な場合、利子率が0.1%の場合は債券価格が10万円となるが0.2%であれば5万円となる。このように、この債券の仕組み上、利子率が非常に低い場合は債券価格の変動が利子金額を大きく上回って非常に激しくなる。このため、利子率は一定以上低下しにくい。

流動性の罠
債券価格の上昇(利子率の下落)が極端であると、人々は債券の値下がりを予想して、貨幣で資産を保有するようになり、貨幣供給が増しても、貨幣保有が増すだけで、資金は債券購入に回らず、市場利子率はそれ以上低下しようとはしなくなる。
これを流動性の罠という。ケインズはこのことを、「ジョン・ブルはたいていのことは我慢するが、2分の利子率には我慢できない」という言葉を引いて、市場金利には下限があることを示した。

ケインズが流動性選好説を説明するときは上のグラフはXY軸が入れ替わります。

以上参考まで、




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