2010年5月10日月曜日

"Our Crowd" Stephen Birmingham


この本も高橋是清の日露戦役時の起債について調べている過程で見つけた本です。東京地区でアマゾン経由発注したら翌日に届きましたから日本でも結構売れているのでしょう。

広瀬さんのブログMarket Hackの下段にこの本が推奨図書で入っていたのを見つけたのは発注した後の話しです。シフを研究している私のブログを見て入れておいてくれたのかもしれません。

内容はニューヨークにおけるユダヤ人コミュニティーの歴史で、多くの部分が以前紹介した当時のユダヤ資本大手投資銀行クーン・ローブ商会ヤコブ・シフの話で蔽われています。 もの凄く面白い本と言っておきます。  なにしろPrefaceの次のページにある人物相関図はGS、リーマン、メーシーズを始めセリグマン、グッゲンハイムと現代を騒がす名前はもちろん、歴史上の重要人物達が狭いページにぎゅぎゅう詰めになっていますから。

この本の圧巻はノーザン・パシフィック鉄道買収事件 "The Battle of the Gianats"。 JPモルガン+一方の鉄道王ヒル 対 シフ+鉄道王ハリマンのアメリカ証券市場を恐怖のどん底に追いやった超大型買収戦争でしょう。

モルガンにすればこの事件はUSスティール買収後の隙をつかれた戦い。 シフにすれば乾坤一擲、清水の舞台から飛び降りた一世一代の戦い。 最後のとどめを刺す段階で、シフはユダヤの祈りの時間に仕事はしないと言う理由でその手を止めてしまいます。 謎の行動なのでしょうか。モルガンはこの事件以降シフの扱いを単なるユダヤの銀行家から、PAR(対等)の扱いに改めます。

この事件を立場を変えてJPモルガンの伝記的小説モルガン家:ロウ・チャーナウで読むと細部で表現が微妙に異なっていて面白いものがありますよ。

ちょうどこの騒動の収まった頃、ロシアと戦う金欠気味の日本から大男の高橋是清と神経質そうな悩める小男、天才深井英五がコンビを組んで資金調達に登場します。 シフは是清とは偶然の出会いを装いますが、日露戦争が始まった段階で日本へのファイナンスを既に決めていたと言う証言もあるのです。

モルガンとシフの手打ちの後、まるで打合せたかのようにモルガンは大西洋の航路に手を伸ばし、シフ+ハリマンは太平洋に向かって進みます。 太平洋航路のいきつく先にシベリア鉄道が見えていたと言うのは考え過ぎでしょうか。 桂・ハリマン協定と言うのもありますね。


ヤコブ・シフは伝記の執筆をCyrus Adlerと言う人に自身で依頼しました、シフの莫大な遺産の中に伝記の印税六ドルの小切手が残っていたそうです。

この伝記も最近キッシンジャー出版から再販されています。 Jacob H. Schiff:His Life and Letters 日本の起債の部分を期待して読んだのですが、この部分は深井英五が依頼されて英文で書いており、何も校正されずにそのまま掲載されているそうです。 従ってせっかく読んだのですが期待した新しい情報は何もありませんでした。


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