2010年7月22日木曜日

米国債を買いまくる日本投資家



 
 欧米では昔からファイナンシャル・プランナーと言う職業がありました。今は亡きベアリング商会は女王陛下の資産アドバイザーであったし、19世紀末にエドワード7世の財政顧問としてロンバート街で活躍したアーネスト・カッセル卿等はとても有名な存在です。
 もちろん日本でもお金持ちには財政顧問的な位置づけの人はいましたがあまり歴史には登場してきません。日本はごく最近を除いて常に産業資本が不足がちであった事と資産家はどちらかと言えば不動産に傾斜して未発達な金融資産だけでで食べる貴族的な人が多くは無かったからでしょう。

本日の日経新聞13版7ページ【国際2】の「米金融規制改革法の衝撃」の記事の中でJPモルガンの推定としてこう言う一文があります。
 「欧米の規制改革でグローバルに展開する金融機関の自己資本利益率(ROE)は5%台に下がると言う。かつての20%超と言う高い収益率は過去のものになる」
なるほど5%台と言う数字はともかく趨勢としては全く反論はありません。

しかしこの記事を見た時に私が思い描いたのは別の要因についてでした。 要因と言うのは何故金融機関のROEが下がるのかと言うクェスチョンに対するものです。

90年代後半から米国ではハイネットワース(富裕層)向けの小型の投資顧問会社によるFPビジネスが都市郊外の住宅地を中心に発達しました。ここで言うハイネットワースは日本円で言えば50億円以上の資産を持っているような大金持ちでは無く、普通に金融機関等に勤めている年収で言えば2000万円から5000万円ぐらいの層が対象です。彼等は一般的に仕事に忙しいので普段ネットで自身の資産を売買する時間的な余裕が無いと考えている人たちでした。ニューヨークで言えば地域的にはホワイトプレーンズやリッジウッド、モンクレアーなどの金融関係の人達が住む高級住宅街の地域です。

2000年の初頭には日本でも証券仲介業と言う新しいテーマがありましたので仲介業の有力潜在顧客でもあるこういった郊外型の小型投資顧問会社を調査目的で何社か訪問して話を聞く機会がありました。

この時に日本でもこうした郊外型の小型投資顧問会社が根付くだろうかと考えると以下の大きな違いがありました。

1)日本でも青色申告があるとは言えサラリーマンの基本は会社天引きであるので家計の事務処理をさして手間だと思っていない。人の手を煩わせる(出費する)事も無いだろう。

2)日本でフィーを支払って国債で運用されると何も残らない。

 こうした投資顧問会社は有価証券売買の委託手数料依存よりはフィーを徴収する事で顧客との利益相反を克服している。つまり投資顧問会社が手数料に依存すると長期投資とって最悪のコストである売買コストを積み上げる誘因が常に存在してしまうから最初から一定のフィーを頂戴して売買は必要以上には極力行わないようにすると言うものでした。
 この手の会社の顧客層は30代後半から50代で知的レベルも高い職業の階層が中心でしたから、大学でファィナンスの単位も取っていますし、効率的市場仮説もアセット・アロケーションについての知識もある程度はあると説明されていました。

さてここで問題となるのは期待収益率なのです。
株式が10%近くの期待収益率を持ち、債券利回りが4%から5%ある世界ではFPに年率1.5%のフィーを支払っても投資家としてはベネフィットが充分にあると考えられますが、株式の期待利回りがほぼ0%で長期債利回りが2%を越えない国で1.5%のフィーは割に合わないと言う事です。つまり払いたいと思う人はあまりいないと言う極めて単純な事実です。

日本の金融機関のROEは低いと長い間指摘されてきましたが、デフレの世界ではフィーは上げられません。ですから手数料に走る事にならざるを得ません。
期待収益率が2%も無い債券型ファンドを3%の手数料で販売するなどと言う事が普通に行われてきたのです。これではビジネスが伸びる訳はありません。

昨日のバーナンキの議会証言では否定していましたが、どう贔屓目に見てもアメリカはデフレの影が忍び寄っています。

10年債利回りとGDPプライスインデックス

data:FRED

期待インフレ率 10年債利回りマイナスTIPS


逆に言えば2000年代に入りそうした傾向が拡大したからこそレバレッジを上げて収益率を稼ぎに行ったとも言えます。

まわりくどくなりましたが、金融規制改革法案とは別にデフレは金融機関のROEを低下させます。それは金融資産のリターンは結局名目値でしかないからと言う身も蓋も無い話だからです。

日本の機関投資家でアメリカがデフレに陥いる可能性が高いと考える人は増えてきているように感じます。


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