2010年7月25日日曜日

インセプション


あなたがこの世に存在しようとしなかろうと、人の知覚とは関係無く物体の世界が存在し、人は五感をとおして直接的に物を知ることができる。

しかしこの場合の五感である人間の感覚とは信頼できるものだろうか?
地平線近くの太陽や月は大きく見えるし、甘いケーキの後でフルーツを食べれば苦いと感じる事もある。

確かに間違いや錯覚はあるが、確かなものもあるはずだ。あなたが今触れている目の前のキーボード、時計、携帯電話などは確かなものだろう。

それでは夢はどうなのか?もしかするとあなたの生きている今は夢の中では無いと言い切れるのだろうか?

あるいは邪悪な科学者によって大きなガラス容器に閉じ込められたあなたの脳が様々な情報をインプットされているだけかもしれない。実際にはあなたは通勤電車にも乗らず会社にも出勤していない。ガラス容器の中で管理されバーチャルな世界の中で人生を全うするだけなのかもしれない。
脳の中だけで課長になり部長になり社長になったのかもしれない。あるいは爆弾を身体にくくりつけて自爆テロを決行したのかもしれない。

そうだと分かっていればもっと大胆な人生を送れたかもしれない、美人すぎる市会議員が夢に現れた時のようにおっぱいを触っておけばよかったかもしれない。どうせガラスの容器の中だけの人生だ。

こうした観念だけに頼ったものの見方、つまり自分の知覚するものが世の中の総てであると言う考え方を持つ事を独我論と言うそうだ。現実の世界は夢の中では無いのに独我論では世の中は自分の観念だけの世界だと考えてしまうので恥と言うものを感じ無くなってしまう。悪いことをしても誰にも咎められる事は無い。実際に世の中の犯罪者にはこういった人間も多いのだろう。しかし自分がガラス容器の中の存在である事が知覚できないのであればそれは今生きていると思っている普通の人生と何ら変わりは無い。わいせつな行為は法によって処罰されてしまうだろう。もちろんそれはガラス容器の中だけの話かもしれないが。

最近の研究では夢を見ている事を意識しながら見続ける夢がある事もわかってきている。「明晰夢」と言うそうだ。

映画「インセプション」は夢の中の映画だ。夢をコントロールできる技術者がいる事が前提となっており、夢を使って人の潜在意識に情報を植えつけるビジネスをする者が主人公となっている。

夢の中では実社会での1時間が五分間で過ぎてしまう。つまり12分の1と言う事だから夢の中でもう一度夢を見ると144倍の時間が使える、さらにそこで夢を見ると1728倍。1秒間の動きの中で約30分間の時間を使う事が可能になる。

但しここでも問題は自分が夢の中なのか現実の世界なのかが分からなくなってしまう事だ。
制作費150億円もかけたこの映画。私は少し疑問を残してしまったのでもう一度見る必要がありそうだ。もちろん観念的なスクリーン上の世界の話であるから全く急ぐ必要は無いのだけれど。

参考文献 :哲学の基礎 Nigel Warburton




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