2010年8月8日日曜日

ボローニャの夕暮れ


「人はどういうわけか、非常に個人的な物語を通して、自分の身の回りに起こっている、似たような出来事に想いを馳せるものなのです」 イタリアの名匠プーピ・アヴァーティ

1930年代後半の北部イタリア、ボローニャ。 ムッソリーニによるファシズムの影響下にある平凡な市民の物語です。風貌も冴えず真面目なだけの高校教師の父と美しい母親、母親に対する憧れと劣等感から精神に異常をきたす娘ジョバンナ。 ジョバンナは父の高校に通っています。父は娘を溺愛し、母は親になりきれず父の友人である隣人の警察官に想いを寄せている。この母が警察官に想いを寄せている暗示は前半で3回ほど挿入されていますがもしかしたら分かりにくいかもしれません。

そんなある日、学校で殺人事件が起こりジョバンナが犯人であると言う結論が出てしまいます。彼女は自白し逮捕されますが、精神に異常があると言う事で責任能力が問われ無罪となり精神病院に送られます。病院での分析ではジョバンナの病の原因は「母親が父以外の男に想いを寄せている事である」と言われてしまいます。教師の仕事を追われた父は、奥さんをその友人に託し自分は献身的に娘につくすと言う物語。もちろん物語はその後、解決に向けて収斂していきます。

原題は「ジョバンナの父」、邦題は「ボローニャの夕暮れ」ですが、画面全体がセピア色で進行していくので邦題に違和感はありません。

父も母も、隣人の警察官も悪い人は誰もいない。娘が「殺人を犯す」と言うとんでも無い事件でさえ父は受け入れ不器用に生きていきます。ファシストが国を治めようが、空襲で建物が壊されようが、戦争に負けようが父の生き様は何も変りません。そうした中に人間の持つ温もりがさりげなく、美しく、控えめに表現されていて、殺人事件を取り扱っているにもかかわらず不思議なほどハート・ウォーミングな映画に仕上がっています。

ジョバンナは陰惨な殺人事件を本当に犯したのでしょうか? 私はそれをずっと納得できずにいました。それだけに最後まで映画の細かいカットも注意深くトレイルせざるを得ませんでした。

巧妙に配置された仕掛けが質の高い短編小説の読後感のような味わいを与えてくれます。さらに小道具の30年代イタル・デザインのバス、トロリー、小さな自動車や街のテイラーなどが小気味よく配置され中世の香りを残すボローニャ、プーピの愛するボローニャが美しく表現されておりました。

強烈にお薦めと言う訳ではありませんが、こう言う映画を見た日曜日の午後は結構幸せな気持ちになれます。

ボローニャの夕暮れ - goo 映画
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追記:銀座シネパトスでは夏休み特撮映画特集をやるそうです。

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