2010年8月12日木曜日

実質実効為替レート

米ドルがきわどい位置で取引され東京株式市場に大きく影響を及ぼしています。朝起きて円高だと条件反射的に今日の株はダメだと考えてしまいますよね。さらに「84円の水準がどうだとか、80円は再び割るのだろうか?」とか、「当局は何をやってるんだ」等々賑やかな事になる訳です。

為替介入と言っても実際の日本企業の取引は米国ばかりではありませんからユーロや他通貨も気になるところです。
そもそも「円ってそれほど高いの?」「へたに介入して世界からはどう見られるの?」と言う問題もありますから、本当の円の位置と言うものは考えておく必要がある訳です。

日本の輸出企業にとって、円は高すぎるのかそうで無いかは対ドルだけでは無く、ユーロもその他の通貨も通貨別の貿易量を考慮する必要があります。
そこで貿易取引のウェイトで各通貨を計算し指数化した実効為替レートと言う存在がクローズ・アップされる事になります。

貿易量を考慮したとして、ここでもう一つ問題があります。
ここは仮にの話で、例えば10年前に$1=¥100だったとしましょう。
日米の消費者物価の差が年率1%だったとすると、つまりアメリカのインフレ率が日本よりも年率1%高いとすると、ドルの購買力は円に対して毎年1%ずつ下がって行く事になります。
10年後の同価値のレートは10年分ですから、0.99の10乗。
¥100 x (1-0.01) ^ 10 =¥90.4382
ドルと円の購買力からみると¥90が10年前と同じ為替レートと言う事ができます。購買力平価の考え方ですね。デフレの国の通貨は高くなるはずです。

ドルやユーロ、ウォンや元などの通貨を①貿易取引量でウェイトをかけてさらに②各通貨国とのインフレ差を調整したものが実質実効為替レートとなります。
世界に向かって「日本の為替レートは不当に高い」と大きな声で文句を言うにはこのレートを使うのがフェアと言うものでしょう。
データは日銀HPでも取れますし、BISのHPでは世界中の通貨の実質実効為替レート(指数)が取得できます。


これで見ると1995年頃から円安傾向にあって、特に2003年からの東京株式の強気市場は急激な円安下に成立した事が分かります。
そして現在の円の水準も1985年以降ではありふれた平均的な水準でしか無いと言う事です。
「円高で死にそうだ!」とアピールしても説得力はどうなんでしょうか。
円ドルを考える時に80円割れは限界だとか、あまり思考に制約を付けておかない方が良いかもしれませんよ。

下のチャートは日銀のHPからのデータです。日銀の実質実効為替レートと円ドル相場を比較しようとしたものです。
ご存知のように円ドル建値は$1当たり何円となっていますのでグラフの向きが反対になってしまいます。そこで円ドルは1990年=100として逆数を指数化してあります。

2002年までは実質実効レートとドル相場は連動していましたがその後は乖離して行きます。貿易相手はアメリカだけでは無くなったと言う事でしょう。ドル相場だけ見れば円高ですが各国との貿易量とインフレ格差を考慮すれば実質的に現状の為替レートは円高とは言え無いと言う事になります。

もちろん傾向としては円高に見えますけれど。

ここに出荷先別日本の輸出高のグラフが出ています。2002年から大きく変化を見せます。


2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

実効為替レートの新聞記事が目につきますが、なかなか理解できません。この解説を読んで、なるほどと思うところが大です。
ありがとうございます。
 2011/3/23 hide

Porco さんのコメント...

コメントありがとう。