2010年8月17日火曜日

名目値と実質値


もしもあなたが、ファイナンシャル・プランナーに相談して10年後、20年後のライフ・プランを設計するとしたら、インフレ率を無視できるでしょうか?
ここのところ日本はデフレの状態ですからインフレと言うものに対して意識が薄くなるのは仕方無い事なのかもしれません。しかし老後の資金と言う意味ではインフレ率は大きな問題です。一時のジンバブエ・ドル建てで資産価格が上昇したとしてあなたは喜べるでしょうか?インフレ率10%の世界では株式リターンが10%では何にもならないのです。

これはいわゆる名目と実質の問題です。株式市場は名目値の株式指数を指標にして普段から取引が行われていますので、実質値がいくらであるかなど直接的にビジネスに結びつく訳ではありません。したがって普段から意識される事は無いのですが、金融の世界ではこうした実質値の研究は古くからあります。当ブログでは頻出しますがエール大学のロバート・シラー教授はReal (実質)Indexとして株式指数の計算値をHPで公開しています。シラー教授は最近よく使われる不動産指数であるケース・シラー指数を考案した人です。

ここではインフレ率の調整にCPI(消費者物価指数)が使われています。SP Comp(SP500)をCPIで調整していきます。CPIの数値が2倍になればReal SP Compの数値は2分の1になると言う事です。CPIが生活実感としてインフレをうまく表わしているかどうかの議論はここではおいておきますが、ベストの一つであることは間違いありません。またここで使われているインデックスは配当再投資を考慮したトータル・リターンではありませんので念の為。
下図は1871年からのインデックスの様子です。 グラフはクリックすると大きくなります。


これでは細かいところが見にくいので1940年以降に絞って見てみます。
70年代のインフレ期には株式指数が横這う中、実質値は大きく下げています。ベトナム戦争後のアメリカが荒廃していた時期です。
また最近でも実質値ベースではSPは2000年8月に既にピークを打って下落している事が分かります。実質値での株式は目減りしています。
念の為に書いておきますが普段のアセット・アロケーション等でインフレに対する考慮が必要で無いのは債券など他の資産も名目値で取り扱っているからです。

何故わざわざ「名目値と実績値」のエントリーを立てたかと言うと、実質実効為替レートに関する新聞記事等の表現に少し違和感があったからです。
実質実効為替レートは米国だけでなく途上国の通貨を計算に繰り入れているので低くなる」だけでは無く「インフレ調整もするから」の方がウェイトが高いからです。

インフレ格差だけで言えば95年比で米ドルは対円で4割ほど購買力が落ちています。したがって当時の1ドル83円は今では1ドル50円と同じだと言う事、逆に今のレートを当時の購買力で調整すると今の相場は1ドル140円ぐらいの水準だと言う事です。自分でレートを発表しているぐらいですから日銀はこんな事は分かっています。 マスコミやポピュリズムの政治家が円高対策はどうするのかと騒ぎますが、今回は産業界からあまり悲鳴は上がっていません。この程度の為替レートでやっていけない企業があるとすれば多分本当にやっていけない退出すべき企業なのでしょう。

また仮説として、「円は回復不可能な財政赤字によって既に売られている」とも言えるのかもしれません。あまり経済に先入観の無い菅首相はこの事をG20で教えてもらったのかも知れませんね。この前提でいけば円が80円の壁で押し戻されて円安に向かう事は決して喜べる事では無いのです。

最後にシラー教授のHPからPEと長期金利の関係を示したグラフをそのまま付けておきます。アメリカのPEの歴史的な水準について参考になると思います。




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