2010年9月3日金曜日

学生さんの質問への答え


学生さんの質問
為替のエントリーを読ませていただいて『今現在の為替水準はそれほど円高でもない』のだろうと考えたのですが、経済産業省ヒアリングの『1ドル85円が継続の場合、製造業の4割が移転』というのを読んで、そういう結果を出すようにヒアリングしている部分もあるのだろうとは思うのですが、差異を考えてみた所、競合通貨との関係性なのかな、と思いましたので質問させていただきました。経済産業省のヒアリングについては、どのように考えてらっしゃいますか?

質問ありがとうございます。長くなりそうなのでエントリーを立てました。
僕が為替のエントリーを書いたのは、一部議員が対ドルでの為替介入を声高に唱え始めた事に反応したからに他ありません。
そもそも日本を初めG7諸国は随分以前から中国人民元の人為的な通貨防衛策に対して通貨の切り上げを要望してきました。そうした国際政治の環境下で日本が単独で円売り介入を実施する場合には各国が容認できる適度な(納得できる)水準と言うものがあるのではないか?と言う投げかけのつもりでした。僕はそれを80円程度ではないかと見積もっています。そうした一部議員の攻撃対象は何故か日本銀行になっていますが、此のレベルでの介入は基本的に「政治的」な問題では無いかと思います。日銀はオペレーションを担当しますが介入の意思決定は政治判断のはずです。したがって叫弾すべきは政府のはずなのですがその本質を見ないヒステリックさには腹立たしいものがありました。もちろんそうした動きが現在の小沢対菅と言う対立軸になって現れているのかもしれないと思っています。

日本は戦後の発展段階で圧倒的に優位な交易条件の下で当時隆盛であったアメリカのコンベンショナルな家電業界をほとんど完全に駆逐し、後に自動車産業さえ完膚無きまでに叩き潰してきました。アメリカはもちろん労組レベルの抵抗はありましたが、第二次産業の構成比率を減らしつつ自身の産業構造を変化させる事で対応してきた事を日本も考えなければなりません。そういう成長段階を経験しながら、日本はいざ自身に災難が振りかかると既得権益の保護が行き過ぎて産業の新陳代謝を起こせないでいます。これはとりも直さずそうした環境を整えるべき政治家の責任であるはずなのですが、その事には触れずあまつさえ構造改革のベンチマークであるべき郵政を保護し(世界は注目しています)、構造不況の責任を日本銀行に押し付けている構図に見えてしまいます。これは生産的な議論の姿ではありません。そういうものは是非どこかのチェーン店の居酒屋ででもやって欲しいと思います。街の古い居酒屋では雰囲気が壊れるのでお断りです。したがって私のエントリーはそうした政治的な動きへのひとつの投げかけのつもりでした。


出荷先別の日本の輸出高のグラフを見てのとおり、2000年当時と比較して現在ではアメリカと中国の位置関係はすっかりひっくり返っています。たとえ貿易決済通貨が米ドルであっても実質実効レートのように構造的な真の姿を捉えるべきで、知り合いの為替ストラテジストなども介入ポイントの模索には円ドルのグラフでは無くOECD・PPPか実質実効レートのグラフをベースに考えるのが一般化しています。(一般化は少し言い過ぎかもしれませんが)

前置きが長くなってしまいましたが、ご質問の「経済産業省のヒアリング」、もう少し絞れば『1ドル85円が継続の場合、製造業の4割が移転』についてどう考えるのか?と言う質問だと思います。 僕もOECD・PPPを基準に対ドルだけで言えば85円は円高であって110円ぐらいが適当なのではないかと思っています。従って85円で製造業の4割が移転と言うのは彼等も目先の採算が合わないのでしょうから納得がいきます。しかしながら趨勢的にPPPが円高に向かっている以上、たとえ今円ドルが110円に戻ろうとも業種によっては(労働集約性によって)構造的にもいつかは起こってしまう事象なのだと思うのです。従って僕としては日本から移転しなくてもやっていける業種が成長する必要があると単純に考えてしまうだけなのです。

Porco

1 件のコメント:

学生さん さんのコメント...

ありがとうございます。そう考えると、ユーロに加盟してマルク為替から逃れたドイツは賢いですね。ギリシャだとかの問題はあるにせよ。アメリカの産業転換史は面白そうです。ただ、産業転換する場合は既存企業が転換するか、新規企業が転換するかだと思うのですが、日本の場合は現状だとあまり新規の会社を起こすインセンティブが少ないので、産業転換に時間がかかりそうですね。あと、アメリカの場合はITという転換先がありましたが、後追いだとアメリカ以上の何かが必要になるわけで転換先に関しても、なかなか難しそうですね。