2010年9月5日日曜日

株式分割払込制度


今日は調べ事があって図書館で古い新聞を漁っていた。目的はThe Statistという第2次大戦以前まではThe Economistと並ぶほど権威があった英国の経済雑誌の記事だったのだが、結局別のものを見つけて読み込んでしまった。

それは明治時代の話だった。
大阪の高等女学校を卒業したA子さんは、東京帝大法科に通うB男君を以前から慕っており、どうしても東京に出たかった。A子さんの家は非常に裕福な名家なのでご両親は激しく反対した。反対すれば余計に想いはつのる、A子さんは東京まで出てきて自分で働いて暮らす事になった。そうは言っても勉強中のB男くんのお邪魔になるのではないかしら?と連絡は取らずにいた。そんなある日A子さんは風邪をこじらせて寝こんでしまう。薬を買う金も無くなってご両親に送金を頼むが、両親としては「お金を送らなければそのうち困って帰ってくるよ」と放っておいた。世間なれしないA子さんは仕方なく近所の人からお金を借りるがこれがとんでも無い悪党だった。
A子さんは借金のカタに浜町の「悪の魔窟」(多分娼館)へ売られてしまい処女を奪われてしまったから大変だ。しかしながら適応力があると言うか、すごい美人のA子さんはその世界ではすっかり評判になり大物のお客もついてくるようになる。連絡が無い事に心配した両親も人づてに色々調べているとどうもその評判の女がそうでは無いかと東京へ出てくるが、浜町の「悪の魔窟」のありかはマル秘会員制だったのだろう、これが何処にあるのか、なかなか分からない。それでもなんだかんだで結局両親は見つけて大金を支払って身受けして大阪へ連れて帰ると言う話だった。最後に「A子さんの幸せを祈る」みたいな話だった。簡単に言うとね。でもその魔窟は浜町の何処にあったんだろう?

それで日曜日に図書館まで来てどうして明治時代のスポニチみたいなもの(ちなみに新聞「日本」の記事)を読んでいるのだろうか?と少々自己嫌悪に陥ったわけだが、その後ハッと我にかえり、お目当ての記事は大阪毎日新聞に掲載された翻訳記事を発見してなんとかめでたくコピーができた。この記事はポーツマス条約でロシアから賠償金を取れなかった為に日比谷焼打事件等を起こしている日本国民に対して、日露の戦費見積り、米南北戦争、普仏戦争、ボーア戦争などの戦費と比較して「日本のみなさん、君たちは決して損はしていない。それよりも条件にこだわる事なく和平を選んだあなた達の国は立派だ」と言う趣旨で1905年の9月9日号に書かれている。日比谷の焼き討ちが5日だった。

そんな寄り道をしているから時間は既に午後2時になって、「そう言えば吉野家が『おそば』を始めたなあ」、と炎天下吉野家の出す「おそば」とはどんなものかと一路吉野家に向かったワケだ。「味の吉野家、味の吉野家、牛丼一筋80年」って歌いながら歩いていたのかもしれない。なにしろ牛丼一筋なんだから席に座るやいなや「並とたまご」と条件反射で発注してしまった。銘柄間違いの誤発注だ。壁のメニューを見ると「おそば」があり、「お前は一体何のために吉野家まで来たのだ?」と問いかけていたのだけれどいまさら面倒だからもうイイヤと思って結局紅しょうがをたっぷり乗せて牛丼を食べてしまったよ。よく考えると僕は牛丼を食べたいわけでは無かったのだ。

そんな事があって家に帰り手に入れた史料を整理してTwitterを見るとこれだ。
「これ読めってか」の対象はこれ、
株式分割払込制度と企業金融、
設備投資の関係について:1930年代初において
株式追加払込が果たした役割を中心に
南條 隆日本銀行金融研究所企画役補佐/粕谷 誠東京大学大学院経済学研究科教授

26ページもある学術論文だ。さんも読むのは大変だったんじゃないかな?と言うか読む必要あるのか?これ。失礼、この論文。

なるほど設備投資関数のクロスセクション推計によって株式分割払込制度は不況下の設備投資に寄与しているんだなと。有り難く読ませて頂きました。
それでINPEX公募の件との関係は?と考えると多分「INPEXの公募にも株式分割払込制度があれば良いのに」と言う趣旨なんだと推察。

さて上記論文で欠けている視点がある。それは投資家サイドからの視点である。あるいは募集販売技術と言っても良いかもしれない。もちろん論点が違うと言えばそうなんだけどね。
例えば1000円の公募株があるとして申込金200円、2ヶ月後に200円、その後2ケ月おきに200円と合計5回で払い込む分割払いとしよう。全部で8ヶ月かかる。
株式は1000円で売買するとすれば最初の2ヶ月は200円で1000円の物を売買できる。つまりレバレッジは5倍だ。オプションなのだ。20%上昇して1200円にでもなれば投資金額は2倍になる勘定だ。これならばもう少々ヘボな銘柄でも投機家が集まってくるのでディールは失敗しにくい。払込みが進むにつれて株式は投機家から投資家の手へと移っていく事になるが、普通は株価がこなれて行くのだ。

このやり方は19世紀からつい最近までロンドンではごく普通に行われていた。
1904年にロンドンでポンド建て日本公債を発行した時も、93ポンドの発行価格に対して申込時に5ポンド、割当確定で15ポンド、その後25,25、23ポンドと順に払い込む手法だった。その時同時募集したニューヨークでは一括払込だったのだ。 つまりこの手法の発行サイドからの使用目的は投機家を集める事によってディールを成功させる事にあったのだ。投機家から見ると非常に買いやすい金額でしかもレバレッジが効いている。最初はプレミアムをたっぷりつけて渡してやる。後で誰かが残りを払い込むのだ。
80年代にサッチャー政権による英国国営企業の民営化があった時、ブリテッシュ・ガスやブリトイル、ロールス・ロイスなど日本で分割払いによるIPOを実施して馴れない投資家を大混乱に陥れたのはまだ記憶に新しい。日本で後で払い込む事になったのは仕組みのよくわかない投機家だったからだ。


追記:今週のエントリーはすべて受身だった。

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