2010年9月26日日曜日

映画「おにいちゃんのハナビ」




400年の歴史を持つと云う新潟県小千谷市片貝の花火は、浅原神社の例大祭で、花火はこの神社への奉納だそうである。
つまり個人がおばあちゃんの古稀を祝う為に花火を奉納したり、家を初めて買った若い2人がそのメモリアルに寄付したりと、東京の花火大会のように何処かの誰かが打ち上げているのでは無く、地区の人達が1発1発意味を込めて打ち上げている。従ってこの町では花火を打ち上げる前に誰から誰への花火なのかひとつひとつにアナウンスがある。その中に特に伝統として中学校の同窓会が卒業年毎にそれぞれ組み(成人会)を組織して20才や還暦などの節にリユニオンして企画して打ち上げる風習がある。こういった横の繋がりの強い地域社会は住みよいのだろうなと思う反面、外からの移住者、よそものには厳しいものなのだろう。

こうした前提で、喘息持ちの妹の治療の為に東京からこの町に引越してきた両親と兄妹の一家が物語の主人公になっている。社交的な妹は地元に直ぐに溶け込んだが、中学の終り頃に転校してきて新潟市内の高校に進学した兄は地元の友達がおらず、高校卒業後には就職も進学もせず引きこもりになってしまっていた。つまりこの町のビッグ・イベントである花火とは無縁な生活を送っていたのだ。そこに白血病の治療で入院していた妹が自宅療養に戻ってくると兄の引きこもりは一層悪化していた。

「引きこもりか何か知らないけど、どーなのよ人として」

妹は兄を連れまわし成人会に入会させ新聞配達をさせて社会復帰すべく手助けするが白血病の悪化は止まらずに再び入院してしまう。そんな妹の為に兄は一発奮起して花火を打ち上げてあげると云うストーリーである。また本来そうした他所者には厳しいはずの町の人も本当は皆優しかったのだ。

白血病の妹に、引きこもりから立ち直る兄。一見ベタな設定であるがこれは実話を元にしたストーリーで2005年新潟中越地震後の被災地を映したテレビ・ドキュメンタリーが制作のきっかけになっている。 監督はTVドラマでのキャリアが長い国本雅広。父親には大杉漣、母:宮崎美子、兄:高良健吾、妹:谷村美月。成人会のリーダーには舞妓Haaan!の駒子役の早織、学校の先生役にはこんな先生がいたらクラスが明るくなるだろうなと言うような佐藤隆太。高良、谷村共に真摯な演技が心を打つ。片貝の四季が映し出され、背景と言えば新潟市の繁華街が一部入るだけで片貝の町から殆ど出ないが、設定を少し変えれば世界中何処ででも通用するストーリーだと思う。

欲を言えば最後の花火のシーンだろうか。映画の起源が「見世物」である以上、一貫した音楽を背景に切れ目を作らずにもう少し「くどめ」にしてくれればもっと良かったかとは思うのだが、僕としては途中で泣かされ過ぎて、ラストでは「もう充分だ」とすでに涙も枯れはてていたのかもしれない。

これはお奨めの映画です。




0 件のコメント: