2010年10月6日水曜日

2020年、日本が破綻する日


戊辰戦争に敗けた越後長岡藩は河井継之助の生涯を描いた司馬遼太郎の小説「峠」で有名ですが、同藩はこの敗北によって74000石から24000石にまで減知されました。
当時同藩文武総督であった小林虎次郎は「学校創設による人材育成こそが敗戦国の復興にとって肝要である」との考えの下、長岡の四郎丸村にあった昌福寺の本堂を借りて、国漢学校の前身を発足させます。 その後長岡藩の窮状を察した支藩である三根山藩から米が百俵支米として届けられます。
困窮する藩士達は米の分配を期待しましたが、虎次郎は「国が興るのも、街が栄えるのも、ことごとく人にある。食えないからこそ、学校を建て、人物を養成するのだ」と主張して米を売り書籍や用度を購入して国漢学校を本格的に開校します。
これが有名な「米百俵」の話で小泉純一郎第1次内閣の所信表明演説で引用され当時すっかり有名になりました。小泉元首相はこのわかりやすい逸話を元に郵政改革を中心とする行政改革を推し進めて行きました。
残念ながら今ではその面影を探すことさえ困難な政治的状況にあります。


この本は題名に「日本が破綻する日」が強調されていますが、著者の書きたいことはもちろん「危機脱却のプラン」のほうです。

2009年の一般会計+特別会計の内訳の38%が国債費の支出であり、33%が社会保障関係費で占められています。この2項目の削減が困難である以上残りの3割の部分をいくら削減しても借金返済に必要な原資の確保はそもそも無理であると簡単明瞭な事実を前提に日本の破綻が間近である事を説いていきます。そう言えば日露戦争後の国家予算が3割軍事費、3割国債費でした。もっとも今ほど財政赤字は累積していませんでしたが。

「国債の95%が国内の家計からの債務であるからギリシャのような事にはならない」と云う理屈も現状のまま債務が増え個人金融資産が横ばいで推移すれば2020年にはこれも食い潰してしまうのでその時には破綻するということが2020年の根拠としています。 私は実際にはもう少し早い時機に起こるだろうと考えています。
では何故現状の金利はこれほど低いのか?「危機が近いのであれば金利は上昇しているはずだろうに」、著者は「相転移」の話で説明しています。つまり水は氷点まで液体であるがそれより下がると凍りついてしまうし、沸点をこえれば蒸発してしまうのです。危機(暴落)は突然訪れます。ギリシャもそうでした。
こう言った話はこれまでも類似本がそれこそたくさん出版されているのですが、この本は少し趣が異なります何故なら著者は具体的な対策を提示しているからです。

現在は増大する社会保障費の不足分を国債発行によって埋めて赤字が増加しているので、社会保障費を別の予算として独立させて管理すると云うアイデアです。
尖閣諸島でジャブを喰らっても、お金が無ければ対抗できません。競争力を増す新興国に対抗すべく基礎研究費や教育費を増額しようにもドンブリ勘定で一律削減などしていては次世代にますます迷惑がかかるでしょう。

ここでは現在の賦課方式によって若い現役世代だけに負担がいかないように「事前積立方式」を採用して必要な費用を公債として発行し事前に認識して負担を分散させる方式が提案されています。そしてその為に「世代間公平基本法」を制定しましょうと結んでいます。そもそも現状の選挙制度では民主主義の悪い側面が出て年寄りが有権者のマジョリティーである限り世代間に公平な社会保障制度は政治家によって選択されないと云う問題提議がありますが、それを排除するための方策としての「世代間公平基本法」をこの環境下で制定できるのかと云う自己矛盾に落ちいってしまっているのは残念なところです。
それでもここまで具体的に対処法の書かれた書物は無かった(私の知る限りですけれど)と云う点でこの本は読む価値があります。現状の「年金運用のデータが研究者に開示されていない」など数多くの詳細な問題点や「消費税を上げるなら一度に上げた方が良い」等トピックごとに最新の学説を簡単に紹介しているなど議論のベースになる知識がカバーされていて「なるほど」とうなずける点が多いと思いますよ。
これまで聞いたどの政党の政策よりも具体的で現実味がありました。


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