2010年10月18日月曜日

ハーバードの「世界を動かす授業」


「日本の課題は明白である。世界の趨勢がグローバル化に進み、『国々が競争する状況』のなかにあって、内向き指向に傾斜している。政治面ではポピュリズムに終始し、その結果、財政構造の硬直化、赤字幅の拡大、巨額な累積債務に苦しむ国となってしまったにもかかわらず、財政再建の道筋はまったく示されていない。財政再建に取り組むほか、安全保障、優位な外交展開、資源・エネルギー開発、科学技術、教育、ベンチャービジネスなど官民をあげて世界に立ち向かう成長戦略の策定と実行が課題であろう。」

ハーバード・ビジネス・スクールのプログラムに既に実業界で活躍しているビジネス・リーダー向けのAMP(Advanced Management Program)というものがある。その中のBGIE(Business、Government and the International Economy)の講義を実際に授業を受けた共著者の仲條氏が日本の読者向けに構成しなおした本である。
長い講義を約300ページ程の分量にまとめてあるので、世界のエグゼクティブが「世界の動向」に対してハーバードで何を学ぶのかのブリーフィングとなっておりコンパクトな内容にもかかわらず興味深い視点をいくつか発見することができる。また各国の状況も地域別にまとめてくれているので普段ブローカー発信の「インドの状況」や「ロシアの状況」に馴れてしまっている私などには良い刺激になった。普段証券価格だけを見ているよりも想像外の不確実性が高い事がわかるだろう。グローバル投資家は目を通しておくと後が楽になるだろう。

あまりにも短くまとめているので例えば日本の問題は、「リカードの中立命題:財政政策面で赤字を出し続けると、いずれ増税となることを理解し支出を抑制する態度をとる」で片付けられている。しかし却ってこのほうが良いのだ。様々な見解があろうともAMPに参加するような世界のビジネスリーダー達は大枠ではこう見ている、あるいはこう教えられていてコンセンサスは形成されているのだから。アメリカの累積債務問題も私が考えていたよりも大きな問題であったし、インドの政治状況も決して楽観できるものでは無い。

NHKの「ハーバード白熱教室」でブームとなりその著書もベストセラーとなっているマイケル・サンデルの「これからの「正義」の話をしよう」も読んだが、読者の興味はサンデルのコミュ二タリアリズムに対する評価がどうであるとか、彼がロールズの批判者であるとかでは無いだろう。今現在この本が何部売れているのかは知らないが手元の本は初版から三ヶ月で既に53版になっている。ベンサムがどう考え、カント、ロールズ、アリストテレスと体系づけられ、こういう手順で政治哲学は考えることができるのだという知識が新鮮なのである。つまり今までは勉強の仕方を知らなかったと考えさせられるのだ。なんだこう教えてくれれば良かったのにと。

世界の経済学部ランキングでは日本からは152位にやっと東大が入る。また最近のノーベル賞でも受賞する人は米国の大学への留学経験者が圧倒的だ。もしこれらに日本語と英語という言語の問題があるにせよ、「国々が競争する状況」の中にあっては国の競争力として放置しておける問題ではないだろう。

私は門外漢なので細かい制度や最近の状況は知らないが、思い切って予算を組んで毎年5000人ぐらい国費留学生を出してはどうだろう。一番高いビジネス・スクールの学費が2年で16万ドルぐらいなので、多めに見て1年800万円掛ける5000人で400億円ほどだ、長く見て3年としても1200億円にしかならない。ダム工事と比べれば効用は明らかだろう。5000人も枠があればMBAに限る事もない、芸術や工芸なんでも良いだろう,国もアメリカに限定する事もないし、言語も多様で良いのだ。卒業すれば返還の必要無し、退学は50%バックでどうだろう。対象年齢も35歳程度まで拡大しても良いだろう。進学校も実用英語教育に力を入れるかもしれないし、サンデー毎日のランキングも横文字から始まるかもしれない。

どの程度が日本に帰ってくるかはわからないが、彼等のグローバルでの強みは日本語なんだからきっとビジネスチャンスとともに帰ってきて費用以上の税金を収めてくれるだろう。いくら日本の大学が優秀であっても「国々が競争する状況」ではそれに適した訓練が必要だろう。明治維新に海外から学んだように内向き指向を変える一番簡単な方法で、思ったよりも投資資金(予算)は必要ないのではなかろうか。

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