2011年1月19日水曜日

実質実効為替レート ③


昨年8月に書いた実質実効レートのエントリーは今でも驚くほど多くのアクセスがあります。グーグルで検索しても多分他にあまりないからだと思います。
そこで折角検索してたどり着いた方にいつまでも8月の古いデータでは申し訳ないので、データをアップデートしておくことにしました。

実質実効レートの解説は8月のエントリーを見てください。ここではそれを読んだ上での話になります。

今回はグラフに中国人民元(点線)も加えておきました。2005年以降は継続的に右肩上がりです。日本の為替介入後米ドルの下落が目立ちます。何だったんでしょうねあの介入は。

グラフ類はクリックすると大きくなります。

前回は日銀の実質実効レートと円ドルを90年=100として指数化したグラフをお見せしました。これは円ドルと実質実効為替レートとの差を認識する為のグラフでした。

今回は逆にグラフのY軸を円ドルに会わせて、実質実効レートのみを指数化してみました。
1990年のBIS実質実効レートが144.98円だったと仮定して実際の円ドルとの相対的な位置関係を見ようとするものです。つまり12月の円ドルは83.33円だけれど、貿易相手の国々のウェイトやインフレ格差を考えると実際の日本の為替っていくらなの?ドルで言えばいくらなの?円高なの?という疑問に答える為の指数です。円ドル感覚で実質実効為替レートを見るためのものです。

この指数を修正Effective Exchange Rate Indices=adjusted EERI=adj.EERIとします。wikiで調べても出てきません今造った造語ですから。EERIの逆数を指数化しただけのものです。



青い線が円ドル、赤い線がadj.EERIです。これで見ると12月末の実質実効為替レートを円ドルの感覚で捉えると132.72円ということになります。もちろん基点をどこにするかで随分結果が変わりますからこの数字の使用には注意が必要です。

しかし、この赤い線のadj.EERIの形はどこかで見たことありませんか?

下のグラフを見て下さい。


これはadj.EERIと円ドルと日経平均を重ねたグラフです。左軸が為替、右軸が日経平均です。
先ず為替だけを見ると2003年迄はadj.EERIと円ドルはほぼ同じように動いていますが、それ以降両者は大きく乖離し形を変えてしまいます。ドルが単独で安くなっています。

為替と株の関係を見ると、adj.EERIと日経平均は2003年以降ほぼ同じ動きをしています。形が似ていると言う意味です。円高になれば日経平均は下がり、円安になれば上昇するのです。

その一方で円ドルと日経平均の関係は希薄になっています。つまり為替として日経平均に及ぼす影響はadj.EERI=実質実効レートの方が円ドルよりも強そうです。当然これは日経平均を予測する際にはドル円を見ているよりは、実効実質為替レートを見ている方が良いということになります。

月次データですから2003年以降96ポイントしか観測できませんが、3つの指標の相関係数を計算して見ました(下表)。日経平均とEERIの相関係数は0.89もあるのです。

実質実効レートは日経平均に大きく影響をおよぼしている。

これですと実質実効レートがいくらになるか予想出来れば日経平均もアラアラ予想できることになります。

実効実質レートの予想が難しいだろうって? 相関係数が0.6の円ドルで予想を立てるよりは余程気がきいていますよ。

ここでは1次回帰式を使って為替水準による日経平均の水準を推定してみましょう。
回帰式の係数はSLOPE関数で、切片はINTERCEPT関数で簡単に計算できます。
そしてここでは指数化したadj.EERIはその都度いちいち逆数を計算する必要があって面倒なので生のEERIの数値を使用します。相関係数はプラスマイナスが入れ替わるだけで殆ど変わりません。

日経平均とEERI(BIS実質実効為替レート)を2003年1月から一次回帰してみると、
Correl=-0.891313、RSQ=0.7944382、Slope=-280.5984、 Intercept=40324.61
これはそのままエクセルの関数になっています。詳しくはWEBで、エクセルのね。

日経平均=Slope x EERI +Interceptが推定式です。

この式を使って2003年から現在までをグラフ化してみると以下の点線ようになります。
点線が上記式による推定値、実線が日経平均実績値です。単純な割によく出来ています。


さて12月のEERI(赤い線)は113.44でした。
これがもし新値をつけて10%の円高に向うなら、124.78
上記計算式に入れると、
日経平均は5,311円=124.78 x -280.5984+40324.61まで下がる。

10%の円安ならば、102.096
日経平均は11,677円=102.096x-280.5984+40324.61まで上がる。

上のグラフの黄色の線がスプレッドですが、現在の日経平均の水準は推定式による水準よりも1700円ほど高いのです。でもこれは心配ありません。よくある事です。これの高安で売り買いするとボロ負けしますよ。

しかし全体相場の先行きを予測する上でこれを全く無視することもできません。
例えば趨勢として実質実効為替レートで円高を予想しながら日経平均高を予想するのは無理があるのです。円ドルであれば円高でも日経平均が上昇する可能性はあるのです。

今後の日経平均を展望するにはドル円の見通しよりも実質実効為替レートの展望が欠かせないのです。つまり貿易相手国の為替とインフレ見通しがより重要だということです。
ゴタゴタと屁理屈を付けても日経平均の動きの9割は為替で説明できるのです。

ここで日経平均推定値グラフを作ってみます。
A.実質実効レートが毎月0.5ポイント上昇する円高→日経平均安
B.実質実効レートが毎月0.5ポイント下落する円安→日経平均高
2つのシナリオです。


シナリオA.=EERIが125ポイントなら5126円まで下がる可能性が高い。
シナリオB.=EERIが101ポイントなら11,861円まで上がる可能性が高い。

誤差も大きいことには注意が必要ですが、取り敢えずこう言う結論は出せるのです。チャート見ても不自然ではありません。これと全く違う予想をするのは少々問題がありますが、一方でこれは過去のデータの延長でしか無いことも重要です。気をつけて下さい。

しかしながら敢えて結論するならば、
円ドルの水準にこだわるよりも実質実効レートの方が株式市場には影響が大きい。

昨年ポピュリズムに染まった政治家が為替介入を望む運動をしていましたが、日本の自分勝手な為替介入は中国や新興国に為替切り上げを迫っていた先進国から白い目で見られたことは記憶に新しいところです。

中小企業の救済を叫びながら、実際には足を引っ張っていたことはちゃんと歴史に残るでしょう。




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