2011年3月27日日曜日

「伝える広報」から「伝わる広報へ」


IRはインベスターズ・リレーションズであり企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向について情報を発信する活動である。最近ではトップ自らが説明会に出席したり重要な機関投資家を訪問する事が一般化しつつある。IRは有価証券報告書のような法定ディスクロージャーでは無くむしろ発行体が投資家に積極的に働きかけることにより経営の透明性を増し長期保有の安定株主を作っていこうという活動でもあるのだ。株主による企業ガバナンスの便益に供する目的もあるだろう。

一方でPRはパブリック・リレーションズであり「企業広報」と呼ばれるものである。wikiを借りれば「個人ないし国家や企業その他の組織体で、持続的または、長期的な基礎に立って、自身に対して公的な信頼と理解を獲得しようとする活動のこと。宣伝活動または広報活動のことでPRと主に呼ばれている。」

企業であればPRは消費者、従業員を含む関係会社、協力会社、投資家、債権者、政府も含めたステークホルダーが対象になる。大きな企業で社会的な影響が大きい企業であればあるほど広報活動は社会貢献の一貫として捉えられるべきものなのだ。もちろんポジティブな意味でである。

昨年、米国におけるトヨタ自動車の大規模リコールが原因で豊田社長が米国議会公聴会に招致されたが堂々とこれに応じたことは記憶に新しい。矢面に立つ社長に従業員の志気は鼓舞されたのではないだろうか。しかしこれは特別なことでは無く社長としての責務のひとつなのである。それでも日本人の社長がはるばる米国議会にまで出席して責務を全うしたことは米国で評価されたのだ。

問題はやはり東京電力である。事件発生後の3月13日以降、社長は表に出てこなくなった。参院常任委員長懇談会は24日に開催され保安院の寺岡信昭院長から説明を受けたが、同時に出席を要請した東電社長からは「多忙」を理由に断られている。他に多数パブリックの前で発言しているのなら多忙による欠席も考えられるが、何も無い中では異常な対応とも言えるだろう。西岡参議院議長は「極めておかしいというより、けしからんことだと思う」と発言した

現在の状況は枝野官房長官が原発事故に関して発言し不安の鎮静に勤めておられるが、東京電力のステークホルダー達の不安は一向に収まる気配が無いとも言えるだろう。先日もTEPCOプラザの前で一般客に罵倒される従業員を見かけた。計画停電への不満だろう。危険な現場で働く従業員も、放射能の影響を懸念する福島県の人達も、電力供給を制限されている東京電力管内のユーザーも、株価下落で不安な投資家も、本来一番状況に詳しいはずである東京電力の責任者(社長)からの発言を待っているのである。それも単に伝えただけでは不十分なのである。伝わる広報が重要なのだ。

2011年3月24日木曜日

東京電力株について思うこと


東京電力の株価が揺らいでいる。
それもそのはずだ。
現時点では既存の株価諸指標は使い物にならないからだ。
だれも今後2~3期の配当など期待しているわけではない。
もはや単なる鉄火場なのかもしれない。

「東京電力の株価はどうですかね?」
と聞かれたが私にはわからないし、多分聞いた方もそれほど確かなものを期待しているわけではないと思う。私としては「株価の居所は多分0~1000円程度の間で、被害状況に応じて上値が切りさがるのではないか」と答えている。あるいはもっと上値があるのかもしれないが「そうは思わない」というだけの根拠だ。

福島原発の停止だけでも代替に火力を使えば年間5000億~6000億円のコスト増になると言う。
東京電力はただでさえ柏崎刈羽の停止で財務状態はよくなかったのだから、損害賠償や復旧あるいは処理のコストを考慮に入れなくても今回の事故だけで株価は相当にダメージを受けていたはずだ。

昨日のニュースでは銀行団が東電からの緊急融資要請に応じて2兆円規模の融資を実施する方向で検討に入ったようだ。生保もこれに応ずるとのニュースも出ている。
三井住友銀広報部の戸川智佳氏は、「東京電力は日本で必要不可欠なインフラを担っており、主力行として最大限サポートする」とコメントした。(3月23日ブルンバーグ)当然政府系金融機関によるバックアップもあってしかるべきだろう。

地域独占であるから電力供給の停止はありえない。究極は電力料金の値上げで賄えるはずだからだ。

損害賠償がどの程度の規模になるのかは現状ではわからないが、東京電力による補償額はForce Majeure(天災など不可抗力)条項による政府補償契約の定める1200億円を超えれば「原子力事業者による無限責任の賠償負担+必要と認めるときの政府の援助」となっている。従って東京電力の負担はネゴシェーションというよりは政府がどう考えるかに依存するだろう。政府負担の主眼はあくまで被害者救済である。もはや賠償額が1200億円以内で済むとは誰も考えていないだろう。

またこの負担の分担は言い換えれば損害賠償を電力料金で支払うか、税金で支払うか。つまり東京電力の受益者負担かあるいは東電と関係のない地域も含めた国民負担かという違いとも言えるだろう。株価はこうした議論の中で株主の権利をどこまで主張できるかにかかっているのではないだろうか。だから解らないのである。

早々と「国有化」を唱える人もいるが、これは事件処理の方法論の話が多いようだ。
日本では沖縄電力以外の電力会社はすべて原子力発電所を持っている。
もしも東京電力の株主が出資金額全てを提供させられるのであれば、他の電力株へも大きく影響を及ぼすだろう。地震地帯に発電所を持たざるを得ない日本では、電力株保有のリスクプロファィルが全く別の物になってしまうからだ。そうなるとあるいは電力料金が安すぎるのかも知れないので値上げして配当を増やせということになるのかも知れない。

実践コーポレートガバナンス研究所の門多丈氏は今回の事件で露見した政府と東電によるガバナンスの2重構造を指摘しつつこう発言している。
「原発は東京電力のスパン・オブ・コントロールを超えた事業であったと言うべきであろう」
つまり一企業の負担できるリスクを越えているのだ。

日本の電力政策において発電(原子力)、送配電の分離等、今後考えなければならないことは多い。

2011年3月22日火曜日

国家は破綻する 読後感想文

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”人類最初のデフォルトは、紀元前四世紀の古代ギリシャでシラクサ王ディオニシウスがやってのけたものだという。ディオニシウスは約束手形を振り出して臣民から金を借りた後、現在流通している貨幣はすべて返却せよとの命令を発する。命令に従わない者は、死刑である。こうして国中の貨幣を集めたディオニシウスは、1ドラクマ硬貨すべてに「2ドラクマ」と刻印してしかる後に借金を返済したのだそうだ。(P226)” これだと物価は2倍あるいはそれ以上になるでしょう。

遠い昔からインフレやシニョリッジは国内債務の返済回避の有力な手段だったのです。

国家は破綻する――金融危機の800年 ラインハート+ロゴフを読みました。(原題:This time is different)

昨年原書で途中まで読んでいて投げ出した本でした。この本は一般向けには、いくつかの逸話を除いて決して面白い本ではありません。学術書を一般向けに編集し直したのでしょう。殆どのページをデータのマイニングに費やしています。従って逆に古いデータ好きには巻末の参照文献も含めて非常に興味深いものになっていますが、巻末にデータが掲載されているわけではありませんし、また特に日本について詳しい記述があるわけでは無いのでそちらを期待するのであれば巻頭の日本語版への序文だけで充分でしょう。

今回のサブプライム問題やThe Second Great Contractionに関してならば著者も言うとおり13章以下を読めば良いと思います。読物としては少々古いですがキンドル・バーガーの熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史の方がずっと面白いでしょう。

ただこうした800年にわたる膨大なデータ集積と分析から言えることは非常にシンプルなのです。「今回だけは違う」”This time is different”は歴史的に見て通用していないということです。

住宅価格の極端な上昇・下落の後に銀行危機が発生し、その後に政府債務が膨張するというパターンは事例がたくさんある。対外債務に関するデータの取得は取りやすいが、国内債務のデータは充分に開示されていないケースが多い。これは別に日本に限ったことではありませんが年金債務など不透明なものが多いのです。従って我々の把握している政府債務の規模は或る日突然違ったものになる可能性がある。経済成長によって債務を完済できるという見解は事例の裏付けがない。複数均衡におけるデフォルトしない均衡とデフォルトするという均衡とは紙一重である。

今後どうなって行くのかというような安っぽい破滅論的なものは本書には書かれてはいませんが、残念ながらデータから見る限り結果は必然だと思うしかないのです。何しろこれに反論するためにはあなたはこう言わなければなりません。

"This time is different."


PS 本書ではデフォルトの定義付けをP112/P414まで曖昧にしたまま進行し、デフォルトの大半は全面的ではなく部分的な不履行に落ち着くとあります。何故ならば再び借入が必要になるからです。

日本のデフォルトに関してはWW2以前に発行した外貨建債券の戦時中の不払いがデフォルトとなっています。(財政統計金融月報270号「政府関係外債について」)



2011年3月21日月曜日

プロ野球チャリティー・ゲーム


あんまりこんな事をくどくどと書きたくはないのだけれど、またプロ野球の話だ。

3月25日に開幕戦を強行しようとしたセ・リーグが選手会や世論の反発と文科省からの要請で開幕戦を延期することにした。最初のカード3試合を先送りにして、29日にスタートとしたのだ。しかしこれはどう見ても楽天星野監督が言うように「茶番」でしかない。

私はプロ野球ファンである。長い付き合いだ。従ってプロ野球を攻撃しようとしているのではない。「普通」の経営感覚を取り戻して欲しいだけなのだ。このままでは確実にファンが減ってしまう。

震災前の時点では3月25日にゴールデン・タイムの地上波で3つの大きなスポーツ・イベントが予定されていた。

テレビ朝日=キリン・チャレンジカップ「日本代表xモンテネグロ代表」戦、静岡
フジテレビ=世界女子フィギュア女子SP
日本テレビ=「巨人x横浜」東京ドーム

視聴率の予測はサッカー>フィギュア>巨人戦だった。

スケート協会とサッカー協会は早々と中止を発表したが、セ・リーグはパ・リーグが延期する中「スポーツは勇気を与える」として25日開幕強行を発表したのだ。これだけでも何か不信感を誘う。「発言」に信頼性が付与されないのだ。だから抗議の電話が殺到した。プロ野球としてはここは一番仕切り直さなければいけない局面なのである。

日本サッカー協会は29日に大阪長居球技場で「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」日本代表対Jリーグ選抜を企画している。岡崎や本田圭佑など海外組の参戦も報じられているし、三浦カズも意欲を見せている。カズがピッチに立てば弥が上にも盛り上がるだろう。セ・リーグが主張していた「スポーツが勇気を与える」とはこうした企画のことだろうと思う。プロ野球選手は歯がゆい思いをしているのではないだろうか。

私が考える解決策はこれだ。
開幕をパ・リーグと合わせて4月12日とする。
選手会が中心となってNPB(日本野球機構)に働きかけチャリティー・ゲームを行う。
4月2日(日)に今回の突然の延期で京セラ・ドームが空いているから、各チームから数名ずつ選手を出してセ・パ対抗とか、楽天対その他球団でも良いだろう。
日本テレビがスタジオにタレントでも集めて募金しながら中継すればいいじゃないか。こうすれば野球界から明確に「国民を勇気づける」メッセージを発信できるのではないだろうか。

プロ野球ファンとしてこれ以上ゴタゴタして欲しくはないのだ。
新井選手会長、オープン戦は21打席1安打らしいけど是非頑張って下さい。

2011年3月18日金曜日

岩隈選手のブログとセ・リーグの意思決定



テレビや新聞などのメディアで被災地の悲惨な状況や収束のつかない福島原発のニュースを見る一週間でした。

目先は為替や株式が乱高下しています。
GSの見積りによると復興費用は16兆円とも言われていますがこれは例え倍になったとしても日本の経済規模から言えば致命的な数字では無いでしょう。
それよりも海外メディアが注視するのは原子力発電の安全管理に根ざす世界中の原子力政策の転換であり、経済学者にすれば政府債務を増やすことによってギリギリの状態で持続されている世界経済の現状への影響のように見受けます。

まあ、それは置いておくとしてもっと卑近な話です。16日の楽天・岩隈選手のブログは感動的なものでした。仙台の家族が艱難辛苦を乗り越えて名古屋にいる岩隈選手のもとを訪ねてくると言う話でした。確かにもっと悲惨な状況におかれている家族はたくさんいらっしゃるでしょう。しかしこの有名なプロ野球選手である岩隈家に起こった災難は切迫する状況を身近なものとして私の心も動かしました。読んでいない方は是非読んで下さい。

そして昨日のセ・リーグによる25日開幕の意思決定です。パ・リーグは仙台球場の問題もあり4月14日に延期しました。
加藤良三コミッショナーは「苦しい時にこそ、必死にプレーする姿を見せることが我々の責務と考える」と話した。(毎日新聞)

感動を与えるのは興行主ではなくプレーする選手です。選手会は反対しています。

「被災された方、今も安否不明の方、避難所で生活されている方のことを思うと、本当に今、開幕していいのか。電力不足とか原発の問題もあるのでやってもいいのか、それが選手会の総意だった」新井選手会長・タイガース。

「被災者を勇気づけるため」というセ側の主張に対しては、時期尚早という考えを示す。「復興がある程度、見えたときに。今(勇気付ける論調が)あるのは思い上がりの面がある」と厳しい口調だった。宮本・スワローズ(デイリー・スポーツ)

一番解り易いのが経営難にあえぐ横浜ベイスターズでしょう。

横浜加地隆雄球団社長(70)が17日、セ・パ分離開催が決まったことを受け、横浜市内の球団事務所で会見を行った。加藤良三コミッショナーと同じ見解とした上で、「こういう状況の今、自分たちが果たす役割は働くこと。野球を通じて、どれだけの勇気を物心ともに送れるか」と話した。報道陣から球団経営も考えたのかという質問が出ると、「とんでもない。何でもうけるためと思うのか」と語気を強めた。(ニッカン・スポーツ)

「経済活動をしないと地盤沈下してしまう」「25日開幕」を強力に主導した清武代表(巨人軍)は「自粛よりも行動を選んだ」(同)

「プレーを通じて感動を与える」と言う興行側の論理は詭弁でしか無いことはあまりにも明白です。そして今の時点で興行側が意図しているらしい「感動を与える」以前にファンに対して「嫌悪感」を与えていることも確実でしょう。

東京ドームは稼働すると5万~6万キロワット/時間。電車を間引き運転された通勤客は果たして小笠原や阿部慎之助のホームランに感動するのでしょうか?
2週間開始時期を遅らせるだけで非難の声が随分収まることを考えれば興行側の危機管理は甘すぎます。セ・リーグは東京電力のエリアでの試合を全てデーゲームにするか2週間伸ばしてパ・リーグと合わせるべきです。

国民が少しずつ譲りあって暮らしている時に、満員電車で足を拡げて二人分座るようなマネは止めた方が賢明だと思います。

き‐べん 【詭弁・詭辯】
道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論。こじつけ。「―を弄(ろう)する」
《sophism》論理学で、外見・形式をもっともらしく見せかけた虚偽の論法。

2011年3月7日月曜日

実質株価指数


前回のエントリーで質問を貰いました。
人口ピラミッドにおけるアメリカのエンジン(人口構成比の多い年代)が日本の10年遅れだったとして、確かにアメリカは2000年に一旦ピークを打ったがその後も再び強くなり、リーマンショック直前にはダブルトップのように戻ってきたでは無いかと言うものでした。

僕らは(日本人は)インフレというものにすっかり縁遠くなってしまっています。長い間身の周りに無いのですからこれは仕方がありません。
でもGNPにも名目と実質があるように時に株価もインフレを考慮して考えなければなりません。
消費者物価が2倍になっているのに、株価が50%上昇したところで決して儲かったとは言えません、老後の蓄えも何もあったものではないからです。

下のグラフはSP500指数を消費者物価指数(CPI)で修正したものです。
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2000年8月のSP500のピークである1485.46は現在の価値で言えばいくらなのか?
この間にCPIは00年8月の172.8から11年2月の221.267まで約1.2805倍になっていますから、掛けてあげれば良いのです。
答えは1902.10。 2月末のSP指数が1321.12ですから約30%ほど実質的な価値が落ちていることになります。

つまり名目指数だけを見ていれば2000年以降はボックス圏のようにも見えますが、実質指数ではかなりの右肩下がりなのです。
またインフレが亢進した70年代アメリカの低迷した様子は実質株価指数を見るとよくわかるのです。


アメリカだけでは片手落ちというものでしょうから日本も見ておきましょう。
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90年以降はインフレが殆どありませんから、名目も実質も同じようなものです。
それよりも驚かされることは、現在の日経平均の水準は1972年12月の5,208円(実質値13.916)を未だに下回っているということです。
(もちろんこうしたデータには配当などが考慮されていないことに注意が必要です)

原油価格の上昇は一過性であるとか、グローバルで見るとあまり舐めない方が良いかと思いますよ。

2011年3月5日土曜日

岐路に立つ中国 読後感想文


私がNYに居た80年代後半から90年代初頭にかけてのマンハッタンには「ピアノバー」、いわゆる日本人が経営する日本式の「ナイト・クラブ」が大小合わせて60軒程度あったと言われています。銀座や六本木のクラブが日本のバブルで潤っていましたから、中には従業員(ホステス)さんの福利厚生目的で(NYに住んでみたいから)支店を出すところまで現れました。

シティ・バンクのビルやロックフェラー・センター、ペブル・ビーチ・ゴルフ・クラブまで一時は日本人所有になったのでした。こうなると第2次世界大戦で壊滅的に敗北しGHQに支配され抑圧されてきた民族としてはどうしても増長してしまうものです。財務的に行き詰まった外国の会社は日本企業に助けを求めてきたりしますから「いい気」になるのも当然なのです。企業の成功談も「ジャパン アズ NO1」にちなんだQCものばかりになっていました。 日本としては「この世の春」というやつだったのでしょう。国際関係心理学的にも興味の惹かれる現象でした。

一方で、今から思えばですけれど、そのころ米国株式市場ではストラテジストのエドワード・ヤルデニや、ハリー・デントというジャーナリスト出身のエコノミストがベビー・ブーマーの世代を人口ピラミッドにおけるエンジンと称して米国の強気市場の到来と日本市場の衰退を予測していました。

説明は経済学の「成長会計」よりははるかにシンプルでした。40歳から49歳ぐらいの年齢層は家を建て、冷蔵庫や洗濯機、その他のホーム・アプライアンスを揃えるなど消費活動が活発になるために、この層の人口分布が大きくなる時に向けて経済は成長し株式市場は強気相場を迎えると言うものでした。

下の図は左が当時のアメリカで右が日本です。分布の多い年齢帯がアメリカのほうが10年ほど若かったのです。

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下の図は1990年当時の日本の人口ピラミッド(左)と2011年の中国の人口ピラミッド(右)を並べたものです。どうでしょう、形がよく似ていませんか。「未富先老」 問題というのだそうです。

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人口ミラミッドから見てもわかるように株式ストラテジストの間には人口分布のピークの位置から中国市場の持続的な強気相場は怪しいと既に警戒的な人もいました。私もどちらかと言うとその口で、インドやブラジルの方が長期投資には良いと考えてきました。しかし少し気にかかるのは中国株式市場がこれまで華々しい経済成長に比較してそれ程のパーフォーマンスを見せていないという事がありました。つまり国営企業が多い、市場が開放されていない等、市場パーフォーマンスを制約する他の要因が多すぎたのです。従って株式市場のピークは少し先伸ばしされるのかもしれないという思いも少しあるのです。しかし正直言って中国の事はよくわからない事が多い。

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁」津上俊哉著を読みました。
結論から言えばこの本は読んでおいていた方が良い。何故かと言えば、

1.今まで知らなかったキーワードが多い
2.自分が曖昧に納得してた項目が丁寧に解説されている
3.実体験が豊富で信憑性が高い
4.記述が常に日本との対比になっていて分り易い

3.については今回の中近東問題で専門外の人間によるいい加減な論評が非常に多かったのを読者も体験したのではないでしょうか。

本書の構成は先ず我々が今後注目すべきポイントを7つ挙げ、これらをを乗り越えるべき「壁」として解説しています。

1.人民元問題:元高が怖いと言う集団脅迫概念
2.「二元社会」:農民=二等公民の問題
3.「国退民進」 から 「国進民退」への逆行:官偏重の所有・分配構造
4.政治体制改革:民主化と人民解放軍の問題
5.「漢奸タブー」と「核心利益」発言
6.「未富先老」 (高齢化) 問題 人口ピラミッド
7.「大外交」 大国としての外交ができるか

そしてその後に「楽観悲観シナリオによるシミュレーション」、「日本との関係について」と言う構成になっています。
本当はシミュレーションだけ読んで理解できれば良いのでしょうが、その為には7つの壁を乗り越えておかなければならないでしょう。
「官僚制度」や「既得権問題」に対する筆者の熱い思いも全体を通じて伝わってくるものがあります。
読後は中国関連ニュースへの理解度が間違いなく向上すると思いますよ。

その他にも気になったキーワード、
「統一口径」、「一枝独秀」、「国際関係心理学」、「分税制」、「中国の年金問題」等々