2011年3月5日土曜日

岐路に立つ中国 読後感想文


私がNYに居た80年代後半から90年代初頭にかけてのマンハッタンには「ピアノバー」、いわゆる日本人が経営する日本式の「ナイト・クラブ」が大小合わせて60軒程度あったと言われています。銀座や六本木のクラブが日本のバブルで潤っていましたから、中には従業員(ホステス)さんの福利厚生目的で(NYに住んでみたいから)支店を出すところまで現れました。

シティ・バンクのビルやロックフェラー・センター、ペブル・ビーチ・ゴルフ・クラブまで一時は日本人所有になったのでした。こうなると第2次世界大戦で壊滅的に敗北しGHQに支配され抑圧されてきた民族としてはどうしても増長してしまうものです。財務的に行き詰まった外国の会社は日本企業に助けを求めてきたりしますから「いい気」になるのも当然なのです。企業の成功談も「ジャパン アズ NO1」にちなんだQCものばかりになっていました。 日本としては「この世の春」というやつだったのでしょう。国際関係心理学的にも興味の惹かれる現象でした。

一方で、今から思えばですけれど、そのころ米国株式市場ではストラテジストのエドワード・ヤルデニや、ハリー・デントというジャーナリスト出身のエコノミストがベビー・ブーマーの世代を人口ピラミッドにおけるエンジンと称して米国の強気市場の到来と日本市場の衰退を予測していました。

説明は経済学の「成長会計」よりははるかにシンプルでした。40歳から49歳ぐらいの年齢層は家を建て、冷蔵庫や洗濯機、その他のホーム・アプライアンスを揃えるなど消費活動が活発になるために、この層の人口分布が大きくなる時に向けて経済は成長し株式市場は強気相場を迎えると言うものでした。

下の図は左が当時のアメリカで右が日本です。分布の多い年齢帯がアメリカのほうが10年ほど若かったのです。

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下の図は1990年当時の日本の人口ピラミッド(左)と2011年の中国の人口ピラミッド(右)を並べたものです。どうでしょう、形がよく似ていませんか。「未富先老」 問題というのだそうです。

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人口ミラミッドから見てもわかるように株式ストラテジストの間には人口分布のピークの位置から中国市場の持続的な強気相場は怪しいと既に警戒的な人もいました。私もどちらかと言うとその口で、インドやブラジルの方が長期投資には良いと考えてきました。しかし少し気にかかるのは中国株式市場がこれまで華々しい経済成長に比較してそれ程のパーフォーマンスを見せていないという事がありました。つまり国営企業が多い、市場が開放されていない等、市場パーフォーマンスを制約する他の要因が多すぎたのです。従って株式市場のピークは少し先伸ばしされるのかもしれないという思いも少しあるのです。しかし正直言って中国の事はよくわからない事が多い。

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁」津上俊哉著を読みました。
結論から言えばこの本は読んでおいていた方が良い。何故かと言えば、

1.今まで知らなかったキーワードが多い
2.自分が曖昧に納得してた項目が丁寧に解説されている
3.実体験が豊富で信憑性が高い
4.記述が常に日本との対比になっていて分り易い

3.については今回の中近東問題で専門外の人間によるいい加減な論評が非常に多かったのを読者も体験したのではないでしょうか。

本書の構成は先ず我々が今後注目すべきポイントを7つ挙げ、これらをを乗り越えるべき「壁」として解説しています。

1.人民元問題:元高が怖いと言う集団脅迫概念
2.「二元社会」:農民=二等公民の問題
3.「国退民進」 から 「国進民退」への逆行:官偏重の所有・分配構造
4.政治体制改革:民主化と人民解放軍の問題
5.「漢奸タブー」と「核心利益」発言
6.「未富先老」 (高齢化) 問題 人口ピラミッド
7.「大外交」 大国としての外交ができるか

そしてその後に「楽観悲観シナリオによるシミュレーション」、「日本との関係について」と言う構成になっています。
本当はシミュレーションだけ読んで理解できれば良いのでしょうが、その為には7つの壁を乗り越えておかなければならないでしょう。
「官僚制度」や「既得権問題」に対する筆者の熱い思いも全体を通じて伝わってくるものがあります。
読後は中国関連ニュースへの理解度が間違いなく向上すると思いますよ。

その他にも気になったキーワード、
「統一口径」、「一枝独秀」、「国際関係心理学」、「分税制」、「中国の年金問題」等々

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