2011年3月22日火曜日

国家は破綻する 読後感想文

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”人類最初のデフォルトは、紀元前四世紀の古代ギリシャでシラクサ王ディオニシウスがやってのけたものだという。ディオニシウスは約束手形を振り出して臣民から金を借りた後、現在流通している貨幣はすべて返却せよとの命令を発する。命令に従わない者は、死刑である。こうして国中の貨幣を集めたディオニシウスは、1ドラクマ硬貨すべてに「2ドラクマ」と刻印してしかる後に借金を返済したのだそうだ。(P226)” これだと物価は2倍あるいはそれ以上になるでしょう。

遠い昔からインフレやシニョリッジは国内債務の返済回避の有力な手段だったのです。

国家は破綻する――金融危機の800年 ラインハート+ロゴフを読みました。(原題:This time is different)

昨年原書で途中まで読んでいて投げ出した本でした。この本は一般向けには、いくつかの逸話を除いて決して面白い本ではありません。学術書を一般向けに編集し直したのでしょう。殆どのページをデータのマイニングに費やしています。従って逆に古いデータ好きには巻末の参照文献も含めて非常に興味深いものになっていますが、巻末にデータが掲載されているわけではありませんし、また特に日本について詳しい記述があるわけでは無いのでそちらを期待するのであれば巻頭の日本語版への序文だけで充分でしょう。

今回のサブプライム問題やThe Second Great Contractionに関してならば著者も言うとおり13章以下を読めば良いと思います。読物としては少々古いですがキンドル・バーガーの熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史の方がずっと面白いでしょう。

ただこうした800年にわたる膨大なデータ集積と分析から言えることは非常にシンプルなのです。「今回だけは違う」”This time is different”は歴史的に見て通用していないということです。

住宅価格の極端な上昇・下落の後に銀行危機が発生し、その後に政府債務が膨張するというパターンは事例がたくさんある。対外債務に関するデータの取得は取りやすいが、国内債務のデータは充分に開示されていないケースが多い。これは別に日本に限ったことではありませんが年金債務など不透明なものが多いのです。従って我々の把握している政府債務の規模は或る日突然違ったものになる可能性がある。経済成長によって債務を完済できるという見解は事例の裏付けがない。複数均衡におけるデフォルトしない均衡とデフォルトするという均衡とは紙一重である。

今後どうなって行くのかというような安っぽい破滅論的なものは本書には書かれてはいませんが、残念ながらデータから見る限り結果は必然だと思うしかないのです。何しろこれに反論するためにはあなたはこう言わなければなりません。

"This time is different."


PS 本書ではデフォルトの定義付けをP112/P414まで曖昧にしたまま進行し、デフォルトの大半は全面的ではなく部分的な不履行に落ち着くとあります。何故ならば再び借入が必要になるからです。

日本のデフォルトに関してはWW2以前に発行した外貨建債券の戦時中の不払いがデフォルトとなっています。(財政統計金融月報270号「政府関係外債について」)



3 件のコメント:

こくぴと さんのコメント...

震災復興債を日銀に引き受けさせるべきという議論が出始めてますね。税収は確実に落ち込むでしょうし、地震と津波がメルティングポイントの到来を著しく早める結果になるのではと非常に心配しますが、どうなんでしょうか?

Porco さんのコメント...

そうですね。
お金が湧いてくるわけでもなし。FRBのBS見て言っているのでしょうが、危機意識を持つためにも市場で消化すべきでしょうね。

Porco さんのコメント...

こくぴとさん、
日銀の国債引き受けのエントリー立てておきました。