2011年4月5日火曜日

米国債を担保に国債発行はできるのか?


「外貨準備の米国債を担保に国債発行はできるんですか?」

と質問を受けました。
私は専門外ですが、ちょっと考えてみましょう。
この分野が専門の人でネットで発言する人はあまりいないでしょうから。

何故こんな質問をするのか聞いてみると、どうやら産経編集委員の田村秀男さんのコラムが「おおもと」のようです。

復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ 編集委員 田村秀男

池田信夫さんもこれに関して「意味不明な『国債の日銀引き受け』」で関連したブログを書いておられるようです。

引用させて頂きます。
「確かに、復興のためとはいえ、日銀がお札を発行して政府の財政資金を供給する政策はいかにも法外な非常手段だが、政府は国債の暴落懸念を引き起こさずに、100兆円を上限に国債の形で日銀から長期借り入れできるだけのゆとりがある。というのは、政府はこれまで国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している。政府は必要なら、日銀に米国債を担保として差し出せばよい。米政府の了解は必要だが、米国債を売却する必要は全くないので、米金融市場の動揺を引き起こす恐れはない。米国の了解も取り付けられるはずだ。」

外貨準備と言うのは外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会ですね。

最近も各国の協力を得てやりましたが、為替介入の時に使う特別会計です。
円高を防ぐために、円売りドル買いをするわけですが、この時ドルを買うために外国為替資金証券(Financing Bill)、これ2009年以降は政府短期証券と呼び名が変わったそうですがともかくこの短期のT-Billを外為特会が発行して先ず円資金を調達します。販売方法は入札で入札参加資格は日本銀行・銀行・証券会社・生命保険会社等の金融機関に限定されていて流動性の高い金融商品なんかに使われています。「国民の預貯金を借りあげて」というのはこの部分ですね。

これは1年以内の短期債ですが償還資金が不足する場合には不足部分について乗り換えが認められていますので乗り換え乗り換えで常に必要量が発行されている状態になります。

この調達した円資金を使って外為市場でドル資金を買うのですがドルを現金で持っていても仕方が無いので流動性が高く信用も高い米国債に投資したりするわけです。
したがって短期証券を使って円で借金をして米国債を買っていると言う状態です。
とまあこの辺りまでは自信があります。気の利いたFX入門書の為替介入の項目なんかに書いてあるんだと思います。

財務省のHPでは平成21年度の外国為替資金特別会計財務書類が開示されていますのでBSを見てみましょう。

クリックすると大きくなります。


平成22年の資産の部では現預金が26兆8千億円、有価証券が82兆円他にもSDRや貸付金もありますが、ざっくりこの2つで110兆円というところでしょう。
負債の部では前出の政府短期証券が106兆円あります。これに資産・負債差額の部に為替評価損や資産評価差額なんてのがあって左右バランスが取れていると言うことで外為特会のサイズは115兆円もあるということです。 この金額が積み上げられた日本の資産だと勘違され勝ちなんですが実際は借金との両建てになっています。

一時日本版SWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)国家戦略ファンドが話題になりましたが、このBSの資産にある有価証券USトレジャリーを少々売却してもっと成長性のあるものや国家戦略に関係のある途上国のインフラなんかに投資してはどうだろうという話でした。しかしそもそも外国為替資金証券で集めた短期のお金でファンドを運用するという話だったのでちょっと筋が違うのではないかと立ち消えになりました。

最近は円高に悩みながらも、もしかしたら円が売られまくるかもしれないと言う亡国論も一方であるわけで、いつかドル売り円買の為替介入をしなければならない時もきそうです。その時には米国債を売って円に替えてやる。そしてその円をBSの右側の短期債の償却資金に充当するわけです。こうして外為特会の規模は小さくなることもあるのです。

「米国債を売って復興資金にしよう」と言う話もあるようですが、
1.円買いの為替介入になるので、この前円売りに協調介入してくれた国達は驚いてしまう。
2.売っても短期債の償還資金にまわるだけで資金にはならない。

さて、最初の疑問に戻りましょう。
「外貨準備の米国債を担保に国債発行はできるんですか?」でした。

外国為替資金証券はもちろん政府保証ですが使途が限定されています。そしてこれも国債ですから「担保」と言う法律用語が適用されないかもしれませんが外為特会の米国国債はすでにその価値をもとに国債を発行してしまっているのではないでしょうか。100%借金で買ったものを担保にすると言うのはどうなんでしょうかと思うわけです。

あるいはすごいアイデアがあるのかもしれませんが私にはわかりません。
ですから質問者には外為特会のBSの画像とリンクだけ渡しておきました。
どなたか教えてくれれば有り難い。

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