2011年4月15日金曜日

「原発賠償へ保険機構案」を読む Too Public to Fail


福島原発の被害者は一刻も早い東電からの賠償、具体的には当座の一時払いを求めている。既に避難地域の中小企業では「不渡り」を出した会社もあるし、農漁業従事者は商品出荷もままならず復興計画や将来の生活設計どころか日々の現金に窮している。全てを失って避難所で生活し現金が一円も無い姿を想像すればその悲惨さは理解できるだろう。

こうした早期の補償に向けて13日頃から関連する政府案が日経紙上に登場してきた。15日の日経一面は「原発賠償へ保険機構案(仮称):政府検討へ 東電負担立て替え、優先株配当で回収」といよいよこの内容が具体化してきた。こうした記事は一般紙では見当たらないが、日経のスクープというよりは政府内から管理されたリークによって一種のパブリック・ヒアリングを行っていると考えたほうがよいだろう。つまり市場や日経読者レベルからのこの案に対する反応を伺っていると思われる。一般大衆に投げかけると「東電潰せ」とか「ボーナス返せ」とかそれはそれで重要なのだが目の前の問題解決への収拾がつかなくなるからだ。

記事を読む限りこの案の目的は以下の3つである。
1.補償を早期に確実に支払えるようにする。
2.東京電力の株式の暴落、5兆円におよぶ社債の信用格付け低下、スプレッドの上昇など混乱する金融市場を安定化させる。
3.東京電力の破綻を回避し電力の安定供給を図る。

スキームは日経によると以下の図のとおりだ。
ソース日経

これを私なりに読み解いてみよう。
資金の流れは3つ

1.基金への出資
a.記事の文章からは「資本注入は政府保証がついた公的資金を使って東電が新たに発行する優先株を引受ける形になる」とある。「政府保証がついた公的資金」とは少々「謎」めいているが政府が大量の資金を出資することは無さそうである。スキーム図から判断すると民間金融機関からの融資だけによって出資されるように見受けられる。つまり政府保証のコストを除いて税金からは資本投入されない形態になっている。融資する側から見れば政府保証はついているし、地域独占が継続されるから電力料金の値上げによって融資の返済は担保される。
b.原発を持たない沖縄電力を除く全国電力各社が保険料を機構に積み立てる。この保険料が賠償基金と保険業務にどう割り振られるかは書いていない。


2.機構からの東京電力への出資
東京電力は優先株を発行し機構が引受ける。東京電力は機構に立て替えてもらった賠償金を長期間の配当として機構に支払う。配当金額は政府が指示するようであるから優先株は一定の議決権を持たねばならない。定めらた期間を過ぎれば普通株に転換されるのであろう。東京電力が買い戻してもかまわないが電力料金に上乗せされるだけである。

3.被災者への補償
東京電力ではなく機構が行う。被害者は東京電力に疑心暗鬼になっているのでこれは良い方法だろう。


さて、現状では補償総額も東京電力がどこまで負担するのかも決まってはいない。Force Majeure(天災など不可抗力)条項の適用もあいまいなままだ。
こうした中でこのスキームのアピール(特徴)は要約すると以下と言える。

1.被害者へのすみやかな支払いが出来る。(機構設立には立法化が必要だがその間のつなぎは考慮されなければならない)
2.税金の持ち出しが無い。
3.東京電力は潰れない。あくまで東京電力が優先株の配当と言う形で分割払いで補償を支払うが、結局電力料金に上乗せされる。財界が東京電力の免責に積極的なのは、電力料金への上乗せによるコスト・アップが懸念されるからだ。また普通株の配当は当然圧迫を受け、株主責任は暫時「無配あるいは極わずかの残りの配当」という形で取らされることになる。

そして問題点として考えられるのは、このスキームは電力業界の現状維持のスキームであると言う点だろう。今回課題となった「地域独占企業の弊害であるガバナンスや消費者目線の経営努力の問題」には目をつぶることになる。補償金額を電力料金に上乗せするだけだから、今後も東京電力の地域独占による価格支配が前提条件になっており安価な電力供給者の登場が想定されていない。この機構の設立を立法化するのであればこの問題解決を担保する項目も加えられるべきだ。具体的には東京電力以外の発電会社による売電、送配電料金の価格設定などの問題である。こうした課題はこのスキームに真っ向から対抗してしまうだろうが議論されるべきである。

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