2011年6月25日土曜日

利息の語源


「社会の粗野な諸時代には牛が商業の共通の媒介者であった」アダム・スミス[1]


企業内の事業仕分けでよく使われるツールにボストン・コンサルティング社のBCGモデルがあります。勉強熱心なサラリーマンであれば一度は見たことがあるのではないでしょうか。企業の製品ポートフォリオを4つに分類して企業戦略を練るツールです。この中では屋台骨となって安定利益を出している製品をCash Cow=「金のなる木」として扱かっています。

天才投資家ウォーレン・バフェットが好む企業はこの辺りの整理がキチンと出来ていて、期待ばかり大きな新製品よりも市場成長率が低くても市場占有率が高く着実に収益を産む「Cash Cow」を沢山持っている企業なのだと思います。

因みに「Cow」とはメスの牛のことです。オス牛は「OX」であり、去勢されていないオス牛を特に「Bull」といいます。こう考えると強気市場を意味する「Bull Market」という言葉も一段とその凄みを増すのかもしれません。

Bullは永遠に続きません、いつかはBearと交替しなければなりませんが、Cowは日々牛乳を生産してくれます。牛乳はチーズになりバターになり、そして子牛を産んでくれます。Bullのような派手さはなくとも着実に複利で増えていく資産なのです。

ブラッド・ビットが主演したハリウッド映画「トロイ」は紀元前8世紀末のギリシャの吟遊詩人ホメロスの歌った「イーリアス」「オデュッセイア」がストーリーのおおもとになっています。時代考証的には青銅器時代の剣であるとか色々と考えさせられますが私の好きな映画のひとつです。

ホメロスは「オデュッセイア」の中で牛を物の価値の基準として扱っていました。

「各種の手仕事に堪能な女奴隷は牛4頭と評価した」
「大きな(ペルシャ製の)三脚(瓶)は牛12頭分の価値」

貨幣の無い古代ギリシャでは牛が価値判断の基準だったようですが、ここでの牛は前述したように「産み出す資産」を意味していました。

そしてこの資産の増加分である「利息」をメソポタミアのシュメール人はmas、エジプトではmsと呼んでいましたが、これは「子牛」と「利息」のどちらの意味でも使っていました。これらは動詞の[msj]=「産む」からきています[2]。先に書いたようにフィリッピンでは豚を2頭借りると3頭にして返さなければなりませんでした。

また現代ギリシャ語で「利子」を意味する「トコス」は同じように「子供」も意味しています。さらに漢字の「利息」の語源も中国の「史記」にある「息は利の如し」に由来し息子は利益につながると言う意味から来ています。「利子」は息子に限らず女子も含めた子供のことでしょう。

「finance」はfin-つまりイタリア映画のエンドロールの最後に出てくる「FINE」=「終わり」が語源であってこれは、債務の期日を意味しています。もうすこし規模の小さなお金の話で使う「pecuniary」はラテン語のpecus=「動物の群れ」が語源です。また「Capital」は首都や主将でわかるように「capt」=Head が一般に語源ですが、資本という意味で使う場合には上記の「pecus」が語源なのだそうです。途中経過はわかりませんが。

つまり「利息」という言葉や概念は家畜、特に牛を由来としているのです。そして牛は古代ギリシャでは貨幣の役割をしていたとも考えられます。でも牛は持ち運びには不便(勝手に歩くといえば歩きますが)だし、バラバラにすると単なる「肉」になってしまいます。そこで貴金属を使ったり、貨幣の発明となるのでしょが。。。

ギリシャ文明における貨幣の発明の前フリで書いていましたが、すっかり長くなってきましたのでここで一旦区切っておきます。ついでですから株式の「Equity」はラテン語のaequitasこれは公正とか平等の意味です。持分は等しく権利を持つと言う意味でしょう。イコールがイメージしやすいかもしれません。また債券の「Debt」はラテン語のdebitumこれは正に「負っているもの」。またde-には誰か第3者とは「区別しておくもの」の意味があります。

因みに昔知人とBCGモデルについて話していたところ、モデルのCash Cowはヒンドゥー教の聖なる牛であると彼が言っていました。知ったかぶりには注意しておきましょう。(知人が正解)



[1] 「古代ギリシャの農業と経済」岩片磯雄 大明堂 p226
[2]  “A History of Interst Rate” 4th edition Sidney Homer and Richard Sylla ,Wiley, 2005. p20

0 件のコメント: