2011年6月30日木曜日

財政危機脱出のセオリー


今日パラパラとギリシャ問題を整理していたら面白いプレゼンテーション資料が見つかりました。プレゼンテーションは「Civilization」や「The Ascent of the money」の著者であるニーアル・ファーガソンが昨年の3月にワシントンDCのピーターソン・インスティテュートで行ったものです。
プレゼンの題名はFiscal Crises and Imperial Collapses::Historical Perspectives on Current Predicaments、(原文はここにあります)

内容はかいつまむと以下のようになります。

今回のような財政危機とは決して珍しいものでは無く、債券の歴史と同じくらいに古いものである。つまり国家がお金を借りるようになって以来常に発生している問題であるということです。

伝統的に戦争や革命はこうした危機が原因となっている。
財政危機は雷とは異なり同じ場所で起こる傾向があり、それは発展途上国だけではなく先進国も例外では無い。

そして何が財政危機の原因であるのか?
過剰な債務-対GDP、対歳入、対輸出
過剰な利払い-国債費対GDP、税収(歳入)
過剰な外資への依存-対外債務、非居住者内国投資
弱い景気-低成長、民間部門の低投資収益
政治的脆弱性-過剰支出、税収不足は政治的な決定要因
理由なき熱狂-投資家はいつも歴史を忘れる
なるほど、各国それぞれ上記の原因が複合的に昨今の財政危機に影響を及ぼしているのでしょう。政治的脆弱性もギリシャを見ていると特に日本固有のものでもなさそうです。ポピュリズムは財政危機を引き起こします。

アルゼンチンやトルコ、ロシアなどは財政破綻を何度も繰り返している。
ギリシャは1829年の独立以来、デフォルトは5回であるが、51年間も「デフォルト」か「りスケジューリング」の状態にあった。そしてハイパーインフレを4回経験している。

危機脱出の6つのセオリー
1.高い経済成長
2.低い公債金利
3.財政的緊急援助 海外からの緊急融資等
4.財政的痛み、増税、公共サービスのカット
5.シニョリッジ(お札を刷る)
6.デフォルト あらゆる形態でのオリジナル条件への不服従、repudation(拒否)、standstill(行き詰まり),moratorium(支払い停止)、restructuring(債務再編)、rescheduling(リスケジューリング)

しかし残念ながら項目1,2,3はセオリーとしては考えられるが歴史的には有り得ないと言わざるをえない。したがって項目4以下が適用されることになる。

1.高い経済成長
2.低い公債金利
3.財政的緊急援助 海外からの緊急融資等
4.財政的痛み、増税、公共サービスのカット → Cutter
5.シニョリッジ(お札を刷る) → Printer
6.デフォルト あらゆる形態でのオリジナル条件への不服従、repudation(拒否)、standstill(行き詰まり),moratorium(支払い停止)、restructuring(債務再編)、rescheduling(リスケジューリング) → Defaulters

これら4,5,6を個別に見ると、

4.Cutter
極めてまれにしか存在しないが、イギリスに例がある(1815~1914)
予算の余剰、低金利、但しイギリスは高成長(産業革命期)に恵まれた。

5.Printer
財政自主権を持っていること、自国通貨建て債務であること

6.Defaulters
制限された財政主権、巨額の外貨建て債務

ここでギリシャと日本とは財政危機脱出のシナリオが分かれるのでしょう。
日本には外貨建て債務が極めて少ないので、お札をどんどん印刷すれば少なくとも危機脱出は可能であるということです。ギリシャのようになることはありません。また第二次世界大戦の最中でも日本は内国国債募集は消化が可能でした。もっとも当時のロンドン市場上場の日本国債はデフォルト扱いでしたけれど。
こうして考えるのであれば、どうせ最後はお札をじゃんじゃん印刷(例え)することになるのですから、もしもデフレ脱出の可能性が僅かでもあるのであれば今チョットだけ余分にお札を印刷するのも悪くはないのかも知れません。


さて、私はだいぶ端折っていますが、面白いことが書いてあります。

Lessons of  history

What do governments NOT* do with world war size debt burdens?
政府給付(公的年金・保険:Entitlements)のカット
景気刺激の為の所得税、法人税の減税
赤字削減の為の消費税の増税
デフォルトや通貨の減価なく出口を探る

NOT* ナポレオン戦争で累積した政府債務を返却した1815-1913年の英国だけは例外であり。こうした政策を行った。

つまりこの方法を取ったかつての英国だけが脱出に成功したのだけれど、普通の政府はこうした手段をとらずに下記のようにする。

What do governments  USUALLY do with world war size debt burdens?
中央銀行と民間銀行に政府債務を持たせる
海外投資を制限する
政治的弱者へのコミットメントを停止、外人債券所有者へのデフォルト
債券保有者に実質がマイナス金利のボンドを容認させる

これはまさに今皆がやっていること。


このプレゼンテーションはロゴフとラインハートが過去のデフォルトの事例を研究しただけなのと同じように、歴史家が歴史を語っているだけの話でした。何も予想してはいません。

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