2011年7月4日月曜日

ウォール街のランダム・ウォーカー 第10版


今朝の日経電子版 マネー底流潮流 「インデックス投資が奪う株式市場の活力」では最近発売になったバートン・マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー <原著第10版>―株式投資の不滅の真理」の井手正介氏による「訳者あとがきにかえて」を取り上げて、「マルキール理論との決別」として引き合いに出しています。

記事では井出氏はこのあとがきの中で市場全体を買うインデックス・ファンドが日本においては何ら利益をもたらさなかった事に加えてバリュー株投資の優位性を唱えていると指摘していますが、この部分をもう少し詳細に見ておこうと思います。

何故ならばマルキール氏がEMH(効率的市場仮説)安泰のよりどころとする、「アクティブ・マネージャーはインデックス・ファンドには勝てない」とする論拠について興味ある指摘をしているからです。これは以前から議論となっていることですが、マルキール氏の説ではバフェットの運用するバークシャーがほぼ恒常的に市場インデックスを上回っていることに対する説明がつかないと言う点です。

井出氏は株価の「ランダム性」の意味について読者に対してわざわざ注意を喚起しています。マルキールはあくまで株価の短期的な動きがランダムであると主張している過ぎず、株価の長期的なトレンドはランダムではないと考えていると指摘しているのです。これは、少々マルキール氏に気を使った書き方になっているのでしょう。

では長期的なトレンドがランダムでは無いとしたら、何故アクティブ・マネージャーは統計的にインデックスに負けているのか?

井出氏は、アクティブ・マネージャーの多くが本来の長期投資家では無く、個々の保有銘柄に対する平均保有期間が1ヶ月、3ヶ月、あるいはせいぜい1ヵ年でしかない為に株式の長期平均利回りを享受できていない、つまり長期投資の持つ一種のタイム・バリュー(時間価値:配当再投資による複利効果)を損ねてしまっていると指摘しています。少々婉曲な表現ですが、言い換えればインデックス・ファンドに継続的に勝つことは可能であることを指摘しています。これが話題になっているのです。

だからと言って私はインデックス投資が個人投資家にとってより防御的でお薦めな投資手法であることに何ら変わりはないと思います。日本株のインデックス投信で儲からなかったとは言ってもその他の並み居るアクティブ・ファンドではさらに損失が大きかったことは間違いがないからです。

それでも最近はあまり銘柄を入れ替えず長期投資を標榜するファンドが増えて(金額ではなくまだファンドの数として)きていると思います。インデックス投資家も頭を柔軟にしておく必要があるのではないでしょうか。今回の第10版は井出氏の「あとがき」のせいで少しセンセーショナルなのかもしれません。

Porco RossoFinancialの関連記事
合理的市場という神話
EMHは終わったか?
ミンスキー・モーメント


*日経新聞は個別記事へのリンクを禁止していますのでご自分でググって下さい。

0 件のコメント: