2011年7月30日土曜日

累積財政赤字はポピュリズムのバロメーターである

累積財政赤字はその国のポピュリズムのバロメーターである。

政治家は有権者に人気の無い徴税を曖昧にし、お金も無いのに選挙の票欲しさに予算をバラまいてきたのだからこの表現は正しい。

「日本の課題は明白である。世界の趨勢がグローバル化に進み、『国々が競争する状況』のなかにあって、内向き指向に傾斜している。政治面ではポピュリズムに終始し、その結果、財政構造の硬直化、赤字幅の拡大、巨額な累積債務に苦しむ国となってしまったにもかかわらず、財政再建の道筋はまったく示されていない。財政再建に取り組むほか、安全保障、優位な外交展開、資源・エネルギー開発、科学技術、教育、ベンチャービジネスなど官民をあげて世界に立ち向かう成長戦略の策定と実行が課題であろう」(ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方」 リチャード・ヴィート/仲條亮子)

これは昨年紹介したハーバード大のビジネス・リーダー向け講義資料の中の日本の政治状況の分析である。

その後この巨額な累積債務に苦しむ国は、津波を伴う巨大地震、さらに原子力発電所事故による放射能災害によって財政の状況は一段と悪化している。

巨額債務はもちろん現政権の民主党だけの責任では無い。長く政権にあった自民党もそうだし、橋本政権で中枢側近く仕えたリーダーが率いるみんなの党だって責任を逃れるものでは無いだろう。「橋本政権時代から日本の債務は返済不能で日本国債は売られるといわれ続けていたが、借金が倍になった今でも何もおこらないじゃないか。まだまだ増やしても大丈夫」というブログ(注1)は見るに忍びない。いつから「責任感を持たない」ということが、この国の政治家の資質に必要な要件になったのだろうか。

しかしここで東の果ての島国の打ちひしがれた住民にとって少しだけGood Newsがある。オウン・ゴールを繰り返しているのは日本の政治家だけでは無かったのだ。我々だけがアホウで無責任なわけでは無かったのである。累積財政赤字がその国のポピュリズムのバロメーターであるならば、ポピュリズムは何も日本だけの専売特許では無いことも証明されたからだ。お仲間がたくさんいたのである。それはユーロの破綻に瀕する国々、そしてアメリカ合衆国だ。

アメリカは今、自分自身で設定した累積債務への安全装置であるデット・シーリングに悩まされている。皮肉なことにこれがとっても危険な安全装置になってしまったのである。しかし議会運営の方法論は別としてもアメリカの2大政党にはわかりやすい明確な主義の違いがある。民主党は社会保険を充実させ国が国民の面倒を見ようじゃないかという「大きな政府」を目指し、共和党はアメリカ人は自立すべきであると、「小さな政府」を標榜しているのである。国がどこまで国民生活に関与すべきかという分り易い「違い」があるのだ。



昨日日本政府は13兆円の復興基本方針を決定した。しかし、これが何と支出は決めたが財源を決められなかったのである。埋蔵金を掘れとかいう意見もあったそうだ。ここには本当に「責任感(というもの)」はあるのだろうか。

こうした行動を取る理由ははっきりしている。近くに迫っている民主党代表選への悪影響を懸念して「臨時増税」の文言を廃して、「時限的な税制処置」と入れ替えたのである。しかし「増税」以外による財源確保の規模について、民主党部会では詰めた議論はしていないらしい。こうしてまたもや、選挙民の嫌がる「増税」をせずに選挙民の喜ぶ(今回は必要に迫られている)「支出」をするという、相変わらずの伝統芸に回帰したのだった。議員達がめいめいにボールを自陣のゴールに蹴り入れているのだ。

次回の国政選挙では与謝野氏以外は誰も、どの党も「増税」を主張しないかもしれない。あるいは主張した候補者は議員になれないだろうと思う。一方で常にその際の言い訳となる「無駄を排する」は聞かされて随分経つが、もしまだ無駄や埋蔵金があるのならば、それは今まで約束を守れなかった証拠でもあるのだ。

こうして我々の借金はさらに積み上げられ、『国々が競争する状況』のなかにあって、「なでしこ」よろしく、ブッチギリで1位のテープを切るのだろうか(である)。



4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「金融緩和すればインフレになる」にしても、何にしても、こういう問題は「それぞれの立場の当事者にとってみれば自説は自明なので詳しく説明しない」ために、話がかみ合わないので、傍から見ている者にとっては、「それぞれの説明を聞けば両方がもっともらしく聞こえるけれど、同じ土俵の上の議論としてとらえにくいので、どちらが正しいのかわからない」という所があると思います。ブログ記事「ポピュリズム」と「責任感」という言葉で、リンク先ブログを批判してらっしゃいますし、道路とか資産でも売れない物もあるだろうし、リンク先の議論に不備があるのだろうな、とは思うのですが、もしよろしければもう少し詳しく説明して頂きたいのです。

匿名 さんのコメント...

財政赤字ラベルのブログ記事、拝見させていただきました。「仮に国債残高が800兆になればさすがに国内で国債をファィナンスできるとは誰も思わないでしょう。つまり現時点の発行残高554兆円と800兆円の間のどこかに崩壊するポイントがある訳です。」2009年10月22日木曜日「デビット・アインホーンの賭け」 理解いたしました。永遠に赤字国債を発行することは出来ないことはリンク先ブログの方も理解していると思いますので、「日本国という多面体をどの角度から見るか」という問題なのだと思います。「リンク先は、角度Aから多面体日本国を見ているが、議論を構成する要素Aについて誤解をしており、その角度から見るのは間違っている。」という事なのだと思うのですが、その要素Aに大変興味があります。

Porco さんのコメント...

「ポピュリズム」:選挙で「増税」による財政再建を公約すると当選できないと考えられています。有権者は誰でも自分の負担が増えるのを嫌うからです。もちろんこうした不景気の状況において増税をすればさらに景気が悪化するから今、「増税」をすべきではないという意見もあるでしょう。でも復興資金の原資が簡単には引き出せないように日本の財政は既に硬直化しています。もちろんその原因はこれまで積み上げてきた財政赤字にあります。だとすればここからさらに財政赤字を積み上げようという主張は間違っていると思いませんか。つまりこうした行為にはキリが無いからです。実は僕としては節度ある日銀引き受けならばやってみる価値はあると考えていますが、政治家がこうした借金はいくらしても大丈夫という発言をするのであればそれは危険な事だと思います。

「無責任」:この記事の無責任とは彼が財政赤字が400兆円のレベルから政治の中枢側近く仕えていたにもかかわらず財政赤字を結果として倍に増やしてしまった、もちろん彼一人の責任ではありませんが、つまり彼は財政を硬直化させた片棒を担いでいたことを自ら語っているわけです。もっと言えばこれほど財政赤字を積み上げたにもかかわらず日本の景気は低迷したままだった。であればここからさらに「借金はいくらしても大丈夫」的な主張をするのは無責任なのではないかと問いかけたのです。

一方で彼の主張である、
「真に財政再建を果たしていくためには、まず、日本経済をデフレから脱却させ、成長路線にのせ、そこから上がってくる税収を充てていかなければ、決して「持続可能な借金返済」はできない。国と地方あわせて892兆円にも及ぶ長期債務を増税で返していこうとすれば、一体消費税を何%上げれば良いのか。気の遠くなる数字になるだろう。
 震災の復旧・復興や社会保障の財源捻出とて同じことだ。そして、その前に当然、議員や公務員が「わが身を切る改革」(給与や定数減)を断行し、特別会計の埋蔵金供出や政府資産の売却、無駄遣いの解消等も徹底的に行う。
 そして、それでも足りなければ、例えば、将来の社会保障財源が足りなければ、その足りない額を明らかにして、その分の増税幅をしっかりと国民の前に総理が示す。こうした手順、プロセスが死活的に重要だ、と私は言っているのだ。」
は間違ってはいないと思います。ただし彼は
「国と地方あわせて892兆円にも及ぶ長期債務を増税で返していこうとすれば、一体消費税を何%上げれば良いのか。気の遠くなる数字になるだろう。」
というふうに「破産?それって何の話?」と言いながら財政赤字の深刻さも同時に主張しているのですね。

しかし喩え話は好きではありませんが、資産5500万円、負債合計8200万円で大丈夫と考えているあたりが給料の減っていく今の時代、ちょっと感覚がずれているような気もします。

言葉足らずかもしれませんが。

匿名 さんのコメント...

詳細な説明、大変ありがとうございます。「節度ある日銀引き受けならばやってみる価値はあると考えています」という事ですが、FRBが買い入れた資産を市場へ上手に戻すことが出来れば、日銀も同じことが出来るかもわかりませんので、期待大ですね。月並みですが。