2011年8月9日火曜日

米国国債格下げ問題と株価の位置


政府債務
前回のエントリーで“デレバレッジ”を調べた人が多かったようなので(デレバレッジのエントリーへのアクセスが多かった)、米国Flow of Fundsから簡単なグラフを出しておく。
グラフの一番上にある線が家計の借金、2番目が米国国内金融セクターの借金、3番目が政府部門の借金である。実際にはシャドウ・バンキングと言われたように、影の銀行システムがあったわけでこのグラフは一部分しか表現できていないが、家計や金融セクターの借金の減少につれて政府部門の借金(Debt)が増え、両者が入れ替わった様子がわかるだろう。民間はデレバレッジが進んだ分、政府部門のレバレッジがすすんでいたのだ。
Data & Graph by FRED
SP500の位置
株価、特にSP500に焦点を合わせてその位置を確認しておこう。
こうした変革期には周期の短いチャートだけでは不充分だ。大勢観が必要になる。

下は20年分の日足チャートである。大雑把なトレンドは把握して置く必要があるだろう。
1994年12月以降の3回にわたる上場相場において大幅な下落(Drawdown)を記録したのは1998年の20%である。今回は4月のピークから18%のダウンであるから、もしかしたら米国国債のダウングレードは単なる杞憂に終わって再び上昇相場に入るのかもしれないが、こんな中途半端な位置で上向きにエントリーする必要は無いだろう。もちろんこれはあくまで単なるチャートであって、過去は何も語らないことには注意が必要であはあるが。

配当や益利回り
企業収益やそれにともなうPERが割安だとか配当利回りがどうしたというのは、ファンダメンタルズの大きな変更が無い場合には有効だが、実は変革期にはあまり意味を持たない。
下のグラフはシラー教授のデータから見た長期のSP500と配当利回り(Dividend Yield)、益利回り(PERの逆数)である。
長期で見ると配当利回りも益利回りも、近年とても低い位置(PERでは高い位置)にあったことが解るだろう。今のような大きな変革期にPERを持ちだされても話半分である。上記グラフで2000年以降のSP500の位置も微妙なポイントにいることがわかるのではないだろうか?

GDPと株価指数の関係
投資家は景気の数字に敏感である。特にGDPの影響は大きい。今回も遡っての改訂がQE2の効果に疑問を抱かせ国債格下げと相俟っての株式の暴落につながっている。
しかし株価指数とGDPのグラフを並べてプロットしても何か判然とはしないだろう。
Data & Graph by FRED
関係があるようで無いように見える。しかしこうした桁数の異なる数字を扱う場合には両者を対数化することによって比較ができる。下のグラフはSP500と米国名目GDPを対数化して回帰分析したものだ。対数化は具体的にエクセルのLN()関数で簡単にできる。もちろん下のグラフを見る限り何か別のファクター、例えばドル指数とか、昔ならマネーサプライとかを付加して重回帰すれば説明力は増えるに違いないが、僕が思うにはシンプル イズ ザ ベストで単回帰で充分である。 
ここで得られたGDPによるSP500の推定式、
LN(SP500)=0.9532 x LN(Norminal GDP)-2.1869
これを対数値からEXP()関数で元に戻して時系列にプロットしなおすと以下のグラフになる。
青が8月8日時点の実際のSP500、1,119.46であり、赤が推定値からの1,071.834である。どちらも大きく乖離はしていない。米国住宅価格の上昇し始めた90年代終わり頃からSP500は推定値を大きく上回るようになった。そして今回のソブリン格下げで大きなシナリオが調整される可能性があるとすれば、SP500はこの推定値よりも下に出る蓋然性は高いのではないかと思う。

ここまで見た指標類はどれもこれも推定の域を出ない。しかし現在の水準は切り返すには中途半端。たとえ切り替えしても大して上にはいかないだろうし、また戻ってくるのではないかと思う。

したがってもう少し「待つ」のが正しい。だからこそ市場参加者はあわてて株式リスクを落としにきたのだろう。こうした予想に結論は簡単には出ない。でも僕はすくなくとも次回の米国選挙まで、あるいはユーロ諸国が、国別の債務をユーロ債に実質上統一するまで様子を見た方がよいのではないかと今は考えている。

(当たり前のことだが投資する人は自分で判断して下さい。当ブログは読者の売買損に関して何らの責任を負うものではありません)


2 件のコメント:

Shuji さんのコメント...

もともと株価がちょっと高すぎたんじゃない?ということでしょうか。

日本株で同様の分析をしてみたら面白そうですね(既にあるとは思いますが・・・)。

株の買い方 さんのコメント...

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。