2011年8月14日日曜日

炭鉱に生きる 山本作兵衛


新装版 画文集 炭鉱に生きる 地の底の人生記録 山本作兵衛

この本を知ったのは7月28日放送のNHKの「クローズ・アップ現代:炭鉱(ヤマ)が”世界の記憶”になった」を見たからだった。番組終了後にすぐにアマゾンに予約したが、同じような人が大勢いたのだろう。本日届いた7月28日出版のはずの同書は既に第二版だった。

この本のオリジナルは1967年に出版されたものだが、今回山本作兵衛氏の画文集が世界ユネスコ記憶遺産に登録されたことによって新装され再出版となったものだ。
世界ユネスコ記憶遺産としては日本からは第1号。世界で他にどんなものが登録されているかというと、「アンネの日記」、「ベートーベンの第九草稿」、「フランス人権宣言」、「マグナ・カルタ」など壮々たる作品群である。

作者山本作兵衛氏は筑豊炭田遠賀川の川舟船頭の子として産まれた。遠賀川の舟運は川沿いの炭鉱から出炭する石炭を若松(北九州市)まで運ぶことによって一時は八千艘を数えるまでに栄えていたが、筑豊本線の開通により寂れてしまい、失職した船頭達は炭鉱に入ることになったのである。この辺りは富司純子の映画「緋牡丹博徒:二代名襲名」を観るとより理解が深まるだろう。 

山本氏は筑豊の炭鉱を転々とするが、ここには炭鉱主として麻生元総理の粗祖父も登場するし、被差別部落民の待遇改善を果たした水平社の記述では最近世間を騒がせた松本元防災担当大臣の先祖も絡んでいたことがわかるだろう。

ユネスコは山本氏の作品群を権力者や勝者の書いた歴史ではなく一炭鉱労働者の目線で書かれた日本の産業革命史である点を評価したという。確かにウィンストン・チャーチルの「第2次世界大戦回顧録」でもなければ将軍による日記でもない、一少女である「アンネの日記」の持つ歴史の重みと同等のものがここにはある。山本氏の記述では当時の炭鉱の子供たちは小さい時から親と一緒に炭鉱に潜ることが多く、学校にも通えず文字の書けない人が多かったそうである。これは本当に貴重な歴史資料だと思う。また世界遺産認定は炭鉱研究家であるオーストラリアのマイケル・ピアソン氏が世界に紹介してくれたものであるが、地元の学者や研究者達の地道なサポートも見逃せないないところである。

僕は本を読んでいるとまだ100ページしか読んでなかったのかと先の長さにがっかりすることも多いのだが、この本だけは残りのページの少なくなることが心細くてしょうがなかった。また目次を見た時にやたらとあとがきや解説の多い本であると思えたのだが、これらは是非読まなければいけない。どれもこれも逸品であるが特に画家菊畑茂久馬氏の文章には滂沱とあふれる涙を禁じえなかった。決して山本氏一人の偉業ではなかったのである。

この本は自分が死んだ時に綺麗なまま本棚に残しておきたい1冊である。

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