2011年10月1日土曜日

M/OレシオとP/Eレシオ


人口動態をあらわす人口ピラミッドと株式市場の関係は古くから指摘されている話で、これまでも株式市場を押し上げる「物語」として使われてきた。当ブログでも何度か扱っているテーマである。

単純にいうならば世代別人口の膨らんだ年代が40歳半ばを通過する際に株式市場は大きく値を上げるというものである。何故ならば彼らは家を買い、家に付帯する家具や電化製品を買う為に不動産価格が上昇し耐久財需要が旺盛になるからである。

最近はこの「人口ピラミッド」も「高齢化と資産価格」という言い方がされることが多い。これはアカデミックな研究が進んだために少し賢そうな言い方が増えてきたからである。

「人口の高齢化と資産価格」とは「人口の高齢化と資産価格の下落」という意味である。人口構成比率の高い世代が資産の積上げ時期を過ぎ引退生活に向けて資産の取り崩しにかかることと、資産構成を株式からよりリスクの少ないフィッスド・インカムにシフトさせるからである。株式の低迷と金利の上がらない状態は日本が先鞭をつけた格好だが、最近では先進国に共通したテーマであり現象でもある。

今月の22日にサンフランシスコ連銀から「Boomer Retirement:  Headwinds for U.S. Equity Markets?」(Boomerとはベビー・ブーマーである)と題するレポートが出され話題になっている。何故話題になったかというとWSJで取り上げられたからで、The Economist(Sep 24th 2011)でも「Bringing down the house:The effect of ageing on asset prices may make the rich world’s problems worse」として扱われこれはJBPressで日本語になっている。

このレポートのコア・イッシューはM/Oレシオである。Mはミドルエイジで40歳から49歳の世代別人口をさし、Oはオールドエイジで60歳から69歳の世代別人口である。従ってM/Oレシオとはミドルエイジをオールドエイジで割った比率を指す。この比率が増加基調にあれば、資産を積み増しする世代が増えていることを意味し、資産価格が上昇すると考えられるのであるが、下落基調ではその逆で資産の取り崩しが優勢となり資産価格は低迷する。
レポートではこれまで積上げられてきたこの方面のスタディを参考にしながらM/Oレシオと株式市場のPERとの関係を指摘している。簡単にいうならばMが増えればPERが拡大すると言うものだ。因みにP/Eレシオは「increase」ではなく「Expansion」というワードを使う。

FRBSFから許可を貰っていないのでここにグラフを出せないが、このリンクでレポートに飛べる。
Boomer Retirement:  Headwinds for U.S. Equity Markets?

2ページ目のFigure1が1954年から2010年までのM/OレシオとP/Eレシオの関係である。

1981年から2000年までのベビーブーマーが労働・貯蓄世代(Mの世代)のピークに立つまでの間、M/Oレシオは0.18から0.74に増加し、米国株式市場のP/Eレシオはその間に8倍から24倍に拡大しているのである。

グラフからはこの両社の関係はよくフィットしているように見える、因みにRスクエアは61%ある。ここまでM/OレシオがP/Eレシオに対してプレディクタブルであるならば、M/Oレシオを予測することで今後の株式市場のP/Eレシオを予測する事ができるだろう。

M/Oは人口動態データであるから、Census Bureauをもとにした予測精度は高い。これをもとに作成されたグラフが3ページにあるFigure2である。

Figure2は今後の米国株式市場の近未来のP/Eレシオの動向を推定したものである。これによれば今後P/Eは低下傾向を辿り2025年には8.4倍、2030年に9.14倍になると予測される。暫くは米国市場の低迷が続きそうだ。もちろんこれは過去のデータをもとに予測されたものであり、必ずしも絶対にそうなるというものではない。例えばレポートでは他国からの米国市場への投資などがあればこの限りではないだろうと指摘されているが、何もなければこの蓋然性は高いと考えるべきだろう。株価はしばらく低迷しそうなのだ。

日本のP/Eデータはインデックス丸ごと赤字になることが多い為極端に高い値になったりマイナスになるため使いものにならないので工夫が必要だが、世界中、少なくとも先進国の株式市場の相関は昨今随分高いのでアメリカがダメであれば日本も難しいと考えて良いだろう。(面倒だから自分でしないための言い訳でもあるが、過去似たようなことをトライしてみたがうまくいかなかった)

株式が下がるたびに「ここが買い場」と煽るバイ&ホールドや単純なインデックス投資は10年もせずに(あるいは10年も経たないと)戦略の失敗を悟ることになるだろう。そうは言ってもグラフを見ても解るとおり市場のブレはインデックスを2倍にすることぐらいはよくあることなのだ。

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