2011年12月31日土曜日

今年読んだ本を振り返って


年末なので今年読んだ本を整理しておく。

今年は新刊書をあまり読んでいない。新刊書を買う場合には評判を確かめてから買うことが多いのであまりハズレというものはない。カーメン・ラインハートの「国家は破綻する」はすっかり有名になったが、アタリの「国家債務危機」もまとまった良い本だと思う。カーメン・ラインハートのデータを使いまくっているのでご本家を読むよりも簡単かも知れない。意外によくまとまっているのが新書で松田千恵子氏の「国債・非常事態宣言」、 何も目新しいものは無いがこれ1冊あれば国家破綻について簡単な議論はできるだけのデータが入っている。そして実務家の眼からはみずほ証券高田氏の「世界国債暴落」は具体的だ。市場関係者にはこれが良いだろう。

津上氏の「岐路に立つ中国」は早めに書評を書いてブログに載せてみた。アマゾンで結構買って頂いた。中国関係の基礎知識習得には抑えておきたい1冊。津上氏にブログを見られても良い状態にしておかないと。

脚注が全体の3分の1を占めるという水野氏の力作「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」は正直に言って読みづらかった。その為に途中で一旦中止して同氏の新書版「超マクロ展望 世界経済の真実」を先に読むことにした。そこから水野氏の考え方を理解する為に、一連の「世界システム論」関係の入門書を読むことになってしまった。これは実に楽しい作業だったし、今も続いている。年末用にジョヴァンニ・アリギの「長い20世紀」というとんでもなく分厚い本を用意してある。本文だけで542ページ。

橋下・堺屋の「体制維新―大阪都」は「ちきりんのブログ」で推薦していたので読んだ。なるほど確かに体制維新の根拠がよくわかる。読んでおいて損は無い。実は平松大阪市長の先代関市長の時に大阪の将来を憂うそうそうたるメンバーで経営分析を実施している。これが「行政の経営分析 大阪市の挑戦」マッキンゼーの上山信一+大阪市役所著で2008年12月に刊行されている。この発刊時点では関市長ではなく組合の押す平松市長になっていた。最近取り寄せたばかりで中身はパラパラとしか見ていないが大阪在住の人にはデータ満載で面白いと思う。

『「通貨」を知れば世界が読める』は手元に何も本が無い時に本屋に積んであったので買ったが、ちょっと残念な本だった。歴史的記述に間違いが多く、いかに2時間新書とはいえ雑に過ぎる。例えばP38 「たとえば最初に世界に覇を唱えたスペインも、金貨を使っていた。まさに金正貨本位制というべき経済体制であった」。 「無敵艦隊」の名前はサッカーを通じて有名なので、何も知らない人にはスペインはいかにも覇権国家らしく通りは良いが、スペインは覇を唱えようとしてかなわなかった国であり、金貨もあったが圧倒的に銀貨である。これがなければポトシ銀山産出の大量の銀供給(これだけではないが)による「価格革命」の説明にも繋げないだろう。玄人による書評が無い不思議な本である。代わりと言っては何だけれど、昨年発行の同じようなテーマで日銀OBの岩村充氏の書いた「貨幣進化論」がある。第1章のタカラガイの譬え話には好き嫌いはあろうがこれはお奨め。

岐路に立つ中国  津上俊哉
世界国債暴落  高田創
炭鉱に生きる      山本 作兵衛
国家は破綻する  カーメン・ラインハート
国家債務危機  ジャック・アタリ
国債・非常事態宣言 松田千恵子 新書
体制維新―大阪都                  橋下 徹・堺屋 太一 新書
ランダム・ウォーカー 10版         バートン・マルキール
マネーの進化史                   ニーアル・ファーガソン
ダニエル・カーネマン真理と経済を語る  ダニエル・カーネマン
終わりなき危機                   水野和夫
超マクロ展望 世界経済の真実  水野和夫 新書
場末の酒場 ひとり飲み           藤木TDC       新書
日本中枢崩壊                      古賀茂明
「通貨」を知れば世界が読める  浜矩子 新書

新刊書では無いが仕事がらみでクルーグマンの国際経済学の教科書を初めて読んだ。貿易と為替上下2巻。1日1章と決めて22日かかった。
これは第8版で、英語では第9版が既に出ているそうだから年明けには読もうと思う。ユーロ問題等を考える際の貿易・為替の基礎理論、戦後の時系列での歴史等結局この本が一番しっかりとカバーしている。教科書なんだから。中途半端な本を数冊読むぐらいならば覚悟を決めてチャレンジするのも良いと思う。
「日本農業の真実」は自民党石破議員が推薦していたから読んだ。TPPを考える時に農業問題は真実がわかりにくい。

実験経済学入門 ロス・M・ミラー
クルーグマンの国際経済学 上下 ポール・クルーグマン
貨幣進化論 岩村 充
日本農業の真実 生源寺 眞一

趣味関係では今年は本当に読書が少なかった。丹波達身寺は実家のお墓の近くにある寺である。工作途中の仏像が大量に発見された。地元の郷土史研究家である船越氏は平安・鎌倉期に仏師の養成所があったのではないかと推論している。伝承では織田信長丹波平定の際に明智光秀によって大きな伽藍を持っていた達身寺は焼かれたことになっている。丹波・丹後地方への旅行の機会があれば一度訪ねてみてはどうだろうか。安城理奈さんも住んでいるという。
児玉清氏はお亡くなりなったので1冊読んでみたものだ。僕は児玉氏が有川浩氏のために書いた「阪急電車」のあとがきが一番のお気に入りである。

達身寺花曼荼羅 中松弘子
丹波達身寺 木彫仏像の源郷 船越 昌
負けるのは美しく 児玉清 文庫

今年は本を書いていたので日露戦争関係の専門書を多く読んだ。昨年読んだものを加えると80冊ぐらいを本を書くために新規に読んだことになる。

産業革命と企業経営  阿部武司
明治経済政策史の研究  神山恒夫
アメリカ金融資本成立史  呉天降
帝政ロシアと外国資本  中山弘正
マーチャント・バンキングの興隆  スタンリィ・チャップマン
もうひとつの日露戦争  コンスタンチン・サルキソフ
鉄道の地理学  青木栄
アルゼンチン海軍観戦武官の証言  マヌエル・ドメック ガルシア
黄昏の詩人  工藤美代子

また次は何を書こうかと、お気楽なことを考えていて、ひとつは日露戦争以降の大正・昭和史が頭にあったので整理の意味でたくさん読んだ。

大収縮1929-1933 フリードマン
昭和金融恐慌の研究 岩田 規久男
金融恐慌の歴史 キンドルバーガー
大陸に渡った円の興亡 上下 多田井 喜生
アジア・太平洋戦争史 中山恒
日本経済を殲滅せよ エドワード・ミラー
日本の金本位制時代 小島 仁
戦時通貨工作史論 桑野仁
あの戦争と日本人 半藤利一
戦前日本のグローバリズム 井上 寿一
日中戦争下の日本 井上 寿一
第二次世界大戦 1-4 チャーチル 文庫
模索する1930年代―日米関係と陸軍中堅層 加藤陽子
ニューヨーク・タイムズが見た第2次世界大戦 上下 池上彰
日本の選択 対日仮想戦略オレンジ作戦 NHK
パックス・ブリタニカ 上下 J・モリス
帝国の落日 上下 J・モリス
アメリカ外交50年 ジョージ・F・ケナン
孫文 上下 陳 舜臣 文庫
孫文の辛亥革命 保阪 正康 文庫
日本人はなぜ戦争をしたか 猪瀬 直樹

また金融史をブログで書こうと考えてメソポタミアあたりから始めたのだけれど、途中で時期尚早(基礎知識不足)と考えて断念してしまった。それでも読書は続けた。 川北稔氏が高校生向けに書いた「砂糖の歴史」は面白い。辻邦生の「春の戴冠」は今年小説を読む機会が少なかったこともあり、フィレンツェの当時のメディチ家の状況を楽しみながら体感しようと読んだ本だ。凄い日本人小説家がいるものだ。「投機と先物取引の理論」杉江雅彦氏は堂島の米相場の研究家。堂島に興味のある人には面白いと思う。フェルナンデス―アルメストの「世界探検全史」は世界システム論的な歴史観からも面白い作品だ。日本のような最果ての周辺国も丁寧に扱っているのが好感。
この分野はまだまだ読まなければいけない本が順番待ちになっている。
英語原書は今年は1冊もまともに読めなかった。歴史関係の本はデータ参照用に購入したものだ。フォールト・ラインズは昨年原書で読んでいたが、今は翻訳が悪くてすっかり有名になった日本語版を読んでいる。今年中に読み終わるか?

愚者の黄金 ジュリアン・テッド
お金から見た幕末維新 渡辺口男 新書
簿記の生成と現代化 フラマン
古代ギリシャの農業と経済 岩片 磯雄
振り子の金融史観 平山賢一
お金の歴史全書 ジョナサン・ウィリアムス
世界経済史 中村勝己 文庫
ファィナンス発達史 J.B.バスキン
ゴールド  ピーター・バーンスタイン
金貸しの日本史 水上 宏明
ケインズ  ロバート・スキデルスキー
株式会社 ジョン・ミクルスウェイト
入門日本金融史 落合功
金・銀・銅の世界史 村上隆 新書
堂島のDNAを取り戻せ 柳沢 逸司
投機と先物取引の理論 杉江 雅彦
歴史が教えるマネーの理論 飯田 泰之
貨幣の悪戯 フリードマン
金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス 本山 美彦 新書
新版 バブルの物語 ガルブレイス
ローマ経済の考古学 ケヴィン グリーン
世界探検全史 上下 フェリペ・フェルナンデス‐アルメスト
ウォーラーステイン 川北稔
イギリス近代史講義 川北稔 新書
略奪の海 カリブ 増田義郎 新書
メソポタミア文明 ジャン・ボッテロ
四大文明 メソポタミア NHK
シュメール ヘルムート ウーリッヒ
詳説世界史 山川出版
メソポタミア―文字・理性・神々 ジャン・ボッテロ
バビロニア ジャン・ボッテロ
数学の歴史 上垣 渉
シルクロード ジャン‐ピエール・ドレージ
陸と海と カール・シュミット
歴史入門 フェルナン・ブローデル 文庫
ブローデル「地中海入門」 浜名 優美
砂糖の歴史 川北稔 新書
オンリー・イエスタデイ F.L. アレン 文庫
1984年 ジョージ・オーウェル 文庫
春の戴冠 1-4 辻邦生
The London Stock Exchange: A History R. C. Michie
The Global Securities Market: A History R. C. Michie
Famous First Bubbles: Peter M. Garber
A History of Interest Rates Sidney Homer, Richard Sylla

全部で109冊だった。除夜の鐘を聞いてすべて忘れたりしたら嫌だね。でも煩悩よりも1つ多い。

来年も宜しくお願いします。






2 件のコメント:

Shuji さんのコメント...

ひー、恐ろしい量ですね。それだけインプットがあるからアウトプットも出せるんですね。見習わねば・・・

Porco さんのコメント...

去年は特に多かったのです。酔うと読めないのでお酒を控える、本来の私にとってはありえない禁欲的な生活でした。古書も多かったのでカビ・アレルギーが顕在化し、ついでに刺激の強いタバコも止めてしまいましたが、こちらはアレルギーとの科学的な相関はないようです。若い時にもっとしっかりと読んでおけばこんな目に会わずに済んだのだと思います。