私がフジサンケイ・ビジジネスアイに書いているコラムです。 (本日分)
S&Pがユーロ圏9カ国を一斉に格下げし、フランスもトリプルAを失ってしまった。欧州中央銀行(ECB)による長期資金供給オペによる流動性対策を評価しながらも、財政再建策だけではユーロの弱い経済成長見通しに対して不十分であると指摘した。これはユーロ圏の経済統合強化策が不十分であるという意味でもある。
一方で、一時ほど報道されなくなったギリシャ問題も、解決したわけではまったくない。現状をいえば、昨年10月の首脳会議で暫定合意された、ギリシャに対する1300億ユーロの第2次支援の条件としての「ギリシャ債務の民間による自主的な債権放棄(PSI)」にかんする協議が、中断に追い込まれている。PSIとは、民間が保有する2050億ユーロ分の債券につき、1000億ユーロ分を債務放棄するという内容である。
ギリシャは3月20日に145億ユーロの国債償還を迎える。PSIが合意に至ったとしても、最低6週間の時間が必要であるからデッドラインは目前に迫っている。合意がなければ第2次支援の資金は供給されず、ギリシャはデフォルトとなる。
では、何が合意の妨げになっているのであろうか。
まず、PSIはあくまで自主的な債務免除であるから、中央銀行であるECBは自行の持つギリシャ国債を対象から外し、損失(200億~250億ユーロと予想されている)を負担することを考慮に入れていない。民間債権者からすれば大いに不満である。
次に、より深刻なのは、格付け会社フィッチ・レーティングスはPSIによる合意をデフォルト事由と見るが、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS:倒産保険の一種)の決済は起こらないとの見解を持っていることである。
CDSを所有する投資家から見れば、合意が成立して中途半端にしか債務が返済されないよりは、デフォルトしてくれて保険金が入るほうがありがたいから、PSIには反対に回る。ギリシャにとっては、たいへんな事態である。そこで、少数の債権者の反対によって合意形成が妨げられることを防ぐために、ギリシャによって考えられていると伝えられているのが、同国債券に対する「集団行動条項(CAC)」の付与である。債権者の3分の2程度の賛成があれば、少数者の反対にかかわらず合意に持ち込むことができるというものだ。
これを、投資家サイドからみればどうなるか。デフォルト認定されないためにCDSという保険が機能せず、談合めいたPSIという方法で債券の償還額が決まるような危険な債券を保有し続ける理由はない、ということになる。
つまり、ユーロ問題は依然として、世界の金融市場に重くのしかかり続けると考えざるを得ないのである。
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2012年1月16日月曜日
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