2012年2月4日土曜日

日露戦争 起源と開戦


少し身の回りの状況が落ち着いてきたので、再びパラパラと色々な本を読み始めた。

自分の本の出版に関しては、僕にとって初めてのことなので、正直にいって少々興奮している。神経質になっているといっても良いだろう。はたして売れるのだろうか?あるいは専門家の歴史学者からそれは違う、品質が低すぎると指摘されてしまうのだろうか?また歴史マニアから細かい指摘が入るのじゃないだろうか?とか心配もつきない。

昔から人前で話すのは得意で、テレビでも何度も相場解説をしたこともあるし、視聴者の質問コーナーにも平気で即答していた。(あなたはレーガノミックスをどう評価しているのか?なんて禅問答みたいな質問もあった) それに講演会みたいなこともぶっつけでやっていたものだ。ピンチヒッターが多かったような気がする。それはちょうど子供が爬虫類や昆虫を平気でさわれるようなものだったのかもしれない。大人になると怖さを知るものなのだろうか、触れなくなったりするものだ。そうだとすると心配症の今の僕はやっと大人になれたということなのだろうか。イヤイヤ。

拙著の発刊される新潮選書というのは約四〇年ほどの歴史があり、多くの名著を出している。また発展的に文庫になった本はあるが、未だに絶版になった本はほとんど無いのだそうだ。だから、もし僕の本に致命的な間違いがあって、世間からボロボロに評価されたら「笑って許して」はくれないのじゃないだろうかとか、考えてしまうのだ。普段他の人が書いた本の間違いを見つけるのは得意な自分だが、いざ、自分のことになると全く自信がないのである。困ったものだ。

同じ会社で働いたことは無いのだが、僕の社会人としての師匠にあたる人がライフネットの出口社長と古い友人だったので、岩波書店の社員募集要項じゃないが、腹黒くもコネを効かせて出口社長に事前に原稿を読んで頂き、感想を聞かせていただこうということになった。出口社長と言えば読書家で歴史家でもある。読書量はハンパではない。氏が「問題ない」といってくれればOKなのだ。お忙しい方だから原稿をお渡しして読むのに二週間はかかるだろうなと僕は考えていたのだけれど、なんと二日後に「全部読みました」とメールを頂戴した。出口さんは速読には否定的で読書は熟読しかないと主張されている。全くありがたい話である。しかしそのメールには「和田春樹氏の『日露戦争 起源と開戦 上下(2010年2月初版)』は読みましたか」とだけ書き加えてあったのだ。

この本は全部は読んではいないが、どういう本なのかは知っていた。分量が大型本で1000ページと凄い本なので、拙著の主題とはかぶるところは少ないだろうと判断して怠けて読まなかった本なのだ。もっといえば開戦に至る経緯のところのチェックは「日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))山室信一(岩波新書)や「日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)」横手慎二(中公新書)で充分だろうと考えていた。

日露戦争の資料はソビエト連邦崩壊で新しく開示された資料がある。新しいものでなければいけない。また2004年が開戦100周年にあたるので多くのシンポジウムが開催された。つまりここ10年ほどで随分研究がすすんでいるのだ。興味のある人は「日露戦争研究の新視点」日露戦争研究会編に関係した論文が収録されているから図書館あたりで少し読んでみるのも面白いだろう。司馬遼太郎の「坂の上の雲」は1968年から連載が始まったものだ。これに史実と違うところがあると指摘して、司馬史観にケチをつけてみてもあまり意味はない。「坂の上の雲」は当時取得可能だったデータから書かれたものなのだ。歴史書も歴史として評価されるだけで、「坂の上の雲」の偉大さは今も何も変わりはしない。

そうだ。話がそれた。少々神経質になっている僕は出口社長からのメールをこう受けとめた。

「全部読みました。が、いったい君は、日露戦争の話を書くにあたって、和田春樹さんの著書は読んだのかね?」(ご本人はそういうつもりではなかった)

ガーン、読んでないんだね。これが。パラパラと見て上記の新書でいいやとサボっていたのだった。僕は拙著にどこかおかしい記述があったに違いないと考えた。そこでとにかくこの大著を読み始めたのだった。

昨日は以前からのお約束で出口社長をオフィスに訪ねた。本来であれば社長が僕の読みにくい原稿に手こずって時間に追われているのだろうと僕は想定していたのだが、現実には僕が時間に追われながら1000ページの大著を読むことになってしまったのだった。しかし読んでみるもので、ロシア財務大臣ココツェフの任官時期に拙著と相違があって調べて訂正することができたのだった。

出口社長からは僕の本に何かおかしなところがってあの本を推薦したのではなくて、辞書がわりに使える本だから便利だよという趣旨だったとメールの説明があった。でも読んでおいて本当に良かった。そして社長は1冊の貴重な本を僕に貸してくださった。是非お読みなさいと。だがこれは英語でしかも分厚かったのだ。今度は何時会うのだったかな?

(多分続く)

P.S.岩波書店のコネ:首相経験者の孫か息子でなければ首相にはなれない。といっているのではない。岩波書店の提示したコネは努力で勝ち取れるものである。百倍を超える難関就職先に企業訪問もせず、先輩を探さないなどあり得ない。また地方の学生に配慮して岩波書店の執筆者の紹介状でも可とある。地方大学でも岩波の執筆者なら大勢いるだろう。この程度のコネの取得で文句をいう人は、そのうち抽選にしろとでも言い出しかねない。アゴラの山口巌さんのブログに書いてあったが、天下りこそ最悪のコネ入社だろう。厚労省が岩波を調査するのはどこか可笑しいのである。


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